新年の幕開けに、パーソナルコンピュータのハードウェア技術の動向を占う「PCテクノロジートレンド」をお届けする。本稿はチップセット編とし、インテルとAMDの新世代チップセットのロードマップを紹介したい。
(1/1掲載) PCテクノロジートレンド 2020 - プロセス編 (1/2掲載) PCテクノロジートレンド 2020 - CPU編 (1/3掲載) PCテクノロジートレンド 2020 - GPU編 (1/4掲載) PCテクノロジートレンド 2020 - DRAMとFlash編 (本稿) PCテクノロジートレンド 2020 - チップセット編 |
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◆Intel Chipset
先にIntel CPUの所で、Comet Lake世代では新しいプラットフォーム(LGA1200)に切り替わるという話をした。これに合わせてIntel 400シリーズチップセットが、やはりComet Lake登場のタイミングで市場投入される。
というか、実はもうMobile向けには400シリーズチップセットがComet Lakeと合わせて搭載される形で投入されている。Desktop向けのSKUとしてはZ490/H470/B460/H410の4製品が用意されているようである。個々の細かな違いは現状はっきりしていないが、この400シリーズの全体としての特徴は
- CPUとの接続は引き続きDMI 3.0
- 最大24LaneのPCI Express Gen3
- 最大10ポートのUSB 3.1。うち6ポートはUSB 3.1 Gen2(10Gbps)
- 最大6ポートのSATA 3.0
- Intel Wireless-AXを内蔵
- Thunderbolt 3をサポート(内蔵ではない模様。あくまで外付けでThunderboltのコントローラが接続可能、の意味と思われる)
- Intel Smart Sound Technologyを搭載(これに向けてDSPを4個内蔵)
- Intel Rapid Storage Technology 17を搭載
といった項目が挙げられている。また第2世代Optane Memoryのサポートも追加されており、逆に言うと今年登場する第2世代Optane Memoryは、Coffee LakeまでのPlatformでは利用できない可能性がある。
総じてあまり差が無いというか、基本的なところでCPU側がPCI Express Gen4に未対応な間はチップセット側でPCI Express 4.0への対応は無理だし、CPUとの接続がDMI 3.0(PCI Express 3.0×4)だから、チップセット側からむやみにPCI Expressレーンを増やしても性能的にはあまり意味がない。実際、機能と言う意味ではZ390と比較するとWi-Fi 6対応のIntel Wireless-AXが新しい程度である。ただプラットフォーム非互換である以上、旧来のZ390を使うという事は出来ない(電気的に不可能かどうかはまた別の話で、変態マザーボードを得意とする某ベンダーが、Z390を載せたComet Lake対応マザーボードを出しても不思議ではない。Intelがそれを許すとも思えないが...)訳で、その意味では機能的に対して変わらなくても問題はないのかもしれないが。
はっきりしないのがCore-X向けのX299である。Cascade LakeはX299のまま利用できたが、Core-Xそのものが次にCooper Lakeに行くのか、Ice Lake-SPに行くのかが現状はっきりしていないからだ。もし仮にCooper Lakeのままであれば、引き続きX299が利用されることになると思うが、Ice Lake-SPに行くのであればプラットフォームが刷新になる可能性が高い(PCI Express Gen4対応のため)。この場合はチップセットもX499とかに切り替わる公算は大である。ただCPUとのLinkはPCI Express Gen4対応DMI 4.0になるとは思うが、AMDのTRX40の様に広帯域化(x8)するかどうかは不明である。
◆AMD Chipset
現状ハイエンドのみX570、メインストリーム向けはX470/B450という体制になっているAMDのチップセットであるが、X570はGlobalfoundriesの14LPPで製造(12LPで製造、という話もある)という話の割には発熱が多いという問題も抱えている。このあたりがB550を投入しない理由の一つであるが、Zen3に向けて現在AMDは600シリーズチップセットを準備中である。実は400シリーズまでのチップセットはAMDによる設計ではなく、外部に設計を委託していたのだが、X570に関してはRyzen 3000シリーズのcIOD(I/O Chiplet)の設計を流用して製造されており、なのでAMDによる自社設計となっている(ダイそのものを流用している訳でなく、PCI Express周りを流用している模様)。ただこれは確実ではあるものの無駄が多い設計でもあって、それもあって600シリーズでは再び外部に設計を委託するらしい。今度はX670とB650という2本立てで、PCI Expres Gen4をサポートしつつ、発熱が大分抑えられるという事になるらしい。登場時期はZen3コアのRyzen 4000シリーズにあわせて、恐らく今年第3四半期であろう。
Threadripper向けには既にTRX40が提供されており、こちらのスライドからも、明らかに次世代もTRX40でカバーするように見える。TRX40の構成は現時点ではマーケットで最も重厚として良いレベルのもので、今のところこれを更新する必要は感じない(恐らく次はDDR5とPCI Express Gen5に対応する2021年後半だろう)。そんな訳で、今年夏のCOMPUTEXのあたりには新しい600シリーズチップセットを搭載したマザーボードのPreviewがお披露目されるかもしれない。