名人挑戦争いは一騎打ちの様相、残留争いは混戦模様

11月28日に第78期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)の5回戦、佐藤天彦九段-三浦弘行九段戦が行われ、138手で三浦九段が勝利しました。これで全9回戦のA級順位戦は、折り返しである5回戦をすべて消化。名人挑戦争い、また残留争いの状況を見てみましょう。(表1)

まずは挑戦争いです。5回戦で佐藤康光九段が糸谷哲郎八段に敗れて2敗に後退したため、こちらは5勝0敗の渡辺明三冠と4勝1敗の広瀬章人竜王との一騎打ちの様相を呈しています。両者は6回戦で直接対決を控えており、今期の挑戦権を占う天王山の戦いです。渡辺三冠が制すれば2位以下と星2つ差をつけることになり、独走態勢となります。逆に広瀬竜王が勝利すれば1敗で両者が並ぶデッドヒート。2敗勢にもチャンスが巡ってくるかもしれません。

ちなみに同星で複数名が並んで9回戦を終えた場合はプレーオフが行われます。記憶に新しいのが第76期で、この時は6人が6勝4敗となり、順位に応じて挑戦者決定トーナメントが組まれました。(表2・肩書は当時)

一方の残留争いは混戦模様になっています。首が寒いのは、1勝4敗の佐藤天九段と久保利明九段、2勝3敗の羽生善治九段、糸谷八段、稲葉陽八段、木村一基王位。特に驚きは佐藤天九段の不調です。第77期で名人を失冠したばかりの前名人がまさかの降級圏内。名人挑戦者が翌期に降級ということは過去にありましたが、前名人が降級というのは過去にありません。

ただ、心強いのが1位という順位。挑戦の場合はプレーオフが行われますが、降級は同星の場合、順位が悪いほうがB級1組に降級となります。佐藤天九段は誰よりも順位がいいのでその点は有利です。一方現在は降級圏外ですが、勝ち星を積み上げないと心もとないのが稲葉八段と木村王位。この2人は1勝勢よりも順位が悪いため、追いつかれてしまうと降級が見えてきます。

6回戦の久保九段-稲葉八段戦、佐藤天九段-木村王位戦は残留争いの大一番となりそうです。

ここまで挑戦と残留争いの状況を見てきましたが、まだ4局も対局を残しているため最終的にどうなるかは誰にも分かりません。次のA級順位戦の対局は、12月2日の羽生九段-糸谷八段戦です。

表1:第78期A級順位戦(左)、表2:第76期プレーオフ