2019年は、いわゆる「老後2,000万円問題」が大きく取り上げられました。これを機に、まだ先だと思っていた老後資金について、関心を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、老後資金を貯めるにあたって今すぐできる3つのことをご紹介します。

  • 本当に2,000万円必要? 老後資金を貯める前に確認したい3つのこと

    本当に2,000万円必要? 老後資金を貯めたい人が今すぐすべき3つのこと※画像はイメージ

通帳チェックで生活にかかるお金を把握する

話題の発端となった「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」に出てきた"2,000万円"という数字は、これまでも、総務省の「家計調査報告」を元に、老後資金を考える上で、1つのモノサシとされてきたものです。

注意が必要なのは、この"2,000万円"という数字は、平均データから算出した金額だ、ということです。

2,000万円の元となったデータの支出内訳を見てみると、住居費は1万3,656円となっています。もし賃貸住まいの場合、毎月1万3,656円では足りないはずです。食費は6万4,444円となっていますが、「こんなにもかからない」というご家庭もあるのではないでしょうか。

各ご家庭によって、"普通の生活"を送るのに必要なお金は大きく異なります。当然ではありますが、平均データでは、各ご家庭の状況や価値観を反映することはできません。

だからこそ、わが家の今の生活にかかるお金を把握することが、老後の生活を具体的にイメージするのに効果的です。

とはいえ、細かい家計簿をつける必要はありません。

手取り収入と1年間の預金残高増減額(2020年1月1日時点の残高合計-2019年1月1日時点の残高合計)がわかれば、手取り収入から預金残高を差し引くことでおおよその年間支出額を調べることができます。

たとえば、手取り収入600万円で、1年の預金残高が+20万円の場合、年間支出額は580万円となります。

まったく支出を把握できていないなら、まずは通帳チェックから始めてみてはいかがでしょうか。

年金受給額はねんきんネットをチェックする

老後には、今の働き方も大きく影響します。

厚生労働省が発表した平成31年度の年金額(月額) は、

・国民年金(老齢基礎年金 満額・1人分): 6万5,008 円
・厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額※1): 22万1,504 円

となっています。

特に、老齢厚生年金の受給額は、在職中の給与や期間によって大きく異なるので、老後資金作りの計画を立てるのが難しいと感じる人もいるでしょう。

そんなときには、日本年金機構が運営するインターネットサービス「ねんきんネット」を活用しましょう。

ねんきん定期便に書かれているアクセスキーや基礎年金番号を使って登録をすると、50歳未満の人でも現在と同じ水準で60歳まで働き続けた場合の給付額を調べることができます。

また、今後の働き方や収入が変わると、給付額はどう変わるかまでシミュレーションできるので、これから働き方を見直そうと考えている場合は、特に要チェックです。

※1/夫が平均的収入(平均標準報酬※賞与含む月額換算: 42.8万円)で40年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯が年金を受け取り始める場合

「○○してから」ではなく今すぐ始める

老後のことは気になるけれど、「まずは教育費を貯めてから……」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。けれど、それでは間に合わない場合もあるので、注意が必要です。

昭和50年には25.7歳だった、第1子出生時の母親の平均年齢は、今では30.7歳となっています(※2)。

また、平均寿命は、男性が81.25歳、女性が87.32歳となっており(※3)、準備期間は短く、必要な老後資金は多くなる傾向にあるといえます。

教育費と平行して老後資金計画を立てることで、教育費にかけられる額も自ずと見えてきます。

また、老後資金の貯め方について、「まずは勉強をしてから」という気持ちになるかもしれません。資産運用の知識があればそれはとても心強いですが、どんなことにも完璧はありません。

もちろん最低限の知識は必要ですが、目的はいい運用方法を追求することではなく、老後資金を貯めることです。

「ちゃんとしよう」という気持ちが強すぎると、教育費を貯めてから、勉強してから、と行動を先送りしてしまいがちです。

完璧を求めるよりは、まずは5,000円でもいいので、老後資金を貯め始めましょう。実際に行動することで、より理解が深まることもあるはずです。

新しい1年は始まったばかり。今年はぜひ老後資金のために一歩踏み出す1年にしませんか?

※2/厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況
※3/厚生労働省「平成30年簡易生命表の概況」