6.サービスとしてのデータリテラシーの台頭

ユーザーにデータ分析ツールを渡せば、はい終わり、あとはユーザーがうまくやるはず、というわけには物事は運びません。多くのユーザーが使える、データ統合・分析用のしっかりしたシステムを作っても、ユーザーが使ってくれなければ宝の持ち腐れです。データを使いこなせるユーザーの比率を、その平均である35%より増加させるために必要な手段が「DLaaS」なのです。

2020年、データを高度に活用できる人材を増やすためには、能力の高いベンダーと協力するケースが多くなります。ソフトウェア、教育、サポートを一体としたサービスを提供できるからです。データを使いこなせるユーザーの比率を100%へもっていければ、あらゆるビジネスの意思決定にデータを活用できることになります。まず手を付けるべきは、今までの試みがなぜ失敗したかを冷静に分析することです。それから解決策をさぐるべきです。

7. 多面的な双方向性は検索を超える

チャットボットを搭載した検索と音声は、特にモバイルアプリケーションの領域でデータを照会する強力なインターフェイスとして登場しました。しかし、それだけではまだ十分ではありません。多言語インターフェイスの基盤を構築するには、自然言語処理と実証済みで信頼性の高いデータクエリの手法(ビジュアル分析やダッシュボードを使った絞り込みなど)を組み合わせる必要があります。

2020 年には、より没入型の多面的な相互作用が進化し、頭で考えただけでデバイスを操作または照会できるようになっていくことでしょう。AR/VR、ウェアラブルセンサー、機械学習ソフトウェアなどの発明により、機械が人間のさまざまな表情を理解できるようになります。さらに、神経科学によって脳からコンピューターに電気信号を送り、コンピューターへの入力を可能にしました。。このような発明の数々は、人間がデータを体験し、データと対話する方法を進化させます。これは、すべての人々、 特に障害者に非常に有益であることは事実ですが、不適切なことに利用される可能性もあることを忘れては いけません。私たちには、この新しいテクノロジーを適切に使用する責任があるのです。

8.倫理的かつ責任あるコンピューティングが不可欠

多くのテクノロジーの進歩は、私たちの世界を何らかの形で便利にしてくれます。ところが、いくつかの「進歩」は深刻な懸念を引き起こす原因にもなります。たとえば、アルゴリズムは私たちのプライバシーにどのように影響するでしょうか?私たちの自由意志はどうなってしまうのでしょうか?個人データの不正利用からプロファイルの自動作成に至るまで、誘惑に抵抗するのは困難です。

また、米国の CLOUD 法や欧州の GDPR などのように、世界にはさまざまな規制が存在し、企業のクラウド戦略に影響を与えています。具 体的なルールが国ごとに異なるため、グローバルにビジネスを展開する企業では、特にその影響を受けることになります。今日においては、ハイブリッドマルチクラウドのアプローチはもはや必須になっていると考えられます。

企業の社会的責任という概念を広く捉える時が来ました。コンプライアンスの枠組みにとどまらず、顧客から信頼を集め、維持することが必要なのです。顧客に「プライバシーの一線を越えた」という印象を与えてしまうと、ブランド価値に取り返しがつかないほどの傷がつくことになります。ですから、「できるかどうか」にとどまらず、「やるべきかどうか」を常に考えなければなりません。リスクを最小限に抑えつつ成果の最大化を図る上で は、組織にデジタル倫理委員会のような組織を設けることも 1つの方法です。長期的には、株主ではなくステークホルダー全体に目を向けることが必要になってくるでしょう。

9.データのための「Shazam」

シャザム(Shazam)をご存知でしょうか。今流れている旋律から元の楽曲を特定する、音楽アプリです。あるいは、Google Lensは画像やそこに写っている文字から、画像の中の動植物名を特定するためにディープラーニングを使っています。アマゾンも、画像に写っている衣服を特定する技術を開発中です。そうすると、データを「シャザむ」こともできるのではないでしょうか。

2020年には、情報のバリューチェーン全体にAIが組み込まれていきます。そしてデータを特定し、異常を発見し、さらに分析対象に含めるべき別のデータを知らせる、といったアルゴリズムが分析システムに装備されます。データのソース、保存されていた場所、そのデータのユーザー、変更頻度、データとしての品質のよしあしを特定できるようになるでしょう。データサイズがどれほど大きくても小さくても、洞察がデータからより多く得られるようになり、データ統合と分析の一体化が進みます。

10. 独立対スタック

昨年、データとアナリティクスの分野では、クラウドでデータサービスやアプリケーションを提供している大企業が比較的小規模な分析ベンダーを買収するなど、大幅な統廃合が起こりました。その目的は、顧客とそのデータを詳細に管理し、徐々に収益化を進めていくことにあると思われます。どこかで聞いたような話ではありませんか?約 10 年前、オンプレミスのデータやアプリケーションを提供する企業の間で同様の動きがありました。当時の R&Dでは、イノベーションを犠牲にしてでもテクノロジーの統合を進めることが重視されていました。これがきっかけとなって顧客のデータと分析を独立した状態に保持できるベンダーがいくつも出現したのは、結果的にプラスだったと言えるでしょう。

2019 年には、1つのエコシステムに縛られた顧客の間でクラウドのコストが膨れ上がる現象が見られました。すなわち、クラウドの長所に陰りが見え始めたのです。しかし、これより大きな問題は、顧客が移動したデータを別の場所に移動できるか、そのコストはどれほどになるか、という点です。

今日では、ハイブリッドプラットフォームおよびマルチクラウドのプラットフォームが必要不可欠です。データとアナリティクスは現代の企業にとって生命線であり、1つのスタックに属するには重要性が大きすぎます。全てではありませんが、実際に多くの組織で複数のアプリケーションやデータソースをさまざまな場所に分散させています。これからどのようなことが起こるかは、過去の状況を見ていれば明らかです。今後、分断したサイロ同士を繋ぎ、ビジネスの成長を促進するデータモザイクの構築をサポートできる独立系アナリティクスパートナーへのニーズが高まっていくことでしょう。

[ 著者紹介 ]

ダン・サマー(Dan Sommer)
Qlikのマーケットインテリジェンスプログラムのグローバルリードを務めています。IT 業界で 20年以上の経験を有し、Qlik入社以前は、IT リサーチ & アドバイザリー会社の Gartner社にて、BIおよびアナリティクス市場のリサーチディレクター、アジェンダマネージャー、グローバルリードを歴任しました。市場分析、トレンド分析、競合分析、市場参入戦略を専門としています。