日本HPは1月21日、事業説明会を開催した。PC部門では2019年に国内の年間ブランド別のPCシェアでNo.1を達成したと報告。このポジションを維持しつつ、エデュケーションやクリエイター向けなどに注力し、さらにセキュアPCやセンライズWSなどにも尽力していくとした。
国内PCシェアでは年間ブランド別No.1のキープを目指す
日本HP 代表取締役の岡隆史氏は、2019年におけるグローバルでのHPの業績を紹介した。売上は6.4兆円、利益は4,700億円で成長率は2%と堅調な推移となった。2019年は成長率が12%だったため、勢いこそ落ち着いたものの、ワールドワイドでPC市場が好調な中できっちり成長できたという。
また、ニュース雑誌のNewsweekが選出する「2020年にアメリカで最も責任ある企業」にHPが選ばれたと述べ、社会活動に積極的で、社会に貢献する企業でありたいとする姿勢が海外では高く評価されており、日本でも日本HPのプレゼンスを上げていきたいと語った。
2019年の国内市場では、2019年1~9月期における国内年間ブランド別PCシェアでNo.1を獲得。市場の成長率を上回る成長率が17期連続となったこと、企業向けPCの分野でも4期連続でブランド別No.1を獲得したという。
日本HPの2019年におけるハイライトでは、2019年9月に発表した、999gの13型コンバーチブル2in1「HP Elite Dragonfly」に注目している。欧米ではPCの「軽さ」に対するニーズが日本ほど高くなく、1kgを切る軽量ノートPCのグローバル展開は、グローバルベンダーとしてはHPが初めてになるのではないかとした。
特に国内では、働き方改革の浸透や女性ワーカーの拡大によって、軽量PCは確実にトレンドになっていくと見通す。セキュリティもますます重視されるようになっていくはずで、セキュリティサービスを強化する姿勢はグローバルで継続していくとのことだ。
日本HPでは、2020年以降の社会がどのような方向に変化していくか予測し、そこにいたる中継地点として2020年を想像することで、どのようなテクノロジーが求められるか、どのようなソリューションが提案できるか検討していく。
グローバルでは、PC市場は36兆円、プリント市場は17兆円規模、合計で約53兆円市場を形成する。その中でHPは6.4兆円の売上、つまり約12%を占める。プリント市場などはだいぶ頭打ちで成長の難しい市場だが、シェア拡大による売上向上は十分可能と見ている。
これに加え、商業・産業印刷のデジタル化事業、3Dプリンター事業による製造業の変革を新たな中核事業として、引き続き注力分野としていく。
岡社長は、「事業の指針となるのはサステイナビリティ」と強調。今後、企業レベルでも個人レベルでも、事業持続性が求められる社会になっていく。日本HPとして何を提案していくか、どう顧客のニーズに応えていくか、常に考えているとした。
社会貢献に関しては、再生プラスチック対策を促進。2025年までに30%の使用済み再生プラスチックを、HPのPCとプリンティング製品で使用する目標を掲げ、2018年末で目標の23%を達成しているという。たとえば、HP Elite Dragonflyでは、海洋ごみプラスチックを使用した世界初のノートPCとして認定されているとのことだ。
文教向けではChromebookの国内展開も検討
PC事業に関しては、日本HP パーソナルシステムズ事業統括の九嶋俊一氏が説明に立った。
九嶋氏はPC分野の基本戦略として大きく3つを掲げる。
1つは「デザインと機能でユーザー体験を再定義」すること。これは以前からの方針を継続するものだ。
もう1つは「東京生産20周年・ブランド別シェアNo.1」の維持だ。これまでのスタンスの中で、変える必要のないところは変えずに成果を着実に積み上げていく姿勢といえる。
最後は「攻めのAI/VRと守りのセキュリティを実践」だ。AI/VR分野における世界で最も包括的なポートフォリオを生かして、新しいソリューションをどんどん展開していく一方で、セキュリティ管理サービスの強化を図る。
ユーザー体験の再定義にあたって九嶋氏が着目しているのは、ムーブメントを生み出していく若い世代、特に2020年に22歳未満の世代を指す「Z世代」だ。
イギリスの調査では、Z世代は毎日10時間以上をオンラインに費やす。このため、どこでもコンテンツの視聴・閲覧を体験する自由を欲する。また、Z世代は平均して5つのデバイスを使う。当然、デバイスをシンプルに接続する自由を欲する。Z世代は環境保護への関心も高い。82%が環境に優しい商品を購入する意欲を持っている。
これに加えて、米国のフルタイムワーカーの34%が、リモートワークのためなら給与が最大5%減っても構わないと考えているそうだ。それだけ、どこでも安全に働ける自由に価値を見出しているということでもある。
PC市場はWindows 7のサポート終了に伴う買い替え需要により、2019年は数年ぶりに上向いたが、2020年はその反動で需要が落ちると見られている。この点は日本HPも同様で、総需要の低下する中、いかに売上をキープしていくかは課題のひとつ。
そのための施策として、日本HPがPC分野で新たなコンピューティング体験を提案するのは、「セキュアPC」「クリエーターPC」「学習用PC」「センタライズWS」の4カテゴリだ。クリエーターPCはプロの利用に限らず、「クリエイティブな用途」を幅広くとらえる。
特に注目したいのが学習用PCだ。アメリカで成功しているChromebookや、Windows 10搭載のProBookといった国内展開も視野にあるとのことで、訴求力のある製品とサービスが提供されることを期待したい。
最後に九嶋氏は、CES 2020で披露された世界初のDisplayHDR 600対応の一体型PCや、スマートトラッカーを内蔵するDragonflyの新製品にも簡単に触れ、国内展開の時期は未定ではあるものの、今後も新しい体験と顧客生涯価値の最大化に努めていくと語った。