グローバル・リンク・マネジメントが運営する「グローバル都市不動産研究所」は12月13日、東京2020大会後の東京都の不動産価格に関する調査結果を発表した。同調査は、各国の五輪開催後の景気動向およびロンドン五輪前後の不動産価格の動向から予測したもの。
近年の東京の不動産価格をみると、東京2020オリンピック大会の開催が決定した2013年9月から東京の公示地価の上昇が始まっているものの、この要因について同所は、「アベノミクスによる金融緩和政策と、それに引っ張られた形の人々の楽観的未来志向の影響が色濃く反映されているといえます。国家戦略特区の導入による都市開発の活発化が現実のものとなりましたが、もちろん、異次元の金融緩和、超低金利政策によって、金融機関が不動産向け融資を大幅に増やしたことで、不動産投資のマーケットが活性化し、それが大きく影響したことは間違いありません」と分析している。
オリンピック後の東京の不動産価格を予想する上で、同調査では、こうした近年の東京の不動産価格の推移に加え、各国の五輪開催後の景気動向およびロンドン五輪前後の不動産価格の動向などを参考に、プラス要因とマイナス要因の両面から考察している。
プラス要因としてまず挙げられるのは、東京都区部の人口が増加傾向にあるという点。東京都区部全体では2035年頃まで、さらに都心区では2040~45年頃まで人口増加が続くと予測されるという。
訪日外客数についても、2011年に東日本大震災の影響で若干落ち込んだものの、その後は増え続け、政府は、インバウンド需要はオリンピック以降も堅調に増加すると予測。
また、東京の大規模都市開発プロジェクトは、日本橋・八重洲、虎ノ門・六本木、渋谷、品川などを中心に今後とも続くとされており、それに伴いオフィスや住宅の供給がさらに加速することが見込まれるとのこと。さらに、2027年にはリニア中央新幹線(品川~名古屋間)の開通が予定されており、東京と名古屋の経済圏が近接し、東京の経済力がさらに高まるという期待もあるという。
一方マイナス要因としては、米中摩擦やヨーロッパ諸国の成長鈍化によって今後の世界経済が減速に向かい、東京への投資の鈍化の可能性が懸念されているほか、国内的には消費性向の減退による景気の冷え込み、ローンの貸付利率の上昇、訪日外客数の鈍化などが心配され、これらが複合的に不動産の購買意欲低下のリスクにつながる可能性もあるという。
さらに、ロンドンオリンピックにおける不動産価格の動向からみて、東京23区内であっても、区によっては大規模都市開発プロジェクトの恩恵にあずかれなかったりと、エリアの差が顕著に表れることも推測されるとしている。
明治大学名誉教授でもある同研究所所長の市川宏雄氏は、「オリンピックを起爆剤として都市の価値を高めたロンドンでは、ブランド力のあるエリアと大規模開発が行われることでインフラ整備がなされるエリアが地価上昇の可能性が高いという不動産の鉄則が実証された」としながらも、他方「既に東京の不動産は1990年代のバブル期の価格水準に近づきつつあり、米中摩擦やヨーロッパ諸国の成長鈍化で世界経済が急速に減速するというリスクも考えると、オリンピック開催後の動向について考えるには、あらためて不動産価格上昇の鉄則に従うことの重要性がこれからますます高まることになる」とコメントしている。