一人称視点のシューティング「FPS」ゲームでは、「音」をしっかり聴き分けられるか否かが勝敗を分けます。プレイ中は、銃声や足音から敵の場所を予測して立ち回らなければなりません。ですが、音の聴こえかたは使うイヤホンによって大きく変わります。

そこで、バトルロイヤルゲーム『PUBG MOBILE』の日本代表選手としてアジア全域大会4位の成績を残したことのある筆者が、価格別にいくつかのイヤホンをピックアップ。実際に、モバイル端末のゲームプレイでどのような違いがあるのか聴き比べてみました。

今回は10,000円~30,000円のイヤホンをトライ。筆者が長く使用してきたイヤホンも、この価格帯のモデルが多かったように思います。ゲームだけを目的に購入するにはやや高いと思うかもしれませんが、音楽を楽しむ普段使いもできるスペックであれば、むしろコストパフォーマンスは良好といえるのではないでしょうか。なお、取りあげた各製品の価格は2019年12月時点のものです。

  • いろいろなイヤホンで『PUBG MOBILE』をプレイ

足音がよく聴こえた「SE215」

まずはSHUREの「SE215」を装着してみました。SE215は、3.5mmステレオミニプラグの有線接続とBluetoothのワイヤレス接続に対応する「高遮音性イヤホン」です。市場価格は12,000円前後。

  • SHUREの「SE215」

『PUBG MOBILE』をプレイしてみると、足音がよく聴こえるのがわかります。ゲーム内の環境音と足音をはっきり聴き分けられるので、敵の接近をすばやく察知できるでしょう。

実際に、離れた位置にいる敵の足音からピンポイントで位置を特定できました。特に試合中盤以降は敵との距離が近くなりがちです。終盤は「一寸先が闇」のシーンも。わずかな足音も逃したくない人には向いていると思います。

全体的な音質としては、低音の響きがよく、耳に届きやすい印象。また、銃声の音源も特定しやすいように感じました。ゲーム内で100m以上離れたプレイヤーの銃声でも、だいたいの位置を把握できるのではないでしょうか。

高遮音性イヤホンをうたうだけあって、周囲のノイズはしっかりとカット。周りの会話などは耳に入ってこないですし、ゲーム音が周囲に漏れる心配もないでしょう。オフライン大会などで力を発揮してくれそうなイヤホンです。

「IE-40 PRO」は金属音がやや強め

続いて視聴するゼンハイザーの「IE-40 PRO」は、ダイナミック10mm広帯域トランスデューサーを搭載した耳かけタイプのイヤホン。市場価格は12,000円前後です。

  • ゼンハイザーの「IE-40 PRO」

音質面では、低音の響きがやや弱めです。乾いた音が特徴で、金属音がやや強い感じです。『PUBG MOBILE』をプレイすると、銃声が全体的に高めに聴こえます。音源の位置は判断しやすく、ゲーム内で100m程度の距離であれば、敵プレイヤーのポイントはとらえやすいでしょう。

マークスマンライフルの「mini14」など、高音域の銃声がよく聴こえるので、同様の武器を使った勝負では性能を発揮できると思います。

遮音性については、外部の音は「やや聞こえにくい」といった印象。完全に遮音しているわけではありませんが、開放型ほど外の音が入ってくるわけでもありません。

高音と低音の差がはっきりとわかる「ATH-E50」

オーディオテクニカの「ATH-E50」は、フルレンジ再生のシングル・バランスド・アーマチュアドライバーを搭載したカナル型イヤホン。音響特性と耐久性を追求した自社設計の着脱コネクターを採用しています。市場価格は26,000円前後。

  • オーディオテクニカの「ATH-E50」

装着してみると、低音がしっかりしているだけでなく、高音との差がはっきり聴こえることに驚かされます。『PUBG MOBILE』では、銃声と足音、そして環境音がそれぞれ明確に聴き分けられました。

実際のプレイ中、車両が近寄ってくるのと同時に、違う方向の敵から狙われるシチュエーションがありました。しかし、車両の音に銃声がかき消されることなく聴き分けられたため、敵の位置もしっかり把握できました。補給物資の飛行機が近づいてきたときも、近づく敵車両の音を聴きとれますし、同時にさまざまなことが起こるシーンに対応できるのはうれしいですね。

また、会話レベルの外部音はほぼ聴こえません。自身のゲーム音が外部に漏れることもほとんどないでしょう。オフライン大会などでも使いやすいのではないでしょうか。

軽い銃声の「WESTONE W10」

続いて試したのは、テックウインドが販売するWESTONEの「W10」。バランスド・アーマチュア・ドライバーが繊細で透明感のあるサウンドを再現します。

  • WESTONEの「W10」

音質は、どちらかといえば軽めな印象。『PUBG MOBILE』では、銃声が軽く、金属音が強く出ていました。耳に対する重低音の響きはそこまで大きくないでしょう。

音が軽いと、足音による敵の接近には気づきにくい側面がありますが、銃声の聴き分けを精度高く行えます。そのため、敵の持っている武器に合わせた戦闘を組み立てるのに役立つでしょう。

遮音性については、外部の音がわずかに聴こえるレベル。よほどうるさい環境でなければ気になりません。最大音量でプレイすると若干の音漏れはあるものの、オフライン大会などでも活躍しそうなイヤホンだと感じました。

「RAYZ Pro SE-LTC7R」は低音の伸びがいい

10,000円~30,000円のイヤホンで最後に試したのは、パイオニアの「RAYZ Pro SE-LTC7R」。iOS 11以降、macOS Sierra 10.12以降に対応し、Lightning用ケーブルとUSB Type-C用ケーブルが付属します。Lightning用ケーブルには、充電用のLightningポート(メス)も付いていて、Lightning端子を持つiPhoneやiPadを充電しながらでも、通話や音楽を楽しめるのはうれしいですね。市場価格は15,000円前後です。

  • パイオニアの「RAYZ Pro SE-LTC7R」

RAYZ Proを装着すると、SHUREの「SE215」と同様に銃声が耳に響きます。低音の伸びがよく、気持ちのいい聴き心地。『PUBG MOBILE』では、ゲーム内で100m以上離れた場所からの銃声でも、ポイントを判断しやすいので、音による索敵にも貢献してくれました。序盤からでも長距離戦闘で活躍してくれるでしょう。

遮音性はバッチリ。外部音をしっかりと遮断してプレイに集中できます。ゲーム音が外に漏れることもないので、快適にプレイできそうですね。

共通して、索敵性能の高さが光った

10,000円から30,000円のイヤホンでは、どれも精細な音を聴かせてくれました。『PUBG MOBILE』では、敵が銃を撃ったポイントを正確に絞れれば、有利に立ち回れますが、遠い位置の銃声ほどポイントがぼやけて聴こえるのが一般的です。ですが、この価格帯のイヤホンは、100mほど離れた場所にいる銃声もピンポイントで位置を特定できたので、試合をかなり有利に運ぶことができました。

また近距離の索敵では、足音に意識を集中させる必要がありますが、今回のイヤホンはどれも方向に加えて音源の高度まで判断できました。傾斜の上にいるのか下にいるのかわかれば、思いがけない敵との遭遇も避けられますよね。

もちろん、本来の用途である音楽の再生にも申し分ない音質。ゲームと音楽をどちらも楽しむ用途としても、今回紹介したイヤホンは使い勝手がよさそうです。