出張はサラリーマンの醍醐味。仕事だけでなく、現地でおいしいグルメを発見する楽しみもあります。しかし、毎回アタマを悩ますのは荷物のこと。なるべく身軽になりたいけれど、どうすればいいか分からないまま、出発前の深夜に荷造りするときも……。

そこで今回登場するのが、総合バッグメーカー エース マーケティング部 次長 難波敏史さん。「パッ王(キング)」と称されるほど、荷物整理の達人である難波さんに、荷物を少なくするための考え方と、パッキングの収納テクニックを教えてもらいましょう。

  • エース マーケティング部 次長 難波敏史さん(写真:マイナビニュース)

    エース マーケティング部 次長 難波敏史さん

出張にふさわしいカバンのサイズは?

「余計な物を持っていかない」ことがパッキングの最大の秘訣だと、難波さんは言います。たしかに、そもそも荷物の量が少なければ、荷造りに悩まされることもなくなります。

「一泊二日の出張であれば、わざわざスーツケースを使うこともありません。ちょっと大きめのブリーフケースやビジネスリュックに、仕事道具と着替えを詰めるだけです。エキスパンド機能付きのマチが拡がるカバンなら、普段使いとも両立できます」。

  • マチを閉じた状態

    マチを閉じた状態

  • マチを開くことで容量が増える

    マチを開くことで容量が増える

宿泊数が伸びた場合はどうでしょうか。よっぽどの長期出張でないかぎりは、たとえ海外出張であっても「機内持ち込み可能なサイズ」のキャリーバッグですませることを、難波さんはオススメします。

「とくに飛行機で移動するときですが、荷物を預けてしまうと引き取りにとても時間がかかってしまうことがあります。上司と一緒に行動していた場合、待たせてしまうのは、ビジネスマナーとして論外です。

また海外では、預けた荷物が行方不明になり、手元に届くのに何日もかかるという事態もありえます。仕事をするうえで、最悪の状況を考えて選択するのが良いかと思います」。

機内に持ち込みできる手荷物のおおよそのサイズは、総重量10kg以内、3辺の和115cm以内、内容量としては最大で40リットルほどになります。見た目にもコンパクトで、海外出張用としては心もとないように思えてしまいますが、しかし、難波さんはこう言います。

「ぼくには皆さんの1.5倍多く収納するテクニックがありますよ」

プロフェッショナルに学ぶ収納テクニック

いったい「パッ王(キング)」の収納テクニックはどんなものなのでしょうか。すぐに真似できるポイントは大きく分けて、次の2つです。

(1)衣類は畳まず、フラットに重ねる。
(2)ポーチを活用する。

「衣類の詰め方は『最初はラザニア、最後はロールケーキ』と覚えてください。まずは長いパンツやスカートを、畳まないままカバンに広げます。はみ出してしまって構いません。この上に、シャツなどを広げたまま重ねていきます。同じ方向で重ねると襟の部分だけふくらんでしまうので、うまくズラしていってください。最後に、はみ出たパンツやスカートでぐるっと巻いて完成です」

  • 畳まないで広げて重ねる

    畳まないで広げて重ねる

  • 襟の部分などは重ならないようにする

    襟の部分などは重ならないようにする

  • 最後に巻きつけるにようにする

    最後に巻きつけるにようにする

「衣類は畳まない」とは、目からウロコの方法です。こうすることによって、収納量がアップするだけでなく、衣類の折りじわができにくくなり、荷崩れもしづらくなるという多くのメリットが生まれるのです。

達人に聞く! パッキングテクニック

実はこの収納術は、1940年創業のカバンメーカーであるエースに代々受け継がれていたものを、難波さんがさらにブラッシュアップしたテクニックだそうです。

電子機器や洗面道具や化粧品、薬などの小物類は、種類ごとにポーチに分けて入れることによって、効率的なパッキングが可能になります。靴も持っていく場合は「シャワーキャップ」で片足ずつくるむことによって、汚さずに運ぶことができるそうです。

  • 小分けのポーチを活用すると効率的

    小分けのポーチを活用すると効率的

  • 靴は使い捨てのシャワーハットで包むと汚れが気にならない

    靴は使い捨てのシャワーキャップで包むと汚れが気にならない

こうした収納術を使って、衣類や小物類、洗面用具などを詰めていくわけですが、このとき注意したいのが「4分割の法則」。フタ側と底側ならば底側の方に重いモノを、車輪側と取っ手側なら車輪側に重いモノを配置することで、重心が安定して、運びやすく、荷崩れしにくくなるのです。

  • 4分割の法則 提供:エース

    4分割の法則 提供:エース

出張上手の道は「リストづくり」から

持っていくモノをコンパクトにして、小さなカバンでもたくさん詰めることによって、旅の移動を効率的にする。スマートな出張スタイルが見えてきました。

しかし、何が必要で何が不要なのか、それがぱっと分からないからこそ悩んでしまうもの。そんな時のために難波さんがイチ押しする方法は「リストづくり」です。

「3泊ならどれくらいの着替えが必要なのか? 向こうで買い足せたり、洗濯できたりするのか? といったことを考えながら、持っていくモノのリストを作りましょう。あとは荷造り前に、すべての品物を並べてチェックすれば、忘れ物をしたり、余計な物を持っていったりすることは無くなります。15分で荷物をチェックして、15分で荷造りをして、それでもう出張準備完了です」。

  • チェックリストの重要性を話す難波さん

    チェックリストの重要性を話す難波さん

どうしても増えてしまいがちなのは衣類ですが、シャツやネクタイ、ベルトの色を変えてコーディネートすることによって量は減らせると、難波さんは補足します。こうしたリストをいったん作ってしまえば、次回からの出張がさらに楽になりますね。

最後に、スーツケースを新しく買うときの選定ポイントを聞きました。

「出張用途ですと、前ポケットを搭載したタイプがお勧めです。パソコンを入れられる前ポケット付きの製品であれば、空港内のセキュリティチェックの際にも、取り出しがスムーズになりますよ。ここ数年でカラーバリエーションも豊富になり、女性向けの製品も一気に増えてきましたから、お気に入りの色を選んでください。

また、キャスターのストッパー機能を搭載したモデルだと、不用意な走行を防ぐことができるので、より快適な移動ができると思いますよ。」

  • 前ポケットにパソコンや電源ケーブルを収納できる

    前ポケットにパソコンや電源ケーブルを収納できる

取材協力:難波敏史(なんば・としふみ)

エース株式会社 マーケティング部 次長
88年エース入社。2004年よりマーケティング部にて広報を担当。スーツケースのリサイクルを業界でいち早く開始し、会社の方針である社会貢献活動も積極的に実施。カバンに精通するほかパッキングの実演イベント等も行う。