日本財団ボランティアサポートセンターは、東京2020大会スポンサー企業からの大会ボランティア応募者を対象としたアンケート調査を実施。12月11日にメディア向け結果報告会を開催した。

  • 東京2020大会ボランティアに応募した動機は?

今回のアンケート調査では、大会スポンサー企業のうち22社、約5,300名の東京2020 オリンピック・パラリンピック大会ボランティア応募社員を対象に、属性や応募目的、会社・仕事・ボランティアに対する意識などを調査。

大会後の調査と合わせて、近年のキャリア研究で注目を集めている「越境学習(所属組織の外での活動による内省や行動変容)」「多様性(ダイバーシティ)の受容」「会社へのエンゲージメント」が、大会ボランティア前後でどのように変化するのかを検証する。

大会ボランティア応募者は会社での評価も高い傾向

調査の設計・分析を行ったリクルートワークス研究所の主任研究員・中村天江氏は、最初に社会貢献活動への意欲や関心は年々高まっている一方、ボランティアの参加者が増えない現状や、特に会社員のボランティア経験率が低い実態を紹介。

  • 大会前調査のポイント

今回の調査でスポンサー企業社員を対象にした背景を、「『参加するための休暇が取りにくい』『参加する時間がない』といった理由で、ボランティアをしたくてもできない人が多く、今大会の社員ボランティアの変化を見ていくことで、ボランティア文化の醸成というレガシー創出をできる可能性がある」と説明した。

調査は2019年9月にWebアンケートで実施され、東京2020 大会スポンサー企業22社の社員ボランティアのうち2,913名が回答。回答者の年齢は40代・50代が半数以上、勤続年数では15年以上が半数以上を占め、一度もボランティア経験がない人は4割に達した。

  • 「自分の時間を有効活用できている」人は6割弱

「働き方では『仕事に熱心である』という設問で、『よく感じる』『とてもよく感じる』『いつも感じる』という方、また、『今の仕事で、平均以上の評価・考課結果を得ている』という方がそれぞれ半数を占めています。さらに所定外労働時間では20時間を超える方も半数で、『自分の時間を有効活用できていると思う』というスコアでは、『当てはまる』『やや当てはまる』が6割弱となっています」

厚生労働省の毎月勤労統計では、一般労働者の所定外労働時間が平均14時間であることから、比較的忙しいながらも積極的に時間を捻出したいと考える回答者が多い傾向が、大会ボランティアのひとつの特徴といえるという。

大会ボランティアへの参加動機には『オリンピックに興味があるから』『一生に一度の機会に参加したいと思ったから』に次いで、『視野を広げたかったから』が67.5%と大きく、人脈、語学力、スキルなどを活かし、新たな経験がしたいといった内容も大きな割合を占めている。

  • ボランティアに参加する人達が期待していること

「大会を挿話的に満喫したいという“エピソーディックボランティア”の傾向が見て取れますが、ある種の成長志向、個人のキャリアに動機があるケースを年齢別に見ると、30代までの比較的若い方は『将来のキャリアにつながる経験がしたかったから』というスコアが、30代後半から40代と年齢が上がるにつれ『視野を広げたかったから』というスコアが比較的高く出ています」(中村氏)

『仕事ではやりがいが満たされないから』は全体では5.7%と非常に少ないものの、30代、40代前半の選択率が高めで、仕事で十分に力を発揮しきれていないと感じている傾向が示唆される結果になったとのこと。

また、組織コミットメントとワークエンゲージメントについては、役職や年齢が高くなるほど平均値が高くなる傾向にあるが、「組織コミットメントでは『会社を辞めたいと思うことがある』という設問で、『当てはまる』は1割に留まり、『やや当てはまる』を入れても3割。5点満点で3.47から4.01と全体的に高い」とコメントした。

大会後(2020年秋予定)に実施するアンケートでは、「参加した社員は大会ボランティアとどう向き合い、何を感じたのか?」「東京2020 オリンピック・パラリンピックを通じて、社員の心理や行動にどのような変化が生まれたのか?」など、活動への満足度、参加後の会社や仕事に対する意識や行動の変化などを調査するという。