第4の携帯キャリア(MNO)として携帯事業参入を進める楽天モバイルは1月23日、正式サービス開始前にネットワークを試用できる「無料サポータープログラム」の2次募集を開始。発表会を開催し、楽天モバイルの山田善久社長が現在の状況を説明しました。楽天モバイルの正式サービスは2020年4月から開始予定です。
楽天モバイルは、2019年10月の本サービス開始を予定していましたが、これを延期し、東名阪の5,000人に対してサービスを提供する「無料サポータープログラム」として、まずは試験サービスをスタートしました。それから約3カ月、新たに2万人をめどに、無料サポータープログラムを拡充します。
無料サポータープログラムでは、東京23区、名古屋、大阪、神戸に在住の18歳以上が対象で、新規契約またはMNPの契約が可能です。条件は第1次(5,000人)のときと同じですが、第1次の募集時に落選した人は、今回の2次募集に応募すれば必ず当選するとしています。第1次に申し込みをしなかった人は先着順となり、2万人に達した時点で締め切られます。
参加の条件としては、品質テストやアンケート回答のほか、新たに「楽天Link」アプリの利用が加わっています。また、契約時に楽天回線対応端末を同時購入すれば、楽天スーパーポイント18,000ポイントをプレゼント。アンケートへの回答で1カ月1,000ポイントをプレゼントします。従来通り、データ通信、音声通話はすべて無制限で使えます。
新たに追加された「楽天Link」アプリは現時点でベータ版ですが、電話、メッセージ、SMSの機能をまとめたダイヤルアプリです。RCS(Rich Communication Services)に準拠したメッセージの送受信が可能です。国内・国際通話、SMS、グループチャット、写真や動画の送信といった機能を備えています。同じRCSに準拠した+メッセージなど他社サービスとの連携は、現時点では行われませんが、今後デスクトップアプリ、ゲームなどの機能強化を図っていくそうです。
無料サポータープログラムの目的
無料サポータープログラムは、楽天ネットワークを利用してもらい、正式サービスまでに品質向上につなげることが目的です。エリア内の穴を見つけてもらったり、品質が低下しているエリアを確認したり、積極的に利用してもらうことで、正式サービスに備えてきました。
これを今回、2万人に拡大することでさらなるテストを行い、2020年4月からの正式サービスに向けてネットワークを構築していきます。山田社長は、「5,000人もいると、通常では思いつかないような使い方をする人もいる」と話しました。
こうした使い方を「コーナーケース」と呼んでいるそうですが、これが2万人になるとさらにコーナーケースが増え、想定外の利用が確認できるようになります。想定外でもネットワーク品質が劣化したり、障害が起きたりしないように準備していく考えです。
第1次サポーターの声をもとにしたネットワーク改善も続いていて、「月を追うごとに満足度が向上していった」と、山田社長は胸を張ります。
そうしたサポーターの回線利用は(1人当たり)、2019年12月の平均ではデータ通信が15GB以上、音声通話は30分以上という状況だったそうです。データ通信は一般的なMNOが1カ月で4GB程度ということから、無料ということでより多くのデータ通信を行っていると想像されます。
この通信量は「想定以上」(山田社長)ですが、山田社長自身は楽天モバイルでもっとユーザーにデータ通信を行って欲しいと考えているそう。「日本人は海外に比べてデータを使っていない」(山田社長)状況で、料金体系が変われば利用が増えると想定していたそうです。そのため想定以上の利用は「うれしい」(山田社長)と満足げです。
「(楽天モバイルが)参入する意義は低廉な価格という点が大きい」と山田社長は語り、たくさんのデータを使っても比較的低価格に抑えられる、という料金プランを考えているようです。山田社長は「見てのお楽しみだが、それなりにインパクトのある数字が必要」という認識を示しました。
インフラの整備状況は?
懸案事項だった基地局建設も順調で、屋外基地局の開設数は3,432局となりました。これは総務省に申請した当初の2020円3月末までの開設計画と同数で、前倒しで計画を達成した形です。3月末までには「4,400局くらいで電波を発射できるのでは」と山田社長。東京23区以外に埼玉・神奈川・千葉の各県にエリアを広げるなど、面の拡大も続けています。
基地局の建設では、建築資材や人員の確保が困難だったことに加え、建設場所の確保に苦戦していたと見られています。そこで、楽天グループ全体でモバイル事業に取り組み、各グループ企業から「数百名が応援に来てくれた」(山田社長)そうです。基地局建設では、モバイルに関係のないグループの役員にも担当エリアを割り当て、コネクションを使うなどして、基地局を設置できるビルのオーナーを探し出す、といった総力戦で取り組んだとしています。
こうした取り組みの結果、「時期によっては建設が遅れていることもあったが、おおむね現在は順調」(山田社長)とのことです。
現在は屋外基地局が中心ですが、ビル内、自宅内などで電波が不安定なユーザーに対しては、小型基地局のフェムトセルを提供。光回線を使ってネットワークを提供する計画です。
試験サービス期間と、正式サービス後もしばらくは、東名阪およびその一部周辺エリア以外、また地下鉄など屋内の楽天ネットワークエリア外では、KDDIのネットワークにローミングする運用になっています。そのため、全国規模で利用はできますが、楽天とKDDIのネットワーク間を移動する場合に数秒間の切断が発生しています。
特に音声通話の場合、通話が切断されてしまうため、不便な状況です。これも4月をめどに接続方式を変更し、従来の「S8」から「S10」と呼ばれる方式に変更。これによってシームレスにネットワークの切り替えができ、通話品質が向上するとしています。
楽天モバイルでは、第1次の無料サポーター募集時にシステムやサポートなどでトラブルが続出し、2019年12月にはネットワーク障害も発生しました。こうしたトラブルについて山田社長は、コールセンターの人員増強、契約プロセスの一新といった対策を実施。ネットワークに関しては、「万全のテストをやってきたと考えてはいたが、さらに過負荷試験などを追加して実施する」と強調しました。「徹底的に試験をして4月を迎えたい」と話しています。
無料サポータープログラムは3月31日までの利用期間となっていますが、正式サービスは「4月」までしか決まっていません。4月1日からずれ込む場合、サポーターが通信できない空白期間が生じてしまいます。そうした場合は、サポーター期間を延長するといった対応をするとしています。
正式サービス開始が迫り、楽天モバイルは準備を進めています。肝心の料金プランは「十分な告知期間をもって発表したい」(山田社長)という状況で、3月には発表される見込みです。日本の携帯業界にインパクトを与えることができるか。楽天モバイルの正式発表に期待しましょう。