先ごろ、働き方改革に関するシンポジウムが衆議院第二議員会館で開催。

議員事務所の働き方改革や、働き方改革コンサルティングの成果、厚労省改革若手チームによる取り組みなどが発表されたり、環境大臣の小泉進次郎氏がディスカッションに参加したりするなど、国会や省庁など、国政に携わる人々の働き方に関する実情が語られた。

  • 働き方改革の今について語られたパネルディスカッション

議員事務所の働き方改革

衆議院議員の国光あやの氏は「隗より始める働き方改革 -国会と議員事務所での取り組み」と題したスピーチを行った。

国光氏はまず、「働き方改革が叫ばれている中で、国会改革はなかなか進んでいません。国会における質問の通告が直前過ぎる、アナログ的でICTに対応しきれていないなど、みんな忙しくなっているのが現状ではないかと思っています」と霞ヶ関の働き方に対し苦言を呈する。

  • 衆議院議員 国光あやの氏

働き方改革関連法は大企業に対しては2019年4月から適用されており、2020年4月からは中小企業にも適用が始まる。だがそもそも、国会の働き方が残業月100時間以内を実現できていない。人手不足が進行する中で、このような働き方が続くようでは職員を集めることは難しい。

国光氏もまた、自身の議員事務所での人材探しも、本当に苦労したと語る。

そこで国光氏は、育児・介護中の方、シニアの方、テレワーク、ダブル・トリプルワークの方などの積極的な受け入れ体制を構築。残業が行えない従業員のため、「時間あたりの生産性上げる」ことを第一の目標として取り組みを進めた。

さらに、改革を加速化するため、国光氏は専門家の手を借りることを考え、働き方改革のコンサルティングを行っている、ワーク・ライフバランスの小室淑恵氏に事務所の改革を依頼したという。

これは国会議員では初となる取り組みだ。こうして国光氏の事務所は前年比約3割の残業時間を減らすことに成功。同時に要望の対応数などから見た生産性は、前年比約4割増と、大きな成果を出したと話す。

働き方改革コンサルティングの成果

次にワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵氏が、働き方改革コンサルティングの成果について発表を行った。

小室氏は60~90年代の日本の躍進の理由を「人口ボーナス期」の影響を享受したためと説明。90年代後半から日本は、生産年齢人口の急減と高齢人口の急増の「人口オーナス期」に入ったと語る。

そして、人口ボーナス期には「男性ばかり」「長時間労働」「同質性が高い組織」が経済発展できるが、人口オーナス期には「男女ともに活躍」「短時間で効率よく」「多様性に満ちた組織」が経済発展できると解説。

「イノベーションを起こそうと思ったら多様な人材がフラットに活躍できる場を作ること。働き方改革を行わなければイノベーションは起こりません」と述べた。

  • ワーク・ライフバランス 代表取締役社長 小室淑恵氏

小室氏「『働き方改革なんてやったら売り上げが下がってしまう』と思う人もいますが、私どもがコンサルに入った企業では入った年から業績がグンと上がっています。その理由にはさまざまありますが、もっとも大きい理由は、今までミスや事故を誘発していた労働時間を減らすことで、それらの対応に追われる時間を削減できたことです」。

この他にも定時退社促進や育児休業、生産性評価制度、突発業務の削減、業務における属人性の排除によって業績が向上した例を挙げ、働き方改革の重要性を示した。

  • 「社会と企業の課題を解決するセンターピン」と題して内容をまとめる小室氏

厚生労働省も必要とする働き方改革

続けて、厚生労働省改革若手チームの久米隼人氏は、厚生労働省における働き方改革の取り組みについて発表した。久米氏は2019年8月に厚労省の業務や組織改善を求める緊急提言を行っており、世間から驚きを持って迎えられている。

医療や年金、雇用や労働など、日本の大きな課題である少子高齢化社会への対応がのしかかる厚労省。同省では業務量の増加に対して定員の増加が追いついておらず、他省庁と比べても職員一人当たりの業務量が著しく増大しているという。

  • 厚生労働省 大臣官房人事課 課長補佐 久米隼人氏

小泉進次郎氏も参加したパネルディスカッション

引き続き行われたパネルディスカッションには、途中参加した、環境大臣、内閣府特命担当大臣の小泉進次郎氏が「今日ここに来たのは、働き方改革に本気で取り組んでいる皆さんを応援したいという気持ちと、私が厚生労働部会長のときにつなぎ合わせた思いを、いま環境大臣として環境省でやっているということをお知らせしたいと思ったからです」と話した。

  • 環境大臣 内閣府特命担当大臣 小泉進次郎氏

小泉氏は「クールビズもウォームビズもない、ネクタイをするかしないかは自分で決める時代。暑がりも寒がりもいるんだから一人ひとりが考えればいい、国が言ってネクタイを付けるかどうか決めるなんて成熟した国家じゃない、そういう思いが私にはあります」と自身の考えを示すとともに、ペーパーレス化やPCの取り扱い、産休・育休を取得する夫婦などへの取り組みについて説明。

さらに「日本はプラスチックの削減に力を入れており、私も環境大臣としてマイボトルを持ち歩いているのですが、なんと国会ではマイボトルを委員会に持っていくことすら許可をとらなくてはなりません。しかも驚いたことに健康上の理由がなくてはならず、中身は白湯でなければならないと。それを知らずにコーヒーを入れていったら怒られたということがありました」と自身のエピソードを語って会場を沸かせた。

そして、「一人ひとりが自分の常識と判断で決めていくというのが成熟した国家ではないですか。ひいてはそれが、働きやすい、生きやすい、そういった世の中を作るということなんじゃないでしょうか」と自身の話を締めくくった。


働き方改革が叫ばれるなか、企業は粛々と対応を進めている。しかし、当の国会や各省庁では労働時間削減や生産性向上が進んでいるとは言い難い。

国光氏や小室氏が指摘したとおり、国会や各省庁という国の中枢部分が過剰な労働を前提として働いたり、指示を出したりすることは、企業や自治体が行う働き方改革の足を引っ張る一因ともなり得る。霞が関や永田町の働き方はどのように変わっていくのか、その動向が注目される。