2019年10月から消費税の税率が8%から10%に上がりました。この消費増税分の使い道として、当初予定されていた幼児教育・保育の無償化がようやく始まり、恩恵にあずかっている方も多いかもしれません。
しかし、実際は何でも無料になったわけではありません。お金を払う必要がなくなったもの、負担しなければならないもの、認可外保育に至っては支給された補助金を確定申告しなければならないケースまであり、かえって複雑になったというのが現状です。
認可外保育・ベビーシッターの補助金は「雑所得」
一般的に補助金は、申請をして許可されると、預金口座にお金が入ることになります。そのため、補助金は収入=確定申告が必要なもの、として考えることができ、実際会社でも、助成金・補助金をもらうと「雑収入」という形で計算し、申告をします。
個人の所得税でも基本的な考え方は同じです。保育に関する補助のお金は、自分の収入に含めて「雑所得」という項目で申告をする必要があるのです。
認可外保育のうち、国や自治体が行っているベビーシッター利用の補助金についても、雑所得にカウントされます。
事業の中には利用者の手許を通過せず、直接事業者に補助金が支払われるケースもありますが、その場合も同様に、補助してもらった金額を雑所得の中に含めて申告する義務がありますので、注意が必要です。
税負担はどれくらい増える? 年収別に計算してみると……
例えば東京都の「ベビーシッター利用支援事業」を使った場合、1時間あたりの利用料は250円、正規の利用料が2,200円であるため、差額の1,950円を収入として、確定申告する必要があります。
実際に、どれくらい税負担が増えるのでしょうか。240万円、600万円、1,020万円と3つの年収のケースを想定し、仮に会社員が1年間、1カ月の上限である220時間ベビーシッターを利用した場合を考えてみます。
雑所得の申告による所得税、住民税の税額の差額を計算すると、年収240万円の場合は124万9,200円、年収600万円の場合は157万6,600円、197万3,200円の負担増となりました(詳細は下記表を参照)。
この試算は、1年間保育所等の施設の空きが出ず、保育の全てをベビーシッターでまかなったケースを想定しています。行政サイドは、あくまで「保育所に入れなかった子どもが、一時的に利用するときの利用補助」という趣旨で考えているようですので、現実的な数字ではないのかもしれません。
また、ベビーシッター利用1時間あたりの税額を考えると、年収に応じてそれぞれ473円、597円、747円の負担となり、250円の自己負担と合わせても1,000円未満でベビーシッターが利用できることになります。利用のたびに税額を負担するのであれば、お金を一気に支出することもないので、負担が少ないと感じる方もいるでしょう。
しかし、確定申告期間にこれらのまとまったお金を用意するのは大変です。また、通常は稼いだお金の一部の税金を払うわけですが、手許に入ってきていないお金をまた追加徴収というのは、あまりいい集金方法とは言えないかもしれません。
補助金が20万円を超えたら確定申告に注意を
このような行政のサービスや補助を雑所得として確定申告しなければならないケースは他にもあります。支給された補助金の金額が20万円を超えているときには、基本、雑所得としての確定申告をする必要がありますので、注意しましょう。
自治体によって、独自の補助金・助成金もあるので、利用する前に確認しておくといいですね。
補助金は魅力的ですが、後処理も大切です。分かりにくい仕組みになっているため、行政としての責任もありますが、現状では個人としての把握がある程度必要です。「タダほど高いものはない」と言われますが、実際の便利さと値段を考えて、高いものかどうかを冷静に見抜く判断力も問われそうです。