多くのメディアが報じているように、2020年のWindows Insider Programに変化が生じている。
これまでは、頻繁に更新を行うファーストリング、安定性を優先したスローリング、機能更新プログラムリリース直前になると配信を開始するリリースプレビューリングというのが、Windows Insider Program参加者の選択肢。
Windows 10に関する最新情報が必要なユーザーは主にファーストリングを選択してきた。さらに機能更新プログラムで一段落せず、続けてファーストリングを使うユーザーに対しては、Skip Aheadと呼ばれる限定枠を先着順で選定している。
Microsoftが米国時間2019年12月16日にリリースしたWindows 10 Insider Preview ビルド19536をアナウンスする公式ブログでは、興味深い一文が見られた。
アクティブな開発ブランチ(RS\_PRERELEASE)は、開発チームが最新コードをチェックインする場所。ファーストリングは開発ブランチから直接ビルドを受け取り、新機能が最初に示される。
上記は意訳したものだが、ファーストリングは実験的なビルドに生まれ変わり、新機能を求めるユーザー向け。Windows 10 21H1の検証を求めるユーザーはスローリングが選択肢となるわけだ。
また、「開発サイクルのブランチに提供した新機能とOSの機能強化は、準備が整ったときに提供する」という一文もある。ここからは、ファーストリングに提示した新機能が、必ずしも次のWindows 10に実装するわけではないという意味を読み取れる。
Microsoftは今回の変更理由について、「インサイダーからの多くのフィードバックを受けた。Skip Aheadにオプトインする機会を失ったインサイダーからも混乱といら立ちを受け取っている」と説明しているが、確かなのは「2つのWindows 10」が存在することだ。
Windows Insider Programに望んで参加しているコンシューマーユーザーであれば、さほど大きな問題ではない。むしろこの変更は歓迎してもいいだろう。
だが、Windows Insider Program for Businessに参加する企業ITユーザーにとっては、若干の食い違いが発生しかねない。スローリングという選択肢がある以上、大きな心配はないと思うが、「ファーストリングで新実装された機能が自社アプリに影響を与えるため、開発部門に修正を依頼するタイミングが読めない」可能性がある。
「Flight Hub - Windows Insider Program」を見ると、間もなくWindows 10 バージョン2004として登場する20H1は、米国時間2019年2月14日リリースのビルド18836から数えて、2019年12月10日のビルド19041まででファーストリングが43回。対するスローリングは、2019年11月11日リリースのビルド19013から2019年12月4日のビルド19035まで、数えて4回。
噂レベルだが、20H1の開発は2019年内で終了し、Microsoft社内の関係各所との調整を終えてから、2020年春までにはリリースされるという。つまり、ビルド19035にて「自社アプルに影響を与える」問題が発覚した場合、3~4カ月で社内アプリの改修を終えなければならないのだ。コンシューマーユーザーももちろんだが、Windows Insider Program for Businessに参加中の法人ユーザーにとって今回の変更は無視できず、開発の体制やスケジュールなども含めて吟味が必要となるかもしれない。
阿久津良和(Cactus)