国連が2013年12月に発表したファクトシートによれば、世界人口の約15%にあたる約10億人が何らかの障碍を持っている。一方、国内で内閣府がまとめた「令和元年版 障害者白書」を見ると、約963万5,000人(身体・知的・精神障碍者の合算)。2019年10月1日時点の日本総人口は1億2614万人であることを踏まえると、約7.6%の方々が何らかの障碍を抱えることになる。
既報のとおり、Microsoftは障碍者向けゲームコントローラー「Xbox Adaptive Controller」を2018年に発表しているが、2020年1月9日からMicrosoft Storeで国内販売を開始した。詳細は別記事『障碍のある人でも使えるゲームコントローラー「Xbox Adaptive Controller」』をご覧いただくとして、本稿では、その成り立ちを振り返りたい。
Microsoft Story Labsの記事によれば、Xbox Adaptive Controllerの起源は2014年までさかのぼる。負傷した獣医にゲームデバイスを提供するという目的で作られたゲームコントローラーをSNSで目にしたMicrosoftのエンジニアは、Kinectのモーションセンシング技術を用いてXboxワイヤレスコントローラーを代替するデバイスを開発。2015年のハッカソンで発表した。Microsoftは、このプロジェクトをMicrosoft Inclusive Tech Labに移管し、Xboxプラットフォームに合わせた改良をデバイスに施していく。その1つが、2つのゲームコントローラーを1つにまとめ上げるCopilot機能。
Copilot機能によって連携した2つのXboxコントローラーは、どちらからでもゲーム操作が可能。例えば、一方のコントローラーでは普通にゲーム内のキャラクターを操作し、もう一方のコントローラーでゲームプレイを支援するといった使い方だ。Copilot機能は2017年に公開されたが、Xbox Adaptive Controllerの完成に大きく寄与する。プロジェクトチームは障碍を持つゲーマーやアクセシビリティ支持者、NPO(非営利団体)らから得たフィードバックを元に、Xbox Adaptive Controller背面に19個のジャックを並べ、長方形のコントローラーなどデザインや機能を決定した。
ここではかなり要約したので、ぜひ原文をご覧いただきたいが、Xbox Adaptive Controllerの完成までには紆余曲折があった。冒頭で述べたとおり、日本には約1千万人の障碍者が存在し、長い月日をかけて労働環境や教育環境を整えてきた。ここに「障碍者が楽しめる」が加わることは、障碍者と健常者を包摂する社会の実現にとって大きな一歩となるだろう。
Microsoftが「誰かがプレイする能力を失った場合や、ゲームを試せない場合でも、テクノロジーでプラスの影響を与える」(Microsoft EVP, Gaming, Phil Spencer氏)と述べているように、Xbox Adaptive ControllerはMicrosoftのビジョン「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」を体現したデバイスである。
阿久津良和(Cactus)