今年のCESでAMDはRadeon RX 5600シリーズを発表したが、この詳細に関して1月14日に電話会議の形で説明があったので、その内容をご紹介したい。

Radeon RX 5600シリーズであるが、こちらの写真にもある様に、1080p向けの"Ultimate"な性能を提供する、という微妙な位置づけである(Photo01)。デスクトップ向けのRadeon RX 5600 XTは構成的にはNAVI 10をそのまま利用しており、CU数は36となっている(Photo02)。要するにコアそのものはRadeon RX 5700 XTと全く同じである。

  • Photo01: 要するに1080pでは十二分に快適だが、1440pはちょい苦しい、というあたりということになる。実際Radeon RX 5500はものによっては1080pがギリギリだったから、これは判らなくもない。

  • Photo02: ちなみにBase Clockは「この世代から公表しない事にした」そうで、Game Clockが代わりに利用されることになる。どうでもいいが、このリファレンスカードが結構格好いい気がするのだが。

ではどこで性能差を出しているか? というと、動作周波数が異なる(Game Clock:1375MHz vs 1625MHz、Boost Clock:1560MHz vs 1725MHz)事と、もう一つはメモリ帯域である。Radeon RX 5700 XTでは256bitのGDDR6 14Gbpsを搭載していたのに対し、Radeon RX 5600 XTではこれが192bitのGDDR6 12Gbpsに制限される(OEMベンダーがGDDR6 14Gbpsを搭載することは許されない、という話であった)。ただそうしたハンデがあっても、例えば同一価格帯で提供されていたRadeon RX 590と比べると42%の性能改善と33%の消費電力削減が可能、というのがAMDのメッセージだ(Photo03)。

  • Photo03: もうそろそろAMDはRadeon RX 5xxシリーズは葬り去って良いと思うのだが。まぁRadeon RX 5600の投入で、今度こそ過去送りにできるかもしれない。

もっともRadeon RX 590と比較してもあまり意味が無い訳で、競合は当然NVIDIAのGeForce GTX 1660クラスとなる。まずはGeForce GTX 1660との比較がこちら(Photo04)だが、現行製品と言う意味ではむしろGeForce GTX 1660Tiとの比較(Photo05)あるいはGeForce GTX 1660 Superとの比較(Photo06)の方が意味があるだろう。特にGeForce GTX 1660 TiはNVIDIAのメインストリーム向けGPUのハイエンドであり、これを上回るというのはそれなりにインパクトのある結果である。

  • Photo04: "1080p Ultimate"ということで、描画オプションを最高にしているのがポイント。この状況でも、AAA Gamingで90fps近くを実現できるとする。

  • Photo05: ここからは実フレームレートではなく、GeForce GTX 1660 Tiとの相対性能の形で示される。

  • Photo06: GeForce GTX 1660 SuperのOC動作のものと比較しての数字。まぁ確かに定格動作の製品はそう多くない。

これに加え、先日発表のあったRadeon Software Adrenalin 2020 Editionの新機能が全て利用できるとしており(Photo07)、Image Sharpeningの効果(Photo08)やRadeon Boost/Radeon Anti-Lagの効果(Photo09)の数字が示されている。

  • Photo07: 個々の説明はリンク先の記事をご覧いただきたい。

  • Photo08: 確かにイメージがシャープになってはいるのだが、その分ちょっとブロックノイズめいたものがのっかっている気もする。個人的にはDefaultの方が好みだが、パフォーマンスへのインパクトが殆ど無いので、好みの方を選べるという意味では大きなメリットである。

  • Photo09: FreeSyncはCESで仕切り直しが発表され、新たにFreeSync/FreeSync Premium/FreeSync Premium Proの3つのグレードに分類されたが、この話はまた別のところで。

このRadeon RX 5600 XTであるが、リファレンスボードにあたるものは提供されず、OEM各社による独自製品のみが提供される(Photo10)形である。ところで冒頭でRadeon RX 5600"シリーズ"としたのは、デスクトップ向けのRadeon RX 5600 XT以外にSmall Form Factor向けのRadeon RX 5600、それとMobile向けのRadeon RX 5600Mが用意されるからで、これらの詳細は今後公開されることになると思われる。

  • Photo10: ちなみにこれは1月21日の発表時のラインナップであるが、メーカーによっては4製品を投入するところもあるそうで、実際には結構多くのラインナップが用意されることになるかと思う。

  • Photo11: Radeon RX 5600がどういうモジュールで提供されるのかは現状不明である。1スロットでLow ProfileのPCIeカードとかだと結構喜ぶ人も多そうだが。

ちなみにAMDによる推奨小売価格は$279である。ちょっと前の数字を引っ張り出すと

Radeon RX 5700:$349(日本での販売価格:\45,900)
Radeon RX 5500:$169/$199(日本での販売価格:\23,000/\28,000)

という感じで、大体\135~\140/$といった換算レートになっている。ここから考えると、国内販売価格は4万円をちょい切るあたりだろうか? GeForce GTX 1660 Tiが大体そんなあたり(\38,000前後~)なので、これと同程度になるのではないかと筆者は予想している。

  • Photo12: AMDによる推奨小売価格は$279。国内での販売価格は4万円弱くらいだろうか。