1993年から旅行キャンペーン「そうだ 京都、行こう。」を展開しているJR東海。2020年1月10日(金)から3月18日(水)の冬から早春にかけて行われるキャンペーンでは石庭(せきてい)をフィーチャーした旅行商品を発売する。京都を知り尽くしたJR東海がオススメする石庭とは? 一足早く見学してきた。
京都観光は冬がチャンス!
定番の修学旅行先であり、このところは多くの訪日観光客で賑わいを見せている古都・京都。いつ行っても混んでいそうと考えがちだが、JR東海によれば意外にも、近年は京都を訪れる観光客の数が減少傾向にあるという。その要因は、修学旅行先の分散化や外交問題による訪日観光客の減少などさまざまだが、逆にいえば、今が京都旅行のチャンスなのだ。そうした中、京都観光誘致を目的に展開する今冬のキャンペーンとして、JR東海が目を付けたのが石庭だ。
石庭とは、独特の世界観を立石と石組だけで表現する日本庭園の様式の1つ。水を使用しない代わりに敷石の上に描かれる「砂紋」で水の流れを表現し、その上に「蓬莱山」や「三尊仏」に見立てた立石を配置したり、縁起のいい鶴・亀に見立てた鶴島(鶴石)や亀島(亀石)などを配したりするのが特徴だ。
かなり渋いキャンペーンに思えるが、そこは京都を知り尽くすJR東海。訪問先には、思わず心を奪われる石庭がこれでもかとラインアップされていた。
大徳寺 瑞峯院の「独坐庭」と「閑眠庭」
戦国大名として名を馳せた大友宗麟によって1535年に建立された瑞峯院。非公開の塔頭が多い大徳寺の境内にあって、年間を通して公開されている瑞峯院は稀有な存在だ。瑞峯院の石庭は南に「独坐庭」、北に「閑眠庭」があり、いずれも昭和の名作庭家・重森三玲氏が手掛けたものだ。
「独坐庭」は、中国の神仙思想で東方海中にあり、仙人が住まうとされる蓬莱島を、重森三玲氏の感性で具現化した石庭。砂紋は荒々しい海を表現しており、蓬莱山の石組も独特で力強い。
一方の「閑眠庭」は石組が十字になっているのが特徴。これは、キリシタン大名としても知られた大友宗麟を偲ぶ意匠であるとともに、重森三玲氏ならではの遊び心でもあるのだろう。
庭園を含む境内全体が国の名勝に指定される曼殊院門跡
比叡山の南西麓にある門跡寺院の曼殊院。延暦年間(782~806年)に天台宗の開祖・最澄が比叡山上に創建し、その後、御所内公家町への移転を経て、1656年に現在の地に造営された。
大書院前に広がる枯山水庭園は、水の流れを表した砂紋の中に鶴島と亀島を配した鶴亀の庭。曼殊院門跡は皇室一門や公家方が出家して住職を務める門跡寺院だけあって、庭園にも公家風の独特の意匠が取り込まれている。
狩野元信が庭園をキャンバスに描いた“不変の美”
臨済宗大本山妙心寺の塔頭である退蔵院は、1404年に建立された山内屈指の古刹だ。方丈(本堂)西側の「元信の庭」は、室町時代に活躍した絵師・狩野元信が作庭したといわれている。
庭の背景には主に常緑樹を植え、年間を通して変わらない“不変の美”を追求。置かれた石の色合いははっきりしており、白砂とのコントラストが美しい。まさに、日本画から現実世界に飛び出したような庭園だ。風が吹けば葉音が心地よく、心を和ませる。
「そうだ 京都、行こう。」では、臨川寺や弘源寺など普段は見学できない庭園を見られるプランや、重森三玲氏の孫・重森千靑氏の解説を聞きながら石庭をめぐるプランなど、さまざまな商品を用意している。これらのプランにはオリジナル「禅めぐり帳」や特別「禅語御朱印」の引換券1枚がセット(2枚目からは対象寺院にて1枚300円。ただし、「禅めぐり帳の提示が必要)になっているので、京都の魅力を持って帰ることもできる。
また、ほぼ同時期に開催される京都デスティネーションキャンペーン「京の冬の旅」を組み合わせれば、貴重な非公開文化財を見学することも可能だ。
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