挑戦者広瀬章人八段の攻めをいなして、鋭い反撃決める
渡辺明王将に広瀬章人八段が挑戦する、第69期大阪王将杯王将戦七番勝負第1局(主催:スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社)が1月12、13日に静岡県掛川市「掛川城 二の丸茶室」で行われました。結果は渡辺王将の勝利。連覇に向けて好発進を決めました。
振り駒で先手となった渡辺王将は矢倉を選択。雁木や角換わりの流行に押されて採用率が激減していた矢倉ですが、ここ半年ほどで再び流行の兆しが見えています。とは言っても近年の矢倉はかつてのものとは大きく異なります。従来の矢倉は、矢倉囲いにお互いが組み合い、攻めと守りの陣形を整えてから戦いが始まる、じっくりとした戦法でした。しかし、最近の矢倉は様相が一変。囲いを省略し、一手でも早い攻めを繰り出すことを重視する激しい戦法となっています。本局も後手の広瀬八段が本来は守りの銀も攻めに繰り出す積極策を採り、構築途中の渡辺王将の矢倉に攻めかかりました。
広瀬八段の速攻により、守りの銀を相手の攻めの銀と交換されてしまった渡辺王将。矢倉囲いは弱体化したものの、残った金2枚と玉で陣形を盛り上げていき、後手の攻め駒を圧迫します。最下段の飛車の利きと中段の玉金の利きによって次第に先手陣には隙がなくなっていき、渡辺王将が優勢になりました。広瀬八段としては素早い仕掛けで銀交換に持ち込んだまでは良かったのですが、効果的な二の矢三の矢を放ってなかったのが誤算だったようです。
自陣の憂いがなくなった渡辺王将はついに反撃に出ます。蓄えた手駒を放出し、後手玉を追い詰めると、最後は自陣で守りに力を発揮していた飛車を成り捨てる、鮮やかな決め手を放って広瀬八段を投了に追い込みました。総手数103手のうち、大半は守りの時間だった渡辺王将。敵陣に駒を打ち込んで、攻めに転じたのは97手目でした。攻めに掛ける手数が多くなればその分守りは薄くなるもの。速攻を目指した広瀬八段の陣形は攻められるともろく、補強の利かない形をしていました。
番勝負の初戦を制した渡辺明王将は防衛へ一歩前進。一方、昨年12月に竜王を失い、早く無冠を返上したい広瀬八段としては先手番の第2局は負けられない一戦となります。渡辺王将が星2つ差にリードを広げるのか、それとも広瀬八段がタイにするのか。注目の第2局は1月25、26日に大阪府高槻市「山水館」で行われます。