俳優のリリー・フランキーと斎藤工が11日、W主演を務めるフジテレビの深夜ドラマ『ペンション・恋は桃色』(16日スタート、毎週木曜深夜1:25~ ※関東ローカル、全5話)の取材に都内で応じ、慣例にとらわれない異例のドラマ制作現場の裏側を語った。
時代と融合できない2人の主人公を中心に、器用には生きられない人々の生活を描く人情ドラマの同作。リリーは、ちょっと寂れたペンション「恋は桃色」を営む、テキトー中年男・シロウ。斎藤は、シロウの元にひょんなことから居着くようになったワケあり青年・ヨシオを演じる。
最初にオファーを聞いた際、「絶対放送されないなって思った」というリリー。「何も決まってないし、最初に見せてもらった台本が『ほとんど“万引き家族”じゃない!?』みたいな話をして、その1カ月後くらいに工くんに会って『あの話知ってる? 工くんだけ決まってて何も決まってないらしいんだけど』って言ったら、『すいません、僕その話知らないです』って言うから、これ絶対ねーなって思って、時間がすぎるのを待ってました(笑)」と、まさかの経緯を明かす。
リリーから第一報を聞いた斎藤は「まず事務所の連絡形態を疑いまして、ひと揉めありました(笑)」と振り返りながら、「でも、リリーさんを導いてくださった台本がどんどん変化していって、どんどん魅力的になっていったんです」と興奮気味に回想。
撮影は、山中湖に泊まり込みで4日間集中して行われたが、リリーは「映画研究会みたいな感じで始まったので、撮りだしてからの集中力がすごいんですよ。撮影が終わると工くんと薪ストーブにあたりながら『明日はあそここうしたらいいね』とか話したのが、結構実現されていくっていう“サークル感”がすごかったです」と、異例の手作りな制作現場だった。
その異例さは編集にも表れているそうで、リリーは「(清水康彦)監督とか他のスタッフもドラマが初めての方が多いので、CMの入り方とか斬新ですもんね。テープが切れたみたいにバサッと(笑)。だから、新しいジャンルの人たちと、みんなが瞬発力でやってる」と表現。斎藤は「そこにいるメンツがみんな異種格闘技戦みたいな人たちだったんですけど、摩擦が起こるというよりは、温泉にいろんな種類の動物が入ってきて、『平和協定を結びましょう』みたいな空気がずっとあった気がします」と雰囲気を伝えた。
今作の発表の際、リリーは「強烈なドラマ」と形容していたが、その真意を聞くと、「地上波のドラマでできないことが増えて、みんなネットとか配信とかで好きなことがやりやすいよねっていうのはたしかにそうだと思うんですよ。でも今回、あまりにも学生気分でみんながやっていたがゆえ、プロがやらないことが頻繁に起きているんです。画がつながってなきゃいけないとかを気にするより、瞬発力やみずみずしさを大切にしている」と、背景を説明。
一方の斎藤は「無敵な作品」とコメントしていたが、「ペンションという程よいサイズ感とそこに集う人のドラマのホームベースみたいなものがあると、どんなものも成立するんじゃないかな。そこにリリーさんや(伊藤)沙莉ちゃんがいるということで、どの球も打てる構図だなと思いました」といい、「スタッフさんも、ミュージックビデオだったり感覚を生業にしてる人たちがドラマというものに初めて足を踏み入れて、“こうあるべき”みたいな定説に一切とらわれない。ノールールの無敵さもあったと思うので、いくらでも続けられる(笑)」とシリーズ化に意欲を示していた。