ラグビーの発祥国、イングランドのヘッドコーチとして5年目のシーズンを迎えるエディー・ジョーンズ。言わずと知れた世界的名将だ。2015年のワールドカップでは日本代表を率いて南アフリカを破り、2019年大会はイングランドの指揮官として準決勝で強豪ニュージーランドを圧倒するなど手腕を振るってきた。決勝では南アフリカに敗れ優勝は逃したものの、自身、大会2度目の準優勝。シックス・ネーションズでも2016年(グランドスラム=全勝優勝)、2017年と過去4年間で2度の優勝を飾るなど、揺るぎない実績を持つ。

WOWOWでは今年もラグビー欧州6カ国対抗戦「シックス・ネーションズ」を全15試合生中継。戦いを終えて間もないワールドカップから今回のシックス・ネーションズの見どころまで、引き続きイングランドを率いるエディー・ジョーンズ ヘッドコーチに話を聞いた。

  • エディー・ジョーンズ

──ワールドカップは決勝で南アフリカに12-32で敗れ、準優勝に終わりました。

「決勝で負けるのは、常にがっかりすることだよ。ロッカールームに戻った時は悲しかった。敗因は分からない。こういうことも起きる。分かっているのは、ベストの状態ではなかったということ。どうしてベストではなかったのか、今でも理解しようとしている。どうして自分たちの能力レベルでプレーできなかったのか、解明しようとしている。その回答をこれから見つけるだろう。そして、シックス・ネーションズに向かうよ」

──日本代表は「ONE TEAM」をスローガンに、初めて決勝トーナメントに進出しました。

「どのチームもワンチームとして機能していると思う。日本代表だけがワンチームだったのではなく、どのチームにとってもワンチームになることが目標だ。ただ、日本代表はその点で良くやったので、あそこまで行ったのだろうね」

──イングランドのヘッドコーチとして今後、目指していることは何ですか?

「(2016年からの)最初の4年間は、チームを再建することを期待された。プライドを取り戻すことだよ。ワールドカップ2015年大会でのイングランドのパフォーマンス(ホスト国として初めて予選プール敗退)は、二度と繰り返してはいけないものだった。それは達成できた。(契約している)次の2年間の目標は、イングランドを常に世界のベストチームにすることだ。つまり、世界で最も圧倒的なチームにすること。それがターゲットだ」

──今回のシックス・ネーションズでの目標を聞かせてください。

「優勝したい。それが常にターゲットだよ。そのプロセスとして、ワールドカップよりも良いラグビーがしたい。そして、確実にスコッド(代表候補)をリフレッシュする。たぶん、20%ほどスコッドを入れ替えるつもりだ。若いフレッシュな選手を何人か投入するよ。ポテンシャルとして、今までいた選手よりも、より優れた物を持っている選手を投入していく。そして選手には、新たな意欲を見出してあげないといけない。前よりも優れたチームになる必要があり、その上でシックス・ネーションズのトロフィーにチャレンジする」

──新戦力で目をつけている選手は誰ですか?

「素晴らしい若手選手は何人もいるよ。特にノーサンプトン・セインツのスクラムハーフのアレックス・ミッチェル、フルバックのジョージ・フォーバンクが飛び抜けている。注目している選手が4、5人いるので、これから1カ月かけてどう進歩していくのか見守っていくつもりだ」

──その一方で、引き続きチームの核になる選手は誰でしょうか。

「マロ・イトジェ、トム・カリー、オーウェン・ファレル、ベン・ヤングス、アンソニー・ワトソン、エリオット・デイリー、ジョージ・フォード。彼らは、またカギとなる選手だ」

──キャプテンを務めてきたオーウェン・ファレル選手の良さはどこにありますか?

「彼には競争心がある。死ぬまで戦いたいと思っているような戦士。まるで侍のようだ。アグレッシブなタックルをするし、素晴らしい能力を持ったゴールキッカーでもある」

──シックス・ネーションズではここ2大会優勝を逃しています。

「過去4大会のうち、2大会で優勝した(2016年、2017年)。そして、グランドスラムを1回達成した(2016年)。この過去2大会は優勝しなかったので、ターゲットは優勝だ。最も大事なのは、開幕戦のフランス戦。フランスはとても進歩している。42名のスコッドを指名し、シックス・ネーションズに向けてキャンプを張り、準備を始めた。フランスは昔、クラブがものすごく支配的だった。時代が変わり今ではナショナルチームをサポ―トするようになったので、とても危険なチームになって来た。もし開幕戦で勝てなかったら、シックス・ネーションズで優勝するのは難しいだろう」

──フランスのどのあたりに警戒していますか?

「プレーが崩れた時に上手さを見せるチームだ。オフロードパスからボールを動かし続けることができる。バックスは素晴らしいスピードとパワーも持っている。彼らがオフロードパスを活かしてプレーし、スペースを獲得することができたら優勝を狙えるチームになるだろう」

──昨年王者のウェールズについてはいかがですか?

「ウェールズは、アイルランドもそうだが、ヘッドコーチを変更した。ウォーレン・ガットランドはウェールズを12年間、ジョー・シュミットはアイルランドを7年近く率いて、ともに素晴らしい成績を残した。今後、新しいコーチがどのように対応し素早くチームに溶け込むのか、どれくらいスタイルの変更をもたらすのか、スコッドをどれくらい変更するのか。そういう意味で、両チームには未知の点があると言えるね」

──あらためてシックス・ネーションズとはどんな大会でしょうか?

「シックス・ネーションズは世界最高の大会として知られている。なぜならば、伝統的なライバル関係があるからだ。イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド。全部隣り合っていて、国境が接している。海の向こうにはフランスとイタリアがあり、どの国も接近している。そこに、非常に激しいライバル関係がある。戦いは、伝統を賭けたものだ。激しいライバル関係があり、激しい戦いになる試合には多くの意義がある。ヨーロッパのラグビーは、パワー、セットピースの強さ、ラインスピードがあり、非常にアグレッシブだ。存在し得る、最もエモーショナルなテストラグビー(ラグビーの国際試合)だよ」

『ラグビー欧州6カ国対抗戦 シックス・ネーションズ』は、2月1日(土)~3月14日(土)の期間、全15試合がWOWOWで生中継される。