調査会社BCNの発表によると、2019年11月18日~24日のミラーレスカメラの販売実績で、ニコンが11月22日に発売したAPS-Cミラーレス「Z 50」がいきなり1位に輝きました。カメラの完成度の高さもありますが、ズームレンズ2本が付属する「ダブルズームキット」の存在がヒットにつながったと感じます。
スリムでコンパクトな本体は高級感も十分
フルサイズミラーレス「α」でヒットを連発しているソニーを追撃すべく、新マウントを引っさげて参入したキヤノンとニコン。しかし、満を持して投入したはずのフルサイズミラーレスの売れ行きは、残念ながら両社の想定を下回っているとみられます。不振の理由はさまざまな要因が考えられますが、「新マウントで画質向上が図れることを訴求するあまり、高価で重たい交換レンズばかりをラインアップしたことが敬遠された」ことが1つの要因といえるでしょう。
そのようななか、ニコンが11月末に販売を開始したミラーレスカメラの新機種「Z 50」が注目を集めています。Zマウントを採用するフルサイズミラーレス「Z 7」「Z 6」の弟分となるAPS-Cセンサー搭載モデルで、意外にもニコンとしては初めてのAPS-Cセンサー搭載ミラーレスとなります。
標準ズームレンズを装着したZ 50を手にして、まず素晴らしいと感じたのが「薄い!」ということ。ミラーレス構造でボディ自体がスリムなのもありますが、標準ズームレンズは使わない時に全長を縮められる沈胴式であることが薄さに貢献しています。バッグにも簡単に収納でき、毎日持ち歩くのも苦ではありません。
そのように本体やレンズはコンパクトながら、安っぽさがないのも好印象です。ボディやレンズはフルサイズの上位機種と同じ流れをくむデザインで、ボディは金属製で高級感も十分。カメラは趣味で使うものなので、持つ喜びが味わえるのは評価できます。
ダイヤルの数や配置など、Z 6やZ 7で定評のある部分はZ 50にも継承しつつ、記録メディアはXQDメモリーカードから一般的なSDメモリーカードに置き換えられるなど、扱いやすさを重視した設計とした点も注目できます。
ダブルズームキットを用意したことが大きい
Z 50で何より注目したいのが、標準ズームレンズ「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」と望遠ズームレンズ「NIKON NIKKOR Z DX 50-250mm f/4.5-6.3 VR」の2本が付属する「ダブルズームキット」を用意していること。フルサイズのZ 7やZ 6にはダブルズームキットはありませんでした。
デジタル一眼レフカメラやミラーレスカメラの入門機は、古くからダブルズームキットが売れ筋となっています。人気の理由は、カメラ本体と交換レンズを別々に購入するよりも圧倒的に安く済むから。実際、「レンズ交換式カメラの入門機を買うならダブルズームキット以外はソン」という認識が広く浸透しており、店頭でもダブルズームキット以外はほとんど売れていません。
「あのダブルズームキットがある!」という点で、Z 50は古い一眼レフやミラーレスからの買い替えを考えている人のハートをつかむ可能性が出てくるのです。ダブルズームキットならば、ズームレンズ2本を単品で追加購入するよりも4万円近くも安くなる計算で、お買い得感でも期待に応えています。
キットレンズ、すごいと感じたのは価格だけではありません。描写性能が高く、被写体をビシッとシャープに描き出してくれます。レンズ内蔵の手ぶれ補正機構の効果も高く、比較的遅いシャッター速度でもぶれずに撮影できました。「価格が安いから描写もそれなり」といった印象はまったくありません。
望遠ズームレンズは、35mm判換算で75~375mm相当をカバーしており、Zマウントでもっとも望遠域を撮影できるのがポイント。最短撮影距離も、テレ端の375mm相当でも約1mと短く、単に遠くの被写体を大きく写せるだけでなく、グッと接写して迫力のある仕上がりにできます。
これら2本のキットレンズが、Z 50の魅力をいっそう高めてくれているのは間違いありません。ぜひ、低価格&コンパクトのコンセプトを受け継いだ単焦点レンズや高倍率ズームレンズを出してほしいと感じます。