外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年11月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円 11月の推移】
11月のドル/円相場は107.889~109.668円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約1.3%上昇(ドル高・円安)した。
米中通商協議の行方が市場の関心を集める中、観測報道や当局者の発言に一喜一憂しつつも、「第1段階」の合意に対する期待は維持された格好。米国では「香港人権法」がトランプ大統領の署名を経て27日に成立。香港で続く反体制デモの支援につながる内容とあって中国側は強い反発を示したが、市場の反応(円相場上昇の反応)は限られた。
同法案が米下院で再可決した21日に、中国商務省が「貿易合意に向けて米国との緊密な意思疎通を続ける」と表明したことなどから、市場には香港問題は通商協議の妨げにはならないとの楽観的な見方が広がっている模様。
米中通商協議への期待に加え、米国景気の底堅さを示す経済指標が目立ったこともあって、米国株が史上最高値を更新しており、こうしたリスク選好の流れがドル/円相場を支えた。
【ドル/円 12月の見通し】
12月のドル/円相場は、日米ともに金融政策の変更が見込まれない中、引き続き米中通商問題の行方が最大のテーマとなる公算が大きい。11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)中に行われる予定だった米中首脳会談は、APEC自体の中止もあって延期となり、現時点で開催のメドは立っていない。
中国メディアによれば、中国側は第1段階の米中通商合意の一環として、米国に12月15日の対中関税発動を停止するだけでなく既存関税の撤廃を求めているとされる。米国はこれに難色を示している模様で、通商合意は越年の可能性があるとのこと。合意後ずれ観測はドル/円の上値を抑えることになろうが、両国の対立が鮮明化しない限り、大きく下押しする展開にはならないだろう。
仮に、年内に合意がまとまるようなら(合意内容にもよるが)、ドル/円は110円台を回復しての上伸が見込めそうだ。それでも、余程のことがなければ年初来高値(112.40円前後)の更新は困難と見られ、今年のドル/円相場は年間の値幅が1973年の変動相場制移行後で最小となる公算が大きい。
なお、今年のドル/円の値動きは104.44~112.40円前後で値幅は8円弱に留まっており、これまでの最小値幅記録である昨年の10円前後を下回る可能性が高い。