前期から順位戦19連勝と破竹の勢いで、名人挑戦までマジック1
第78期順位戦(主催:朝日新聞社、毎日新聞社)A級7回戦、渡辺明三冠―稲葉陽八段戦が1月4日に大阪「関西将棋会館」で行われました。6連勝で先頭を走る渡辺三冠と、3勝3敗から白星を先行させたい稲葉八段による戦いです。
居飛車党同士の一戦は、後手の渡辺三冠が4手目に角道を止めて、力戦調の序盤戦になりました。お互いの陣形は美濃囲い。ただし、後手は玉を囲いに収めることはせず、居玉のままで右桂を使って仕掛けていきました。
中盤戦に入り、難解な折衝の中でペースをつかんだのは渡辺三冠でした。1歩損ながら、攻めの桂を守りの桂と交換することに成功すると、眠っていた角も攻めに参加させます。終盤に入ってもうまく挟撃態勢を築くと、稲葉八段の粘りを振り切って94手で勝利しました。
これで渡辺三冠は負けなしの7連勝で、初の名人挑戦が見えてきました。ほかに全勝はもちろん、1敗者もいません。残り2局のうち、どちらかを勝てば豊島将之名人への挑戦権を獲得します。7回戦のほかの4対局はこれから順次、行われていきますが、4勝2敗で追っている広瀬章人八段と三浦弘行九段がともに敗れた場合には、8回戦を待たずに渡辺三冠の挑戦が決まります。
2年連続で勝率8割以上の渡辺三冠が、森内俊之九段と羽生善治九段に続く、史上3人目のA級順位戦9戦全勝を果たせるかどうかにも、注目したいと思います。