この冬は暖冬の傾向にありながらも、冷える冬はやはりおでんや熱燗が恋しくなるもの。全国燗酒コンテスト実行委員会は1月12日まで、JR両国駅3番線ホームにて、おでんや熱燗を楽しむ「おでんで熱燗ステーション」というイベントを実施している。
1月9日のイベント開始前にはメディア向け内覧会も行われた。当日はやや暖かい日で、お酒を味わうには冷えが足りないかもしれないと心配になったものの、燗酒にふさわしいお酒と、おでんの組み合わせを堪能することができた。
■いまはほとんど使われない3番線ホーム
今回のイベントの目玉は、普段使用されない両国駅の3番線ホームでお酒を味わえるところにある。かつて房総方面の列車が出発し、最近まで新聞などを運ぶ列車のために使用されていたこのホームは現在、イベントスペースとして活用されることがほとんどである。餃子を焼くイベントなどが夏季に行われ、多くの参加者でにぎわっている。
そんな3番線ホームで、冬にお酒とおでんを楽しめるというのは、左党の人にとってたいへんうれしいことであろう。平成を飛び越え、昭和の懐かしさすら感じることができ、かつて房総方面の列車が出発したホームでノスタルジーを感じつつ、燗酒とおでんで体を温めるいうのは、格別のものではないか。
■適温の燗酒とおでんを味わう
おでん券と試飲券を手に、飲みたくなるようなお酒のコーナーに行く。試飲券は10枚あるものの、全部飲んでいると大変なので、適宜選んで味わうことにする。
まずは長野のお酒「喜久泉」。「純米吟醸 猿倉の泉」を味わうことにした。少しぬるい程度の燗ではあるものの、お酒の香りを飛ばさない程度としてはこのあたりがちょうどいいのだろう。
今回のイベントでお酒を提供するスタッフは、全員が酒蔵の社員または利き酒師の資格保有者であり、日本酒はつねに最適の温度で提供しているとのことだ。
続いて新潟・魚沼の高の井酒造「魚沼純米 たかの井」。こちらもぬるめ。米の質感を出すためには、このあたりが適切なのだろう。
お酒を2杯も飲んでいると、おでんにも手を出したくなった。おでんコーナーでは、紀文の5種類のおでんから、1種類を選んで食べることができる。すべてレトルトパックに入ったものが温められており、大きなお椀に開けて食べるようになっている。
そんなおでんに合うのは、熱燗である。「おいしいお燗酒が飲める店」を掲げる広島の賀茂泉酒造では、燗酒を温める道具から湯気が立っていた。冬にしては暖かい日と言っても、やはり冷えるものは冷える。こんな日には熱燗がいいのではないかと思い、「山吹色の酒」をいただくことにした。お猪口に注がれたお酒は、その名の通り山吹色となっており、お酒らしいお酒である。
早速、おでんとあわせて味わうことにする。お酒は熱く、おでんも温かい。出汁はからだに沁みる。冬にお酒を飲んでいる、という感じが出るようなお酒である。
■黄色い帯の電車を眺めながら
会場となった両国駅3番線ホームでは、内覧会の間も頻繁に黄色い帯の中央・総武線(各駅停車)の電車が目の前を通り過ぎていった。撮影用のこたつ席もあり、SNSに投稿するにも適切な場所となっている。赤提灯もお酒を飲んでいる気分を感じさせ、夜になると寒さがお酒の味わいを引き立たせ、おでんの出汁がからだを温めることになる。
このイベントはチケット予約制であり、こたつマス席も予約が必要とのこと。ホームに入る際は入場券も必要になる。
ノスタルジーあふれるホームで、昭和の雰囲気を味わえるこのイベント。行き交う中央・総武線の電車からも、つい立ち寄りたくなる雰囲気が感じられたかもしれない。