「貯金するぞ!」と思ったときに目標金額として挙げられることも多い1,000万円という数字。その一方で、数字の切りが良いから1,000万円と言うだけで、実現するのは難しいと考える人も少なくないのではないでしょうか。1,000万円を短期で貯めるのは確かに難しいですが、1,000万円までの道を築きながら歩んでいくのは無理なことではありません。今回は、誰にでも実践できそうな1,000万円までの道のりを紹介します。
私でも1,000万円貯められる!
いきなり私事で恐縮ですが、筆者は「貯金1,000万」と聞くと、決まって頭に浮かぶ人がいます。それは筆者が初めて社会人として入社した会社で、一番に声を掛けてきてくれた当時入社5年目の先輩女性。経理・総務担当だったその先輩は入社手続き書類が必要だっただけなのですが、社会人初日の筆者には印象的な思い出です。
さてこの先輩、社内でも有名な貯金好き。いつもキレイにメイクして、身につけているものは一流ブランドのものばかり。それなのに入社5年にして1,000万円に届きそうな貯金をしていたよう。あるとき、上司の1人がそんなに貯金してどうするのか聞いたところ、「もうすぐ1,000万円になるから、1,000万円貯まったら考える」なんてさらっと答えた先輩。輪の中にいた筆者もある種の衝撃のようなものを覚えたものです。
当時は実は100万円を銀行の定期預金に預けると、1年間で5万円~6万円程度の利息が付いていた時代。大手都市銀行の定期預金金利相場が0.01%という今とは時代背景がまったく異なります。それでも同僚のなかでコツコツ貯金に励み、1,000万円近い貯金を持っていたのは彼女だけ。お金を貯めるテクニックのすべてを教わったわけではないですが、先輩の貯金行動を見聞きした限りでは、今、筆者が多くの人にお伝えしている貯蓄の基本を実践されていただけの様子です。
金利の違いで1,000万円に届くまでの道の長さは変わってきますが、1,000万円に届く道の築き方は同じで、低金利が長く続く昨今でも応用できることばかり。主な3つの行動を順番に紹介していきましょう。
1,000万円までの道(1): 支出を減らす
バブル崩壊前の好景気にあっても、徹底的にムダな支出を省いていた先輩。たとえば、仕事帰りの飲み会でも、終電前には必ず帰ります。帰路は通勤定期券を使い、絶対にタクシーは使いません。飲み会は、会社の親睦会で貯めたお金で出すときには参加しますが、2次会が自費となるような場合には参加しません。もちろん昼食はお弁当を持参。
それでも、アジア圏に年に2回程度は海外旅行を楽しんでいた先輩。衣服やバッグ、靴、化粧品などは免税でまとめ買いし、それ以外の機会にはほとんど買い物しないとのことでした。ちなみに旅費は旅行積立て利用です。
質の良いプチプラ製品が多い今の時代、免税店でのまとめ買いがお得かどうかは比較できないことですが、自分で決めた買い物基準を徹底して守ることはまねする価値はありそうです。
とはいえ、彼女のように徹底した交通費や飲み会費用の支出ゼロを実践できない人も多いでしょう。そのような人は、家計の固定費の見直しをしてみましょう。
家賃、保険料、通信費、光熱費など、契約を見直すことで支払額が減少するものもあります。たとえば携帯電話のプラン見直しで月々数千円の削減をすることも可能です。加入している保険は、本当にニーズに合っているか確認してみるのも良いでしょう。傷病手当金などの公的制度や見舞金などの会社の福利厚生制度などでカバーできる場合もあります。
1,000万円までの道(2): 収入を増やす
仮に月1万円でも給料とは別の収入を得られれば、その分を貯金に回すと1年に12万円余分に貯金できることになります。3年で36万円、5年で60万円……と積み重ねれば1,000万円までの歩みはいくらか早まります。
オークションやフリマアプリで不用になった品々を販売し、誰でも物をお金に換えやすくなってます。もちろん、アクセサリーや小物などの手作り作品、写真販売など、趣味をお金に換えることも可能です。
会社が副業を解禁しているのなら、起業したり、アルバイトなど他の雇用先でのWワークでお金を稼いだりすることもできますね。この方法は今の時代だからこそできることかもしれません。銀行預金の利息で稼げない分、労働やリサイクルなどの工夫で収入を稼いでみることも考えてみましょう。
1,000万円までの道(3): 資産運用をする
かつての経済状況をうらやんでも仕方のないことですが、冒頭で紹介した先輩の例では高金利に恵まれていたことも、1,000万円に早く近づくためのやはり大きな勝因だったでしょう。
今の時代、銀行預金で同じことは望めませんが、投資商品を利用した資産運用をすれば、当時のようなスピードを期待することはできそうです。
たとえば、毎月5万円ずつ10年間積み立てていく場合のシミュレーションしてみましょう。
シミュレーション結果を見て、金利による運用効果の違いがおわかりいただけたでしょうか。さらにボーナスを加算したり、期間をもう少し長めにしたりするなど、プラン次第で1,000万円も決して夢ではありませんね。
もう少し近づきやすくするためには、つみたてNISAなどの非課税制度などを活用してみるのもおすすめです。本来、預金利息や運用から得られる分配金・譲渡益などの利益には20.315%の税金がかかります。上表で言えば、課税された後の手取り額は下側の金額です。
しかし、仮に、つみたてNISAで上表どおりに運用できるとした場合、非課税期間中であれば上側の金額です。運用にかかる手数料などもかかるため、実際の手取り額とは異なりますが、非課税制度を利用することの価値は大きいことがおわかりいただけるのではないでしょうか。
非課税制度はつみたてNISAの他にもNISA、iDeCoなどもあります。それぞれ仕組みや目的が異なりますが、何のための1,000万円かという目的に合わせて上手に活用してみましょう。
1,000万円までのペースは変わってもOK
1,000万円への道のりとして、「支出を減らす」「収入を増やす」「資産を運用する」といった基本的な3つを説明しました。「到底ムリ」と思っていた人も、これらを実行しながらチャレンジしたくなったのではないでしょうか。
しかし、1,000万円に到達するまでの間には、ライフプランが変わり、家族のための支出が増えたり、思うように貯金ができなくなったりすることもあります。たとえば月の貯金額が5万円から1万円に減ることがあるかもしれませんし、せっかく貯まった貯金を取り崩す必要があるかもしれません。
しかし大切なのは、1,000万円までのペースは遅くなっても歩みを止めないことです。たとえば自分の収入から積立てする金額は減っても、分配金や配当金などの継続的な運用収益を期待できそうな投資信託や株式を保有しておけば、お金がお金を貯めていってくれます。収入が増えたり家計が楽になったりすれば、また積み立てのペースを速めていけばいいのです。
ぜひ3つの基本に忠実に1,000万円の道を進んでいってください。