"大人のための変身ベルト"というコンセプトで、バンダイの最新技術・造型手法を用いたクオリティの高い"なりきり玩具"として開発された「COMPLETE SELECTION MODIFICATION」(以下 CSM)は、発表以来「仮面ライダー」シリーズの熱心なファンに好評をもって受け入れられ、現在まで第24弾を数える人気シリーズとなっている。
イベント開催を記念して、マイナビニュースではCSMの商品企画・開発を務めるバンダイのフナセン氏に取材を敢行。自身もコアな「仮面ライダー」ファンであるフナセン氏が"大人"をターゲットにした変身ベルト商品の開発で、特にこだわった部分とはなにか。「仮面ライダー」愛に満ち溢れたロング・インタビューをお楽しみいただきたい。
――フナセンさんがCSMの担当になられたのは、第何弾からなのでしょう。
2017年発売の第14弾「NEWデンオウベルト」(仮面ライダー電王)からですね。
もともと「仮面ライダー」シリーズが好きで、バンダイの別部門にいた頃からCSMを個人的に購入していました。その後、DXシリーズの開発部署に移動し、前CSM担当者の異動に伴って"ある程度仮面ライダーのことに詳しい者がいいだろう"ということで、やらせていただくことになりました。
前年は『仮面ライダーエグゼイド』(2016年)の「DXゲーマドライバー」などの現役ヒーローの商品の開発に携わり、翌年からCSM中心の業務をすることになったのです。
――ハイターゲットを狙ったCSMですから、やはり商品のクオリティの高さがポイントだと思います。商品の開発にはどういった手順がかかっているのでしょうか。
企画の方向性がまとまった段階から、設計チームや電子部品・プログラムを扱うチームと共に、デザインを実際の商品へ具現化する動きを取り始めます。
私のやることとしては、設計図面のチェックと修正、音声収録や音声プログラムのフロー作成、音の編集、コストを合わせるための試算調整、パッケージ・取説のデザインを依頼・確認したり、工場から上がってきたショット品のチェックなどなど、トータルで開発作業&監督という仕事を行っています。けっこう多岐に渡っていますね。
――近年発売されている、基本的に子どもたちに向けた「DX」の変身ベルトも、精密な造型が施されている上にテレビと同じサウンドギミックがあり、とてもクオリティが高い印象です。これに対してCSMはどういった部分が違うのでしょう。
特に平成初期の作品の場合は、DXと比較してサイズが格段に大きくなっているのが、CSMの特徴です。これは、サイズ感を劇中で実際に使っている変身ベルトのプロップ(小道具)イメージに寄せるためです。
厳密には、音声ギミックのため内蔵物を入れるスペースを作る必要があったり、金型からの離型の都合など、プロップそのままを再現することはできませんが、ひと目で「本物のようだ」と思えるような実在感を持たせる必要があります。
また、オンエアが終わって数年後に出す商品ということもあって、DXのときにはなかった音声ギミックを収録するのが現在の主眼となります。第5弾の「CSMカブトゼクター」(仮面ライダーカブト)では、DXを開発するときに入れることが叶わなかった「クロップアップ」のスイッチを組み込んであるんです。
――すでにDX版が発売されている変身ベルトをCSM化する場合、DX版の図面などを参考にすることがあったりしますか。
ケースバイケースなのですが、DXの商品と劇中のベルトはイコールではありませんから、あくまでも"本物感"をユーザーのみなさまに持っていただくため、映像や写真資料を観察しながら一からデザイン、設計をやり直しています。
通常の玩具商品を設計するときは、専用の六面図がある状態で作るため、CSMはそれよりもかなり手間のかかる作り方になります。
――プロップのベルトを観察したことによって、どんなことが判明しますか。
いろいろありますが、細かいディテール面などは、プロップをじっくり見ていくうちに多くのことが判ってきます。
『仮面ライダークウガ』の変身ベルト「CSM 変身ベルト アークル」(第21弾/2019年)のバックルって、シルバーパーツの流線形のラインが、よく見ると左右が微妙に「非対称」になっているんです。プロップでそうなった経緯はわかりませんが、人の手で作られているからこそ生じる、こういったわずかなズレの部分まで緻密に再現するほうがいいのか、それともお客様の中にある最大公約数のイメージに沿って左右対称で作ったほうがいいのか、どれがベストなのか毎回悩みながらやっています。
どうすれば正解になるのか、は取り扱う商品ごとに変わってきます。そこは、やはり現物の「写真」とテレビ画面から見える「映像」の2つを頼りに、より満足度が高くなるイメージをその都度選ぶことになります。