外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年12月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ユーロ/円 12月の推移】

12月のユーロ/円相場は119.987~122.647円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.0%上昇(ユーロ高・円安)した。ユーロ高の背景は主に、欧州中銀(ECB)の追加緩和観測が後退したことと、英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitを巡る混乱が収束するとの期待が高まったことであった。

12日にラガルドECB総裁が発表した「戦略見直し」は、マイナス金利の副作用などに配慮した動きとの見方が多く、市場はECBがハト派姿勢を弱めたと受け止めている。Brexitについては、12日に投開票された英総選挙で、ジョンソン首相率いる与党・保守党が圧勝したことから、EUとの離脱協定案が英議会で批准される可能性が極めて高まっている。このため、2020年1月末に「合意なき離脱」が実現するリスクはほぼなくなったと見られ、Brexitによるユーロ圏経済への打撃も最小限に留まるとの期待が広がっている。

【ユーロ/円 1月の見通し】

1月のユーロ/円相場は、(1)中東の地政学リスク、(2)米中通商協議、(3)英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitをにらんで神経質な展開となりそうだ。

(1)米軍がイランで英雄視されている司令官を空爆で殺害したことを受け、イランは報復を強く表明。軍事的な衝突に発展すれば、リスク回避のユーロ安・円高に振れる可能性がある。

(2)米中は1月15日に「第1段階」の通商合意について書名式を行う予定。トランプ米大統領はその後、「第2段階」の交渉に向けて訪中する考えを示しており、米中は融和方向に舵を切ったように見える。こちらは、リスク選好のユーロ高・円安につながるだろう。

(3)英国は1月31日にEUから離脱することがほぼ確実と見られ、焦点は、2020年12月末を期限とする「移行期間」のうちに新たな貿易協定を結べるかに移っている。市場では約11カ月という短い「移行期間」内の合意は困難との見方が多く、仮に時間切れとなれば関税の復活などで「合意なき離脱」と似た状況に陥るリスクがある。

一方で、ジョンソン英首相は「移行期間」を延長しない(1回限り最大2年の延長が可能)方針を示しており、1月上旬に英議会で採決される離脱協定案に「移行期間」の延長を封じる条項を盛り込む見通しだ。この離脱協定案が可決されれば、市場は少なからず動揺すると考えられるが、その後に始まる英国とEUの貿易交渉の行方を見極めたいとのムードも広がりそうだ。いずれにせよ、1月のユーロ/円相場は値動きが不安定化する場面が増えるだろう。

【1月のユーロ圏注目イベント】