前回、保護者の方々と教職員の方々が具体的に「何をどうすべきか」をお伝えさせていただきました。後篇はさらに具体的にお話させて頂きます。
教職員は献身的でなければなりません。しかし、教職員の役目は、保護者の声に一つひとつに応えていくことではありません。それは、「献身的」ではなく「ただのいいなり」にすぎません。
ドラッカーが勧める5つのこと
アンケートは「感想」であって「課題」ではありません。教職員の役目は、アンケートで明らかになった感想から、保護者とともに、根本的な課題を導き出すことなのです。
それは、保護者にも同じことがいえます。保護者もまた、生徒のために献身的でなければなりません。しかし、保護者の役目は、一個人の意見を押し通すことではありません。それは、「献身的」ではなく「ただのわがまま」にすぎません。
保護者がアンケートに書いたものは、「意見」であって「決定」ではありません。保護者の役目は、アンケートで明らかになった感想から、教職員とともに、根本的な課題を導き出すことです。そこに至るには、どうすればいいのでしょうか。ドラッカーは、"まず5つのことを話し合って明確にすること"を勧めています。
最も重要な5つの質問とは、われわれのミッションは何か、われわれの顧客は誰か、顧客にとっての価値は何か、われわれにとっての成果は何か、われわれの計画は何か、という5つの質問からなる経営ツールである。
ピーター・ドラッカー
われわれのミッションは何か
人と人が真剣に力を合わせとき、そこに新しい価値が生まれます。人と人が力を合わせるためには、「何のために」ということを明らかにしたミッションがなければなりません。 従いまして、PTAの組織運営にあって、まず考え、話し合い、決めるべきものがミッションなのです。何のための組織か、ここが欠落していたのでは、どんなに素晴らしい意見があっても意味はありません。むしろ、ミッションに根ざされていない意見は、かえって組織を混乱させ、その場を台無しにしてしまいます。
われわれの顧客は誰か
顧客という響きから、企業で言うところのお客様をイメージしてしまいがちですが、ここでいう顧客とは、「お応えすべき対象」のことです。
ミッションがあれば、それは誰に向けられたものなのか、お応えすべき対象がいるはずです。PTAがお応えすべき対象が言うまでもなく、「生徒さん」です。それがいつの間にか、保護者の考えが「生徒のため」ではなく「自分たちのため」となり、あるいは、教職員の考えが「生徒のため」ではなく「保護者のため」になってしまえば、PTAは本来の機能を失ってしまいます。それは「保護者会」というべきでしょう。
顧客にとっての価値は何か
「顧客にとっての価値は何か」とは、「われわれのお応えすべき人が望んでいることちゃんと理解しましょう」ということです。PTAは、生徒さんのために集まっている以上、教職員と保護者は、生徒が困っていることを知らなければなりません。そして、生徒が悩んでいること理解しなければなりません。
われわれにとっての成果は何か
こうしてはじめて、保護者と教職員が力を合わせて上げるべき成果が明らかになります。
われわれの計画は何か
さらには、こうしてはじめて計画を立てることができるようになります。計画がなければ、それは成り行き任せということになります。それでは、生徒さんにお応えしていける組織運営にはなり得ません。そこに多くの人がいる以上、何らかの計画をもたなければならないのです。
冒頭にお伝えしました、具体的に「何をどうすべきか」ということについてですが、保護者と教職員は、「主語をわれわれにして、5つの問いに取り組んでいただければと思います。今日の教育が明日の日本を左右します。今日の皆様の献身が、明日の日本を創ります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
著者プロフィール: 山下淳一郎
トップマネジメント代表取締役
ドラッカー専門のコンサルタント。東京都渋谷区出身。経営者にドラッカーの研修を行なっている。著書に『新版 ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方』(ともに同友館)、『ドラッカー5つの質問』(あさ出版)などがある 。