私の会社も来年1月で26年目を迎えます。これも社員やお客様をはじめ、いろいろな方々の支えがあって本日を迎えることができています。本当に有り難いことだと思っています。

弱冠21歳で社長になったわけですから、これまでに数えることができないほどの失敗をしてきました。ここでは、そんな中から、中小企業でよく起こりがちな「しくじり」に焦点を当て、さらにそこから生まれた副産物などもご紹介します。

  • 失敗から学べることを知っていますか?

社員とのコミュニケーション不足が生んだ退職騒動

現在の経営計画書による経営をはじめる前までは、社員とのコミュニケーションは全くと言っていいほど関心がありませんでした。現在行っている「飲みニケーション」はもちろん、定期的な個別面談なども一切行っていませんでした。社内でのコミュニケーションと業績・会社経営には相関関係はないと本気に考えていたからです。

ですから、社員と食事をする機会も、忘年会の90分だけ。私が支払いをして帰る時から、本当の忘年会が始まるほど、社員とのコミュニケーションは皆無の状態でした。

そんなある日、「事業を売ってほしい」という話があり、契約条件も良かったので、社員たちに一切の相談もなしに一部事業の売却を決定しました。その売却資金で次の事業に挑戦しようと考えていたからです。

しかし、次の営業会議でそのことを社員に伝えると、予想外に社員たちの顔は驚きの表情をしていました。言葉は発しないまでも、落胆した表情は今でも忘れません。

そして、営業会議の翌週の朝、事件が起こります。出勤すると、幹部社員4名から退職届を渡されました。当時の社員数は10名。ほぼ半分にあたり、しかも、役職上位者の退職は会社の死活問題にもなるほどの事件でした。その後、退職撤回を説得するものの、日頃からコミュニケーションがなかった関係では、いくら社長の私でも止めることはできませんでした。

このようなしくじりから、今では毎月1回の定期的な飲みニケーション。そして、社員全員と個別面談を行い、社内コミュニケーションをしっかりと構築しています。おかげさまで、社内業務が円滑になり、人事生産性が大幅に向上したことは副産物と言えます。

小さな会社だからこそ、社内コミュニケーションを重視して、血の通う経営をすることが重要になります。

社長一人で頑張っている会社が陥る落とし穴

小さな会社では、社長が一人で孤軍奮闘していることが多いです。誰よりも率先して社内業務を行うことはもちろん、社外セミナーや勉強会にも積極的に参加。「会社を良くするために」という想いがそんな社長の背中を後押ししています。創業当時の私もそうだったので、その気持ちは痛いほどよくわかります。

でも、これをしている限り経営はうまくいきません。せっかく社長が勉強してきたとしても、それを実行レベルに落とすことができないからです。良い方法を見聞きしてきたのは社長一人であって、どんなに説明をされても社員は理解することができません。社長が数時間かけて勉強してきたことを、その3分の1程度の時間で説明しても理解できるはずがありません。

ですから、実行することができない訳です。そして、社長は実行できない社員たちに不甲斐なさを感じながら、自分一人で実行するという孤軍奮闘のスパイラルがまた続きます。でも、このような状態は長くは続きません。

なぜなら、時間が足りなくなっていくからです。そこまで追い込まれてはじめて社長は、「このままではダメだ!」ということに気付きます。

このような社長に実践してもらっていることは、良い内容の勉強会があれば、後日社員にも参加させるということ。社長だけが勉強するから社員との溝がこれまで以上に深まっていきます。良いものがあれば、同じ体験を社員にもしてもらう。

このようなことを繰り返すことで、能力以上に大切な価値観がそろいはじめます。同じ勉強をした社員も「社長はこれをやりたがっているのか」と初めて理解し、惜しみない協力をしてくれます。

急いで結果を求めるあまりに起こりがちな社長の孤軍奮闘。ペースを落とすのではなく、社員と一緒に「全速力で遠回り」をすることで、社内の決定と実行のサイクルがかみ合い、業績という大きな成果に結びついています。