トヨタ自動車が2019年2月に始めたサブスクリプションサービス「KINTO」(キント)。頭金なし、保険や登録諸費用、メンテナンス費用などがコミコミで、月額料金を払えばクルマのある生活が気軽に始められるという触れ込みだが、ユーザーの反応はどうなのだろうか。KINTOの小寺信也社長から説明を受けてきた。
7割近くがweb経由! KINTOの申し込み状況
KINTOには「KINTO ONE」と「KINTO SELECT」(2020年2月に「KINTO FLEX」に改称)の2種類がある。「KINTO ONE」は1台のクルマに3年間乗り続けるプランで、月額料金は「プリウス」であれば、グレードにもよるが月額5万710円(税込み)から乗れる。先日発売となった人気のSUV「ライズ」であれば、月額料金は同3万9,820円からだ。「KINTO SELECT」も3年契約だが、半年ごとに乗り換えるので計6台に乗れる。クルマは6種類のレクサス車から選べる。
クルマを買うと、車両本体以外にもいろいろとお金がかかる。その点、KINTOは頭金が不要である上、車両代、任意保険、自動車税、登録諸費用、車両のメンテナンス費用が全てコミコミになっている。若い人がクルマを買う場合、保険の等級が低いので任意保険の料金が高くなりがちだが、KINTOは複数のクルマでまとめて入る「フリート保険」を活用することで、保険料を低く抑えているそうだ。
そんなKINTOだが、これまでの実績はどうなのか。小寺社長によると、「KINTO ONE」の申し込み総数は951件で、そのうちwebでの申し込みは646件、販売店での申し込みは305件だった。契約者の年齢構成としては、18歳~29歳の若年層が全体の2割を占めているという。web経由での申し込みは約7割が新規客だった一方、販売店での申し込みは約7割が既存の顧客だった。サービス認知率は2019年11月末時点で18.2%(全国)だ。車種構成は人気順に「プリウス」が26%、「アクア」が22%、「ライズ」が12%。「クラウン」などの高級車は、相対的に申し込みが少ないそうだ。
申し込み実績で注目すべきはweb経由の多さだ。販売店を通さずにKINTOとユーザーがつながってしまうので、販売店からは不評なのかと思いきや、日ごろは販売店との接点がないユーザーをKINTOで獲得して送客できるので、販売店からは逆に歓迎されているというのが小寺社長の説明だ。若年層が2割という数値について小寺社長は、「トヨタ全体の構成と比べると、若い人が多い。今までトヨタがリーチできていなかったお客様に届いているのは事実」と分析する。
車種を拡充、中古車版も準備中
申し込み件数はまだ1,000件に届いていないKINTOだが、認知度向上のためにテレビCMを打ったりしているため、事業としては赤字だと明かした小寺社長。ただ、契約件数は右肩上がりで増えているので、今後も成長を続けられるよう、次々に手を打っていくとのことだった。黒字化には数年かかる見通しだという。
KINTOの今後だが、まず、「KINTO ONE」では15車種だった車種を31車種に拡大する。2020年1月からは「パッソ」「ルーミー」「タンク」など、3万円台から契約できるクルマも増えるとのこと。時期と価格は未定だが、新型「ヤリス」も追加の予定であり、このほかに「カローラ」や「ランドクルーザー」といったクルマもラインアップに加わる。さらには、レクサス車の取り扱いも始めるそうだ。
2020年1月からは「KINTO ONE」の法人受付と中古車版も開始する。将来的には、スポーツカーも取り扱いたいというのが小寺社長の考えだ。
「KINTO SELECT」は「KINTO FLEX」に改称し、2020年2月から全国展開を開始する。対象車種は従来通り「ES」「IS」「RC」「RX」「NX」「UX」の6台だが、3年で3台を乗り換えるプランを新たに用意する。
「KINTO」という名称は、グローバルで今後、認知度を高めそうだ。KINTOはすでに、欧州や東南アジアの一部でサブスクリプションサービスを始めているが、今後はトヨタが海外で展開しているモビリティサービスのブランド名称を「KINTO」で統一する方針。例えば、カーシェアリングサービスは「KINTO SHARE」、ライドシェアリングサービスは「KINTO RIDE」といった具合だ。ちなみに、KINTOは西遊記の「筋斗雲」をイメージした名称。「必要な時にすぐに現れ、思いのままに移動できる」ところから着想を得たそうだ。
最後に、実際のところ、KINTOを使えばクルマを買うよりも支出を抑えられるのかどうかについて、トヨタが示したデータを見ておきたい。
ライズを例にとると、月額6,000円くらいは安くなるというのが、トヨタの試算だ。クルマを買う時には、値引きなどのサービスが受けられると聞くので、実際のところはどちらが得なのか判断しづらいが、KINTOであれば料金プランが明瞭なので、「うまく商談を進めないと損をするのでは」という疑心暗鬼にかられない分、気は楽なのかもしれない。