俳優の上川隆也が主演を務めるテレビ朝日系ドラマ『遺留捜査』新作スペシャルが、12月1日(21:00~23:05)に放送される。

『遺留捜査』は2011年から続く人気シリーズであるが、上川は「やるべきことをやってきたに過ぎない」と謙そんする。

そして今回のスペシャルでは、上川演じる刑事・糸村聡の長年の相棒・村木繁(甲本雅裕)に最大の危機が訪れる。村木を演じる甲本との撮影エピソードや、スペシャルならではの今作の見どころなどについて語った。

■糸村聡の演じ方は「変えないようにしています」

  • 上川隆也 -テレビ朝日提供

――2011年に始まった遺留捜査も今年で9年目を迎えます。長らくファンから愛される作品になった理由は何だと思いますか?

何なのでしょう? プロデューサーの目が鋭かったのではないでしょうか(笑)。最初から毛色の違う刑事ドラマであることは出演しながら感じていましたが、だからといって「これは続くかも」などという確かな実感があったわけではありません。僕としては、やるべきことをやってきたに過ぎないんです。なのでこれは、お客様から感想を伺うしかないと思います(笑)。

――この9年間で、糸村の演じ方に変化をつけたりはしましたか。

むしろ、変えないようにしています。もちろん、開始当初と現在で演技がまったく同じということはないでしょう。でも、多少の違いはあるにせよ、糸村に1本通っている芯のようなものは変わらないと思っています。

――ちょうど2年前に始まったシーズン4からは舞台を京都に移し、キャストもガラッと変わっていますよね。

このシーズンでも芝居巧者の皆さんを選んでいただきまして、僕自身、何の不安もなく京都編に入れました。そこはもうスタッフの方を含めた皆様に感謝するほかないです。

  • 左から栗山千明、上川隆也 =同

――今作では、その京都の人気観光地である「天橋立」にて、ボートチェイスのシーンを演じたそうですね。

はい。風光明媚な景観の代表格とでもいうべき場所を背景に撮影できたことが、とても感慨深かったです。もちろん、それに見合う画が取れましたし、釣りに訪れた糸村たちが船で行うボートチェイスは、一味違うシーンになっています。

――「一味違う」というのは、景観の美しさから来るものでしょうか?

いや、それだけにとどまらないと思います。誤解を招きそうなんですけど、「釣りに来てこれ!?」といいましょうか(笑)。そのミスマッチな部分も含めて、冒頭からなかなか興味深い展開になっていると思います。

  • 左から甲本雅裕、上川隆也、宇梶剛士 =同

■相棒・村木繁を襲う危機に「糸村はどうなってしまうんだろう」

――また、今作では長年の相棒・村木繁(甲本雅裕)に最大の危機が訪れます。その場面について、脚本を読んで受けた最初の印象をお聞かせください。

まず思い出したのは、シーズン2の第5話です。同僚の長瀬(田中哲司)が殉職するというシーンがありました。この1話は、その後の糸村に大きな影響を与えたと思っています。

――長瀬の殉職時の演技が今回にも活きているのですか。

はい。シーズン2の第5話は、糸村が月島中央警察署に配属されて、まだ日が浅い頃のエピソードなんです。だから、長瀬と同僚として過ごした時間はおそらく数か月しかない中で、糸村が「どう行動したのか」が描かれました。あの時の糸村は、いつもらしくない振る舞いをして見せたと僕は思っています。

それはなぜなんだろうと考えた時に思い至ったのは、きっと彼は自分に対する評価に興味がないということ。だからこそ、飄飄(ひょうひょう)としていられるのではないかと。でも、仲間のことに関しては、その立ち位置や思いが大きく変わる人物に、あの瞬間からなったんだと思うんです。ならば今回、村木さんがこうなってしまった時に、果たして糸村はどうなってしまうんだろうと、「長瀬の死」の時の思いと照合しながら演じさせていただきました。

■甲本雅裕とは「とても気の置けない間柄の一人」

  • 左から甲本雅裕、上川隆也 =同

――上川さん自身、糸村と村木はどんな間柄だと思いますか。

わかりやすく同僚であるとか、気の置けない間柄であるとか言うこともできますが、明確に「こういう存在です」っていう定義は未だにできません。村木さんに危機が訪れたことに対して思うところはあったにせよ、糸村が「自分にとって村木さんってこういう人だったんだな」と考え改めるような人でもないと思うんですよね。でも、大切な仲間であることには変わりないです。

――では、普段の上川さんと甲本さんの関係性はいかがですか。

同い年で共感する思いも多く、本当に会話が絶えない間柄です。糸村と村木が気の置けない関係性なのと同様に、僕にとって甲本という男もとても気の置けない間柄の一人です。

――そんな甲本さん演じる村木が危機に瀕しているシーンを実際に見て、上川さんはどのように感じましたか。

事前に台本を読んで、ある程度どんなシーンになるのかを思い浮かべるわけですけど、少なくとも、その村木さんに関する一連のシーンは、僕なんかが想像していたものよりはるかに素敵なものでした。村木さんが甲本で良かったとあらためて思えた時間でした。

――甲本さんの好演に触発されて、上川さんの演技にも何か変化はありましたか。

変わらないわけがないです(笑)。やはり演技というのはお互いの呼応というか、キャッチボールですから。投げられた球の球筋や強さに応じて、受け取り方も千差万別に変わる。甲本の演技を目の当たりにした時、僕が事前に用意していたイメージなんかはその場で捨てて、「さすが、甲本」って心のどこかで思いながら、お芝居をさせていただきました(笑)。

――ちなみに、今回の「遺留捜査」はスペシャルドラマとしての放送になります。スペシャルならではの見どころをお聞かせください。

誤解を恐れずに申し上げるならば、連続ドラマとスペシャルドラマで、やっていることは同じなんです。ただスペシャルは、より「遺留捜査」の物語の世界観を濃厚に堪能していただけるものだと思います。もちろん、だからと言って、連続ドラマが希釈されているというわけではありません (笑)。

例えるならば、とあるお寿司屋さんのランチコースに行ったらとても美味しかったので、ディナーに行ってみたらもっと美味しかった、という感じでしょうか。具材や料理の技術などは変わらないけれど、より長い時間と色合いの異なるコースメニューによって、同じ店をまた違った角度から味わうことができる。そんな感覚で楽しんでいただけたら幸いです。

  • ■『遺留捜査スペシャル』(テレビ朝日系 12月1日 21:00~23:05)
    上川隆也演じるマイペースで空気を読まない刑事・糸村聡が、遺留品から事件を解決していく同ドラマ。元経済産業大臣の音羽信彦(白井滋郎)が射殺される事件が発生し、最有力容疑者として、料理店の主人・水島俊樹(石丸謙二郎)が浮上する。糸村が目を付けたのは、水島の店に残された古ぼけた小さな鍵。“天橋立”の美しい景観の中で、さらなる難事件も発生。小さな鍵が導く、涙の真実とは。

■上川隆也
1965年生まれ、東京都出身。1995年にNHK70周年記念日中共同制作ドラマ『大地の子』で主役の「陸一心」役に抜てき。その後も、NHK大河ドラマ『功名が辻』、『エンジェル・ハート』(日本テレビ) 、『執事 西園寺の名推理』シリーズ(テレビ東京)、『ノーサイド・ゲーム』(TBS)などに出演。