JR東海は12日、特急「(ワイドビュー)ひだ」「(ワイドビュー)南紀」で活躍する特急形気動車キハ85系の置換えに備えて新製され、このほど完成したハイブリッド方式の次期特急車両、HC85系の試験走行車1編成を報道関係者らに公開した。
報道公開ではHC85系の試験走行車とキハ85系の2編成が並び、普通車である4号車の車内(客室・運転台・洗面台など)を公開。新型ハイブリッドシステムや車両機器が紹介され、HC85系による構内車両走行も行われた。
HC85系の試験走行車は日本車両で製造された4両編成。「HC」はエンジンで発電した電力と蓄電池の電力を組み合わせ、モーターを回して走行するハイブリッド方式の車両(Hybrid Car)であることを表す。従来方式の85系気動車から技術革新した「ハイブリッド方式の85系」との意味を込め、「HC85系」と命名された。
デザインは飛騨・南紀地区をイメージした「和」をコンセプトとしている。外観は「漆器の持つまろやかさや艶のある質感」をテーマに、先頭車の車体前面と上部、照明をなめらかな曲線形状として「和」を表現。車体前面から側面につながるオレンジ色の帯も躍動感のある曲線とした。先頭車の車体側面にシンボルマークを掲出し、飛騨・南紀沿線の紅葉と海を赤・青で表現するとともに、対比する2色のグラデーションや外観の帯に合わせた流線形状により、ハイブリッド方式のスピード感を表している。
インテリアデザインも「和」をコンセプトに、木目調の内装材を採用して木のぬくもりを演出した。普通車は「明るいワクワク感」をテーマに、沿線の紅葉と祭り・花火のイメージをグラデーションで表現し、内壁は明るい茶色の木目調としている。グリーン車は「落ち着いた上質感」をテーマに、内壁は落ち着いた濃い茶色の木目調とし、沿線の新緑と美しい川、夕暮れの紫の空をグラデーションで表現しているという。全座席にコンセントを設け、客室・デッキに防犯カメラを設置するほか、客室内荷物スペース、防音床、温水洗浄機能付洋式トイレなど、車両設備も快適性・利便性を追求した。
安全性を高める新たな技術も導入された。一体成型による新型台車枠の採用で溶接箇所を少なくし、313系との比較で重要溶接部を約6割削減するという。振動検知装置で台車等の振動状態を常時監視し、異常発生時も迅速に検知することが可能に。車両・地上間のデータ通信も行われ、車両状態のデータを車両基地等に送信し、メンテナンスに活用することで異常の発生を抑制する。ダイヤが乱れた際、客室内の案内表示器に運行情報を表示することもでき、乗客への案内の充実が図られる。
なお、配布された諸元表によれば、車種形式と車種記号(略号)は1号車から「クモロ85-0」(Msc)、「モハ84-100」(M2)、「モハ84-0」(M1)、「クモハ85-0」(Mc1)とのこと。定員は1号車36名、2号車68名、3号車50名、4号車56名とされ、4両合計で210名となる。HC85系は安全性・快適性の向上や環境負荷の低減などを図りつつ、ハイブリッド方式の鉄道車両として国内初という最高速度120km/hの営業運転をめざす。
報道公開されたHC85系の試験走行車は2019年内に走行試験を開始する予定。その後は1年間をめどにハイブリッド技術の確立に向けた基本性能試験や長期耐久試験などを行う。量産車については2022年度の投入を目標に検討が進められている。