広瀬章人八段も4勝3敗となり、名人挑戦が消滅
1月20日に第78期順位戦A級(主催:朝日新聞社、毎日新聞社)7回戦、佐藤康光九段-広瀬章人八段戦が東京・将棋会館で行われました。ここまで3勝3敗の佐藤九段と、4勝2敗で名人挑戦の目が残っている広瀬八段との戦いです。結果は翌日の0時22分に佐藤九段の勝ち。ともに成績を4勝3敗としています。
戦型は先手の佐藤九段が矢倉を選択。後手の広瀬八段は矢倉には囲わずに速攻を仕掛ける、近年流行の布陣で対抗しました。この構えをされると先手も矢倉囲いに入城することはできません。なんと佐藤九段は玉を矢倉囲いの外の5八に配置し、後手の仕掛けを真っ向から受け止めようとします。
低い陣形からどんどん歩をぶつけて仕掛ける後手と、飛車を五段目に構えて受けに使いつつ、金と桂でなんとか局面を収めようとする先手。まずリードを奪ったのは後手でした。先手の守備網を突破し、飛車を桂で入手すると、その飛車を敵陣深くに打ち込みます。
しかし、その直後、上部脱出を目指す先手の受けに対して竜を敵陣に残したのがどうだったか。香を取りつつ金取りにもなる自然な手ですが、ここではお手伝いのようでも先手玉を上部に追い、竜を中段に引き揚げるのが勝ったようです。
一瞬の安全を手に入れた佐藤九段は、銀を後手玉の囲いの上部から打ち込み猛攻をかけます。この銀を金で取るか、銀で取るか。ここでの広瀬八段の判断が本局の明暗を分けました。本譜、広瀬八段は銀で取りましたが、これが敗着に。一見違和感のある金で取るのが正解で、これなら難解な戦いが続いていました。
先の竜の判断といい、受けの応手といい、自然な選択が裏目になってしまったのは広瀬八段にとっては不運でした。
攻めがつながる形になってからは、佐藤九段の豪快な寄せがさく裂。駒をどんどん打ち込む力強い攻めは圧巻でした。最後は21手詰の筋に入り、その途中で広瀬八段が投了。119手での決着でした。
これで佐藤九段は4勝3敗で白星を先行させました。一方の広瀬八段も4勝3敗に。A級は全9回戦。現在7勝0敗で首位を独走する渡辺明三冠に追いつけないことが確定し、名人挑戦の目が消滅しました。
渡辺三冠以外で唯一挑戦の可能性を残している、4勝2敗の三浦弘行九段は1月24日に7回戦を木村一基王位と戦います。もしここで三浦九段が敗れると、7回戦にして早くも渡辺三冠の名人挑戦が決定することになります。