米クアルコムが開催したSnapdragonの発表会「Snapdragon Tech Summit」最終日には、常時接続モバイルPC向けの新プラットフォーム「Snapdragon 8c」「Snapdragon 7c」が披露されました。
ボリューム価格帯のPCにSnapdragonを
クアルコムは2017年に開催したSnapdragon Tech Summitで「Always-On, Always-Connected」というコンセプトを掲げて、省電力駆動による常時スタンバイ状態からの高速起動、高速ネットワーク通信を実現するモバイルPCのカテゴリを立ち上げています。
その後、2018年のSnapdragon Tech Summitでは、7nmプロセスにより製造される第2世代の「Snapdragon 8cx Compute Platform」を発表。これを受けて2019年は、Snapdragon 8cxのチップセットとクアルコムのモデムIC「X55」を搭載する、世界初の5G対応PCがレノボから登場しています。
今回(2019年)のTech Summitでは、Snapdragonを搭載するPCのエコシステムを広げるため、「Snapdragon for Everyone」というキーワードを掲げました。Snapdragon 8cxよりも下位クラスにあたる、2つのモバイルPC向けプラットフォームをラインナップに追加しています。
常時接続・卓越したスタミナ性能
その新しいSoC、Snapdragon 8cはメインストリーム、Snapdragon 7cはエントリー価格帯の常時接続モバイルPCがターゲットです。高いパフォーマンスと省電力駆動を重視して設計されたSoCであると、クアルコムテクノロジーズのProduct Management Senior DirectorであるMiguel Nunes氏が説明しました。今回のイベントでは、チップセットの出荷開始時期、パートナー、搭載製品の登場時期に関する言及はありませんでした。
両方のプラットフォームはともに、高い拡張性、スタンバイ状態からの高速起動、高速セルラー通信対応、そして数日単位という長いバッテリー駆動を特徴としています。
エントリークラスのSnapdragon 7cは、競合他社のプラットフォームに比べて25%高いシステム性能と、DSPの「Hexagon 692」を中核とした第4世代AIエンジンによる5 TOPS(秒間5兆回の演算処理)以上のパフォーマンスを備えました。Nunes氏は「エントリークラスのPC性能を底上げするプラットフォーム」と話します。
CPUはオクタコア64bit構成の「Kyro 468」、GPUは「Adreno 618」。生体認証や音声認識、ハンドジェスチャーといった機能を幅広く組み込めるほか、X15 LTEモデムをシングルチップに統合しています。
5Gにも対応できる「Snapdragon 8c」、ファンレス設計にも柔軟に対応
メインストリームのPC向けを想定したSnapdragon 8cは、上位のSnapdragon 8cxと同じ7nmプロセスで製造されるチップセットです。オクタコア64bit構成のCPU「Kyro 490」とGPUの「Adreno 675」、DSPの「Hexagon 690」、画像処理プロセッサの「Spectra 390」を組み合わせると、従来のSnapdragon 850 Mobile Compute Platformとの比較で最大30%、性能が向上するといいます。
第4世代のAIエンジンの性能は6 TOPS(秒間6兆回の演算処理)。PCの薄型ファンレス設計を可能にする低消費電力駆動としたことで、PC製品の超薄型・軽量化にも貢献すると、Nunes氏が強調しました。
システムチップには、LTE(下り最大2Gbps)に対応するモデムIC「X24」が統合されています。これに、PCメーカーがクアルコムの5G対応モデムIC「X55 Modem-RF System」を追加することによって、5G通信機能を加えることもできます。
クアルコムのNunes氏は、パフォーマンス・バッテリーライフ・接続性のそれぞれにおいて、「extreme=究極」の快適さを誇るSnapdragon 8cxと合わせて、スマホのように手軽な使い心地を実現するモバイルPCを、普及価格帯で提供できるチップセットがそろったと胸を張ります。パートナーに対して、PC製品の差別化にも結びつくクアルコムのソリューションを活用してほしいと呼びかけました。