俳優の上川隆也がこのほど、主演を務めるテレビ朝日系スペシャルドラマ『検事・佐方~裁きを望む~』(26日21:00~23:05)の取材に応じ、同局系ドラマ『遺留捜査』で演じる刑事・糸村聡と佐方との違いや、石野真子や水崎綾女といった共演者とのエピソードを語った。
柚月裕子氏の同名短編集をドラマ化する同作は、上川演じるヤメ検弁護士・佐方貞人が事件の真相を明らかにしていく"佐方シリーズ"。第4弾となる今回は、佐方が資産家宅で起きた空き巣事件に挑む。
――第4弾が決定したときの、率直な感想をお聞かせください。
待ちわびていました(笑)。原作の柚月(裕子)先生が新作を書き上げられて、それをドラマという形で演じられる日がいつ来るだろうと、心待ちにしておりました。なので今回、第4弾が決まったときは、密かに快哉を叫びました(笑)。
今作は法律の盲点を非常に巧妙について行われる事件が描かれています。その仕組み、からくりを2時間という枠でドラマに仕立てて、お客様に分かっていただくようにするのが、今回の1つのテーマ、課題のように受け取った部分もあります。一読したときから感じていたその課題を常に意識しながら演じさせていただきました。
――上川さんは、佐方貞人とはどんな人物だと考えますか。自身との共通点はありますか。
共通点はないかもしれないです(笑)。僕が司法試験に受かるとも思いませんし(笑)。佐方の生き方はある意味、とても不器用です。これまでの3作で少しずつ紐解かれてきたプロフィールからすると、どこか寡黙に過ごしていながらも「罪はまっとうに裁かれるべき」という父親から受け取った言葉を決して手放さない、いまだに父親の影を色濃く背負いながら歩いている男です。
そのうえで後々、検事を辞めて弁護士になりますが、検事としての佐方は常にピンと張られた、一歩間違えば大怪我をしそうなロープの上で、検事という職業に対する矜持を保っているように思えます。その環境を選んでしまうところが不器用だと思いますが、一方でそこが同じ男として愛しい部分だとも感じます。
――今作での佐方については、いかがでしょうか。
今回のドラマでいうならば、周囲にどれだけ反対されているかが分かっているにもかかわらず、法の上ではこれが正しいという1点で、ある結論を出しています。それこそが佐方らしさだと思います。あそこで日和見的な決断をする方法はいくらでもあると思うんですけども、それを選ばないのが佐方です。法に愚直であるところこそ、僕は愛しいと思っています。
――上川さんといえば、テレビ朝日系ドラマ『遺留捜査』で刑事・糸村聡を長らく演じています。佐方と糸村で、何か共通点はございますか。
僕は演じているそれぞれのキャラクターに何らかの関係性や共通性を見出すということは、実はないのですが、1つのことに専念するということに関しては、共通項があると言えないこともないかもしれません。法を介して決着点を常に見据える佐方と、遺留品というものから隠されている真実を追い求める糸村。ただ一方で、すべてのことを考慮して余計なことを口にすることもない佐方と、遺留品以外のことは何も気にしない糸村とでは、やはり方向性はまったく違うように思います。
――今作の共演者とのエピソードをお聞かせください。
石野真子さんとはシーンがご一緒できる機会はなく、同じ撮影現場の待ち時間でしかお顔を合わせる時間がなくてちょっと残念でした。ただ、相変わらずかわいらしい方で、変わらない。僕がアイドルとして拝見していた頃と全然変わらない方だとあらためて感じました。遠くから笑って手を振ってくださるんです。それがなんともかわいらしくて(笑)。 レギュラーの松下由樹さんや伊武雅刀さんとは、時間が経ったから何かが変わる、ということはまったくなくて、いつものように出会ってすぐにこれまでの空気でお芝居ができるというのが、楽しいし、ありがたかったです。
そして今回、新たに水崎綾女さんが入ってくださいましたが、彼女の空気はこれまでパートナーを務めてくださった方々とはまた違って、底抜けの明るさがありました。今作のストーリーがある意味、ちょっと固めな話の中に、非常に柔らかい風をもたらしてくださいました。現場では常に朗らかな笑顔で、だからこそ和む空気がそこにあったと思います。
――上川さんたちがつくってきた空気が良かったというのもあるんですかね。
それはどうでしょう(笑)。ただ、初めて臨む現場でも、自分をそのまま持ち込める水崎さんの芯の強さを感じました。
――それでは最後に、視聴者にメッセージをお願いいたします。
シリーズ4作目となりますが、これまでの作品とまったく遜色のない、その上でまたひと味違った法曹ドラマをお楽しみいただけると思います。法曹ドラマは法廷シーンがクライマックスに来るのが定番ですが、今回は趣が少し違い、法廷ではない場所で描かれるクライマックスこそが見どころではないでしょうか。不思議なんですが、法曹ドラマとして成立している。それは、愚直なまでに検事である佐方だからこそ、成立したんだと思っています。ぜひ楽しみにしていただきたいです。