PayPayは、全国6,500店舗以上の大手チェーン店を対象にした「40%還元キャンペーン」を実施します。すき家、松屋、吉野家という牛丼3社が同じキャンペーンに参加するのは初めてということで、PayPayを含めた各社の力の入れ具合が分かります。PayPayの代表取締役社長執行役員CEOの中山一郎氏は、「テーマはキャッシュレスを身近にすること」と話し、さらなるユーザー拡大を目指す考えです。
キャンペーン期間は2月1日~29日の2月いっぱいで、1回500円、1カ月1,500円の上限ながら、利用金額の40%をPayPay残高で還元するというものです。Yahoo!プレミアム会員はさらに50%の還元となります。
PayPayは2018年10月のサービス開始以来、大きなキャンペーンを連発してきました。同年12月の100億円還元キャンペーンのインパクトは大きかったのですが、当時の決済回数に比べて、2019年12月の決済回数は1億回を超え、22倍に達したそうです。
ユーザー数も2,300万人となり、2カ月前の前回の発表から300万人増加。さらに加盟店数も170万カ所から185万カ所まで増やしました。中山社長はユーザー数に関して、スマートフォンユーザー数が7,000万、そのうちPayPayの利用意向がある人が3,100万人という調査を挙げ、まだ伸びる余地があると自信を見せます。
「コピー機ならゼロックス、音楽プレイヤーならウォークマンが代名詞だった。PayPayはキャッシュレスの代名詞になりたい」と中山社長。そのため、店頭での決済だけでなく、オンライン決済や請求書払いの拡大も図ります。
これまではPayPayモールなどのグループ内のサービスのみで使われていたオンライン決済を拡大し、他社のオンラインサービスでの支払いに使えるようにしていきます。請求書払いも、スタート時は6社だったものが300社に増え、1月からは400社に拡大。新たに健康食品や通信販売、カタログショッピングの請求書に対応しています。
これに加えて、PayPay残高をユーザー同士で送受信できる個人送金についても、重要な機能と位置づけます。利用回数は順調に拡大していると中山社長。「キャッシュレス先進国では日常的に使われていて、日本も恐らくそうなるのでリードしていきたい」と意気込みます。
金融サービスも
次の戦略として中山社長が掲げたのが金融サービスです。これまでは自社開発で決済サービスを提供し来たPayPayですが、金融サービスでは、「マルチパートナーで金融機関と連携し、オープン化で連携していきたい」と話します。
検討されているのは個人向けローン、ビジネスローン、投資、後払い(リボ払い)、保険としており、「ユーザーにとって一番いいサービスをスピーディに展開していきたい」(中山社長)考えです。そうしたサービスを一緒に開発できる金融機関などと協業で、年内に提供していく計画を掲げます。
「早いサービスは春にも提供する」(中山社長)とのことで、順次展開予定です。もともとPayPayの決済サービスは、コード決済単体では決済手数料の無料キャンペーン中であり、大がかりなキャンペーンを何度も実施しているため、黒字化のめどが立っていません。
PayPayが中小個店にも広く加盟店開拓ができていたのは、全国20カ所の営業拠点による積極的な営業活動に加え、手数料無料という点も大きな理由です。そのため、2021年9月末までの無料キャンペーン後も、手数料は低価格に抑える必要があるでしょう。
POS連携の大手加盟店では手数料がかかるものの、利用率を考えるとカバーすることは難しく、決済手数料だけのビジネスモデルは成り立たないはずです。そのため、PayPayの収益化には金融サービスが重要な位置づけとなるでしょう。
中山社長は、「最重要の指標はトランザクション」としています。単月1億回のトランザクションを達成したPayPayですが、利用率ではクレジットカードの約85%に対して約37%と低く、さらに例えば中国テンセントのWeChat Payをはじめとしたモバイル決済は、1日10億回を越えるトランザクションがあります。トランザクションとしては、まだまだ拡大の必要があるわけです。
トランザクションが増えれば、低率に抑えても決済手数料の収益化も期待できます。しかし、トランザクションを拡大するためには、中山社長が推進する「PayPayのスーパーアプリ化」によって、決済以外のシーンでもPayPayを利用してもらう状況を作る必要があります。
そうした点でも、金融サービスの提供とその強化は、PayPayのビジネスにとって重要な戦略です。今回の40%還元キャンペーンは、新規ユーザーの拡大と既存ユーザーの利用向上につなげて、トランザクションを増やす狙いもあります。今後の戦略に弾みをつけるもくろみもありそうです。