みきもと凜による人気コミックを実写映画化した『午前0時、キスしに来てよ』が現在公開中だ。6日に公開され、ティーンを中心に人気を博し実写邦画No.1スタートを切った同作は、超・まじめ人間で優等生だが実は夢見がちな花澤日奈々(橋本環奈)が、ある日映画の撮影で高校にやってきた国民的スーパースター・綾瀬楓(片寄涼太)に出会い、2人は惹かれていくが、住む世界が全く違う2人には、思いもよらぬ障害が次から次に押し寄せる。

今作をプロデュースしたのが、フジテレビ 映画制作部の高木由佳プロデューサー(高ははしごだか)。企画書を出した時には29歳で、若い女性プロデューサーだからこそ「本当に女の子の夢をつめこんだ」と語る。今回は高木Pに、片寄・橋本への熱い気持ちや、作品に込めた思いについて話を聞いた。

  • 高木由佳プロデューサー

    高木由佳プロデューサー

■片寄を見た瞬間に「楓だ」

――まずは、ぜひこの作品を映画化したいと思った理由を教えてください。

もともと本当にラブストーリーが好きで、ずっと恋愛映画を作りたいと思っていました。ただ、経験のあるプロデューサーの先輩がたくさんいる中で、まだ若い私の企画は通りづらくて。そんなときに、原作の『午前0時、キスしに来てよ』に出会いました。まだ原作も6巻しか出ていない時でしたが、先生にラストまで書いたプロットを気に入っていただけたのか、映像化にいたることができました。

――プロットまでご自身で書かれたんですね!

もう、「こんな恋愛した〜い!」って思いながら(笑)。

――スーパースター・綾瀬楓を誰が演じるのかというのはポイントだったと思いますが、片寄さんにお願いした理由を教えてください。

白濱亜嵐さんの出演していた映画『ひるなかの流星』に関わっていた時に、GENERATIONS from EXILE TRIBEの皆さんが観にきてくれて。そのときに、片寄さんはハイブランドのトレンチコートを着て、もう、地面から3mmくらい浮いて見えたんです(笑)。その姿に「楓だ」と思い、企画書の段階から相談していました。

『ひるなかの流星』の時にGENERATIONSと関わり、メンバーだけでなく、マネジメントの方々とも信頼感が醸成されて。今の若い子たちはあまりテレビを見ないから、SNSが重要になってきますが、そういった点でもすごくご協力をいただきました。『0キス』は私の1本目のプロデュース作になるので、普通だったら片寄さんも出てくれないと思うんです。そこに賭けてくれた事務所、マネージャー陣にもすごく感謝しています。

――公開のタイミングでGENERATIONSの紅白歌合戦初出場も決定しましたね。

本当に、一番良い時期を預けていただいて、私たちとしても最大に宣伝していきたいです。私は彼のことをすでにスターだと思っていますが、さらにスーパースターにしてあげられるかどうかは、私たち次第だと思ってるんです。やっぱり、どの方も代表作があってこそスーパースターにまで上り詰められるのだと思いますし、我々がきちんと作品でムーブメントをつくるきっかけにならないと。

――すごく熱い思いが。

出ちゃいましたね(笑)。でも、みんなそういう気持ちでやってるでしょう? きっとその愛情がキャストにも伝わっているから、キャストのインタビューをきいていても、熱を感じます。普通は作品が終わるとそこで終わりという雰囲気もあるのですが、片寄さんと橋本さんは作品愛も強くて、完成披露試写会で橋本さんが着ていたシンデレラ風のドレスも、橋本さんがオリジナルで「プロ(プロデューサー)のためにデザインしたよ」と言ってくれたり、いつもは下ろしている髪型も「この作品ではアップにした方がいいよね」とアイディアを出してくれたりもする。ポスタービジュアルの時計も片寄さんのアイディアだし、宣伝にも積極的で、キャストが前のめりになってくださるのはとてもいいなと思います。

――橋本さんはどういう理由でキャスティングされたんですか?

日奈々は優等生だけど、むっつりというギャップがあって、橋本さんも美少女だけどコメディエンヌというギャップがあるから、演じられるんじゃないかと思いました。日奈々は芸能人と幼なじみの両方に好かれるから、一歩間違えるとあざとく見えて、観客から嫌われてしまうんじゃないかと思うんです。橋本さんは女子高生にも好かれているし、何をやってもキャラクターにはまるので、可能性を感じて、ぜひお願いしたいと思いました。

――橋本さんは、男性キャストのファンの方などからもすごく好感度が高いですよね。

本当に色んな意味で強い子だから、その魅力がきちんとみんなに伝わってるんじゃないかな、と思います。

――やはり女子高生に喜んでもらいたいという思いはあったんですか?

