きょう5日(21:00~)に後編が放送される木村拓哉主演のフジテレビ開局60周年特別企画ドラマ『教場』。長岡弘樹氏の同名小説を原作に、木村演じる警察学校のカリスマ教官・風間公親が、極限状態を生き抜く生徒それぞれのよこしまな思惑を暴いていくミステリーで、『踊る大捜査線』などで知られる君塚良一氏が脚本を担当するという話題作だ。

この作品の演出を務めるのは、木村主演でこれまで、『若者のすべて』(94年)や、『ギフト』(97年)、『眠れる森』(98年)、『空から降る一億の星』(02年)、『プライド』(04年)と数々のヒット作を手掛けてきた中江功監督。同氏が見る“戦友”のような関係だという木村拓哉の魅力とは――。

  • 三浦翔平、大島優子

    三浦翔平(左)と大島優子=『教場』1月5日放送の後編より (C)フジテレビ

■まさかの白髪&義眼志願

――今作は大人数が登場するドラマですが、演出のコツや苦労はあったのですか?

キャラクターは脚本の段階でできていて、そこからさらに個性をつけていくんですけど、そんなに大変ではなかったですね。木村さんは自分が出ないシーンでも撮影現場にいたりするんですよ。すると、教官と生徒の関係のまま皆がピリピリしたり、前編の最初の風間が登場する場面なんかは、木村本人が緊張感を出すために、それまでみんなと一切しゃべらなかったり雰囲気づくりをしてくれたので、あのシーンの生徒たちは作ってない、そのままの緊張感が撮れた感じでした。

まさに“木村教場”。最初からピリッとしていて、「よろしく木村です」みたいな感じは一切なかった。出演者の輪にも入ってこないし、木村教官に対する緊張感はかなりありましたね。だから仲の良い雰囲気だったのは舞台あいさつのときだけで(笑)、あの緊張感を最後まで保とうとしてくれていました。

――これまでの木村さんのドラマの雰囲気とは違いましたか?

『プライド』(04年)をやったときは、チームが男だけだったので、肩を組んで上半身裸になって歌う(笑)みたいな雰囲気でしたから、今回は当然違っていましたね。緊張感が違うと言うか。だから、木村さんが雰囲気を作ってくれたのはすごく楽でしたね。僕らがそういう空気感を作ってもたかが知れているんですよ。だけど今回は“風間がいる日いない日”で、生徒たちの緊張感が全然違いました。

――白髪に義眼という木村さんのビジュアルも衝撃的でした。

僕はそこまでやらなくていいかなと当初は思っていたんですよ。だけど、木村本人が真っ白でいいっていうから「マジかよ」って(笑)。義眼もどこまでやるのかなと思っていたんですけどこれもやる気満々だったので色々試して、工夫してあのビジュアルができ上がったりました。僕は怖すぎないだろうかと心配しましたけど、木村さんは「本に書いてありますから」って言って、率先してやってくれました。彼はこれまであらゆる職業の役をやってきていますけど、そのどれとも全然違って面白いと思いましたね。

  • 中江功監督

■“三ツ星”取りに行っているはずなのに…

――さまざまな作品を一緒に作られてきた木村さんと監督はどういう関係性でしょうか?

前回の作品は『プライド』(04年)かな。ずいぶん経ちますね。だけど年に1回は誕生日とかで連絡しているし、スタジオですれ違ったら話はしているのでそんなに久しぶり感はありませんでした。お互い若いときからやっているので、役者と監督という関係よりも“戦友感”がありますね。木村は僕のことを「なかにぃ」って呼んでくれるですけど、今回は生徒たちの前では絶対呼ばなかったです。緊張感を保つためにも、そういう空気を見せたくなかったんでしょう。なので僕も「たくや~」とは呼ばなかったです。寂しかったけど(笑)

芝居のニュアンスは昔から見てきているので、お互い言わなくても分かり合ってやれた感じでした。ただ、彼はたくさん経験を積んできていますから、最初の頃よりも何倍も円熟味を増したなと思いました。だけど、基本は変わってなくて、台本は必ず覚えてくるし、プランもいくつか持ってくるし、真面目に向き合う良いところは何も変わっていなかったですね。

――そんな“戦友”の監督から見て、木村さんの役者としての魅力は何でしょうか?

人たらしなんですよ、あの人は(笑)。この作品とこのチームを愛しているっていうのを全面的に出すし、いいものを一緒に作ろうという感じがスタッフ、キャストみんなに伝わるんです。

別の現場(『グランメゾン東京』)では“三ツ星”取りに行っているはずなのに、こっち(『教場』)に取材とかできた場合にはそれを微塵も出さない。向こうの現場はもしかして終わったのかな?って思うくらい(笑)。今この目の前にいるチームと一緒に、この作品を良くしようっていうのを常に考えているので、周りのみんなもしっかりやらなきゃって思うし、裏切れないという気持ちになる、そういう人ですね。だから、「またぜひ一緒にやりたい」と思ってしまうし、別のチームでやっているときは、それにみんなが嫉妬する。そこが彼の魅力ですね。