米ラスベガスで開かれている世界最大のエレクトロニクスの展示会「CES 2020」、今回はソニーが出展した2020年モデルの8K/4Kテレビ「ブラビア」の新製品をレポートします。現地では、ブラビア新製品の担当者であるソニーの坂上弘和氏に詳細を聞くことができました。
MASTERシリーズの高画質技術を継承する8K液晶の兄弟モデル
プロの映像制作者の意図を正確に反映した画作りを追求したフラグシップ“MASTERシリーズ”。その高画質化技術を踏襲した8K/HDR液晶テレビの弟モデルとして登場したのが「Z8H」シリーズです。85インチと75インチが北米モデルとして発表されました。価格と発売時期は未定です。
アメリカでは、MASTERシリーズの8Kテレビ「Z9G」シリーズが発売済みですが、日本にはまだ導入されていません。新製品のZ8Hシリーズも、日本で発売されるかどうかは現時点で発表がありません。今年は、東京オリンピック/パラリンピックの8K放送も控えているので、ぜひ前向きに投入を検討してもらいたいところです。
Z8Hシリーズの位置づけについて、坂上氏は「8Kブラビアのラインナップとして新規に追加したライン。本機を導入する市場で、8Kテレビのユーザー層拡大を図りたい」と説明します。価格は、Z9Gシリーズよりもこなれてくるのでしょうか。
アメリカでは、ネイティブ8K画質の放送が始まっていないこともあり、CESのブースでは本機が搭載する8K専用のデータベースとアルゴリズムにより、さまざまななコンテンツを8Kにアップコンバートして最適化する「8K X-Reality Pro」の出来映えを見せる比較展示にも力を入れていました。Z8Hシリーズには、ソニーがブラビアシリーズのプレミアムモデルのために開発した高画質プロセッサー「X1 Ultimate」が搭載されます。
Z8Hシリーズは、8Kの映像がまるで宙に浮いているような臨場感を実現するため、パネル周囲のフレームを可能な限り狭く細くデザインしています。85/75インチのテレビなのに、見た目にサイズはそれほど大柄に感じられない理由は、スリムなフレームを実現したところにもあります。
フレームが目立たなくなるほどスリムになると、見た目には美しさが増すものの、スピーカーユニットを配置するためのスペースも削られてしまいます。坂上氏は「Z8Hシリーズでは、本体側面のフレーム内に小さなトゥイーターユニットを埋め込んで、微細な振動でフレームそのものを鳴らして音を出す最新の『フレーム トゥイーター』という技術を採用している」と説明します。
ソニーのブースでは、フレームの下側に配置したスピーカーユニットだけで音を鳴らすテレビと、Z8Hシリーズのフレーム トゥイーターの音質を比較するデモンストレーションが体験できました。特に、中高域の音の定位が明瞭で力強く、音場にも広がりが感じられるサウンドは、とても魅力的に感じられました。8Kの高画質映像がさらに映えてくる手応えがあります。
Z8Hは、バックライトにエリア駆動に対応する直下型LEDを搭載しているので、明暗の切れ味が鋭く、色鮮やかな8K映像を再現できます。テレビを設置した室内の明るさに合わせて、テレビの画面の明るさと音質の両方を自動的に調整する「アンビエント オプティマイゼーション」の機能を初搭載したことにより、ユーザーがテレビのセッティングを意識することなく、いつでもベストコンディションの映像と音が楽しめるメリットが得られます。
Z8Hシリーズは、Z9Gシリーズよりもデザインが軽やかになった印象を受けました。テレビスタンドはパネルの下側、両サイドからディスプレイを支えるポジションと、パネルの下側中央に寄せて、少し小さめなラックの上にも設置できるように2つのポジションが選べるようになっています。
動画表示の精細感を高めた4K有機ELブラビア
A8Hシリーズは、4K有機ELブラビアのフラグシップモデル「A9G」シリーズの高画質化技術を踏襲する弟モデルです。本機も、北米・日本ともに発売時期や価格に関連する情報は未定とされていますが、位置付けは現在発売中の4K有機ELブラビアの「A8G」シリーズの後継機種になりそうです。画面サイズは65インチと55インチの2ライン。
高画質プロセッサーを最上位の「X1 Ultimate」とし、有機ELブラビアでは初めて、動きの速い映像をくっきりと再現するための「X-Motion Clarity」が搭載されました。有機ELテレビはバックライトを持たないため、代わりに素子の明滅をコントロールして、動画の精細感を高めるための黒挿入を行いながら、映像全体の明るさ保ったままクリアな動きを再現します。オリンピックをはじめ、スポーツイベントの映像にますます臨場感が加わりそうです。超解像エンジン「4K X-Reality PRO」により、立体的できめ細かな映像をブースでデモンストレーションしていました。
本機もスリムでスタイリッシュなデザインですが、フレームを狭くしながら迫力あるサウンドが楽しめるよう、画面から音が出るような体験を「アコースティック サーフェス オーディオ」の技術により実現しています。A8Gシリーズと同様に、画面を振動させて音を鳴らすためのアクチュエーターのほかに、背面下部に低音を担うウーファーを配置したことで、土台の安定した肉厚なサウンドを実現しています。
本機もまた、画面の映像とオーディオシステムのサウンドを視聴環境に合わせて自動的に最適化する「アンビエント オプティマイゼーション」機能を搭載しています。
8K液晶のZ8Hシリーズと4K有機ELのA8Hシリーズともに、映像のHDR方式はHDR10、HLGとドルビービジョンに対応。内蔵スピーカーでドルビーアトモスの立体サラウンド再生が楽しめます。IMAX Enhancedコンテンツの再生対応のほか、Netflix画質モードも載せています。クリエイターが作品に込めた意図を忠実に再現できるテレビとしても、魅力を広く打ち出していきたいとソニーの坂上氏は意気込みを語っていました。どちらのブラビアも、日本での発売を期待したい新製品です。