女子高生、女子中学生、女子小学生……とにかく女の子たちが映画を観ている2時間だけでも夢を見れるようなものを作りたかったんです。でも、大人が見ても恥ずかしくない、きちんと共感できる上質なラブストーリーを作りたいとも思っていて、心情を描くことについてはこだわりました。台詞だけでなく、表情や演技のニュアンスで、「ここで恋に落ちたのかな」とか気づいてもらえたら嬉しいです。

構成としても、前半はキラキラのおとぎ話だけど、後半は「映画が変わったのかな」というくらいに、現実に戻す。恋ってワクワクドキドキするだけじゃない、というところもきちんと見てもらえたらいいなと思っています。

――確かに後半はリアルすぎて……楓の記者会見のシーンでは、取材の場にいる自分が想像できました。

あの時の片寄さんの表情がまた、すばらしいんですよ!

■男性の願望によるラブストーリーが多かった

――今や「推し」という言葉が一般的にもなっていて、いろいろな芸能人のファンの方が観ても楽しめる作品なんじゃないかと思いましたが、そこは意識されていたんですか?

そこは全然意識していなかったです。今までに見たラブストーリーはいつも男性が作っているから、男性の願望が詰まっている。だから私がプロデューサーになれた以上、女子の夢と女子の妄想をいっぱいにつめたかった。絶対にみんな、偶然出会った片寄さんに告白されたりしたいじゃないですか(笑)。

でも本当に、男性にも楽しんでいただけると思うし、1回目は日奈々の目線で観て、2回目は楓の目線で観てもらいたいです。特に大人が楓の目線で観ると、「こういうしがらみがある中で恋愛していくよね」と感情移入できて、さらに面白いと思います。特に楓のマネージャーのしげちゃんとのシーンや充希とのシーンはグッときますね。

――女子高生的には「スーパースターとの恋」はすごく憧れだけど、映画で描くのが難しいところもあるんじゃないのかな、と思っていて。でも『0キス』は「こう来たか!」と思わされました。

そうなんですよね……そういう点では、最初のプロットから展開を変更したところもありました。でも、結果的にはすごくロマンチックで、タイトルにつながるようなシーンもできたんじゃないかなと思います。

――楓に役者としての熱い気持ちがありましたし、ディテールがリアルでしたよね。

もちろん、絵的な見え方を優先することもありますが、こういう業界だからこそ、リアルに見えるようにこだわっています。ドライブシーンも、助手席に日奈々を乗せた方がきれいに撮れるけど、後部座席に乗せて、帽子をかぶせて。それがまた胸キュンポイントになってると思います。楓が日奈々の家にくるシーンも、髪の毛がセットでバキバキなんですけど、それは現場終わりに走ってきたという設定だから。「芸能人との恋」のディテールも楽しんでもらえると嬉しいです。

――最後に、ぜひ高木プロデューサーが好きなシーンを教えてください。

楓の「俺は君のことだと、結構余裕ないんです」というシーンはいいですよね。まわりにいくらでもきれいな女性がいる中で、スーパースターが私のために言ってくれる! というのが素敵だし、表情もすごく良かった。橋本環奈さん史上、一番スイートな表情が見えるのは、あーちゃん(眞栄田郷敦)の「俺と結婚すればいいじゃん」と言われた時、彼を見上げる表情。!これは是非スクリーンで観て頂きたいです。

好きなシーンは本当にたくさんあるけど、キュンだけで終わらないでほしいとも思います。学生の時に憧れてた芸能人とか、手の届かなかった先輩とか、憧れの人とか‥そういう実らなかった恋のことを思い出したり、今、そういう恋をしている人がこの作品を見て、一歩踏み出せたり、自分を投影して夢を見れたりしたらいいなと思います。

■高木由佳
フジテレビジョン 編成制作局 映画事業センター 映画制作部。これまでにアシスタント・プロデューサーとして『ひるなかの流星』、アソシエイト・プロデューサーとして『翔んで埼玉』、『コンフィデンスマンJP』などのヒット作に携わる。