キヤノンは、2019年2月に実施したフルサイズミラーレス「EOS RP」の発表会にて、RFマウントの交換レンズ6本の開発を発表し、すべて「2019年内に発売」と告知しました。12月末発売を予定している「RF85mm F1.2 L USM DS」がスケジュール通りに登場すれば、6本すべてのレンズが予告通り年内に発売されることになります。それら6本の交換レンズのなかから、定番の大口径標準ズームレンズ「RF24-70mm F2.8 L IS USM」の実力を改めてチェックしたいと思います。

  • キヤノンが2019年内の発売を予告したRFマウントの交換レンズ(下段)。宣言通り、すべて2019年内に販売が始まることが確実になりました

  • キヤノンのフルサイズミラーレス「EOS R」シリーズ用の標準ズームレンズ「RF24-70mm F2.8 L IS USM」

    “大三元ズーム”の主力製品である標準ズームレンズ「RF24-70mm F2.8 L IS USM」の実力をチェックしましょう。カメラ量販店での実売価格は税込み30万円前後(ポイント10%還元)と、なかなかのプライスです

EFマウント版よりも100g重いが、描写性能は格別

EOS Rシリーズで採用されているキヤノンRFマウントですが、意外にも標準ズームレンズを3種類もラインアップしています。キットレンズとしてもおなじみの「RF24-105mm F4 L IS USM」、これまでにない開放F2通しの光学性能を誇る「RF28-70mm F2 L USM」、そして今回登場した「RF24-70mm F2.8 L IS USM」です。とりわけ、RF24-70mm F2.8 Lは24-70mmで開放F2.8通しという“ド定番”ともいえるスペックで、待っていたユーザーは多かったのではないでしょうか。

レンズマウントが変わったこともあり、一眼レフ用の「EF24-70mm F2.8L II USM」から光学設計が一新されています。ミラーレス用なのでレンズも軽くなるかと思いきや、RF24-70mm F2.8 Lの重量は約900gと、EFマウント版の約805gと比べてまさかの約100gアップとなりました。もっとも、カメラそのものが軽いので(今回はEOS Rを使用)、実際にはフルサイズ一眼レフ+同スペックのレンズよりも軽く感じられます。開放F2通しのRF28-70mm F2 Lは重さが実に約1430g、フィルター径が95mmと気軽に持ち歩けるサイズではありませんが、このレンズならば十分常用可能だと感じます。

  • こちらは、EFマウントを採用する一眼レフ用の標準ズームレンズ「EF24-70mm F2.8L II USM」。RFマウント版のRF24-70mm F2.8 L IS USMとは異なり、手ぶれ補正機構は搭載していません。カメラ量販店での実売価格は税込み21万円前後(ポイント10%還元)

EFマウント版から向上した点は、レンズ内手ぶれ補正機構をついに内蔵したことでしょう。シャッターを切ると大きなミラーが駆動する一眼レフに比べて、ミラーレスは衝撃が少なくぶれが発生しにくいのが特徴です。とはいえ、高画質設計のEOS R/RPでは、わずかなぶれも解像感の低下につながります。満を持して手ぶれ補正機構を搭載した点は大きく評価できます。手ぶれ補正の効果も、シャッター速度5段分と文句ナシ。EFマウント版では38cmだった最短撮影距離も、約21cmと一気に短くなりました。

肝心の描写性能は非の打ちどころがなく、ファインダーをのぞいても、そして撮影した画像を見てもホレボレするばかり。ピントの合った部分は、絞り開放から高い解像力を発揮。そこから前後へなだらかにボケていき、立体感や質感の再現は最新レンズにふさわしいデキだと感じました。あえてド逆光の厳しい状況も試してみましたが、耐逆光性はかなり高いレベルにあるといえます。

EOS R/RPのユーザーやこれから購入しようと考えている人にとって、RF24-105mm F4 Lとどちらを買うべきか悩ましく感じるかもしれません。撮影ジャンルや手持ちの機材、予算などで答えは変わりますが、表現の幅という点では絞りが1段明るく、最短撮影距離が短いことを考えると(RF24-105mm F4 Lは約45cm、RF24-70mm F2.8 Lは約21cm)、多少奮発してもこちらかなと思います。

  • ピントの合った部分から、とてもなだらかにボケていきます。前ボケ・後ボケともにクセがなく、柔らかい印象です(EOS R使用、70mm、ISO100、 1/200秒、F2.8)

  • バラの花びらを見ると線が細く、とても繊細な描写であることが分かります。光の乏しい日陰での撮影ですが、発色も鮮やかでクリアな印象です(EOS R使用、70mm、ISO160、 1/30秒、F2.8)

  • 強い逆光でレンズには厳しい場面。角度によってはわずかにゴーストが現れましたが、コントラストはしっかりとキープ。おそるべし耐逆光性です(EOS R使用、48mm、ISO250、 1/800秒、F8)

  • このレンズが真価を発揮するのは、このような質感を美しく再現したい時だと思います(EOS R使用、70mm、ISO250、 1/160秒、F2.8)

  • これだけ明るいレンズだと、周辺部のボケがラグビーボール状に歪む口径食が見られるのが一般的ですが、このレンズは周辺でもほぼ真円を描いています。高度な光学設計がなされていることがうかがえます(EOS R使用、57mm、ISO320、 1/40秒、F2.8)

  • F2.8の絞り開放ではシャープではあるものの、やや柔らかいトーンという印象。しかし、いくぶん絞ればエッジが立ち、メリハリの効いた描写になります。絞って撮るのも楽しいレンズといえるでしょう(EOS R使用、48mm、ISO320、 1/640秒、F5.6)

  • 信号を待ちながら撮影したスナップ。太陽が画面内に写り込んでいますが、この描写はお見事。ボケ味のよさも生きています(EOS R使用、24mm、ISO320、 1/125秒、F2.8)

  • 都市のスナップでは、このような極端にコントラストの高い場面によく遭遇します。もちろんカメラの性能も重要ですが、ハイライトやシャドウがしっかりと粘るにはレンズの描写力も必要になります。もちろん、このレンズの描写性能はかなり高い次元にあるといってよいでしょう(EOS R使用、27mm、ISO500、 1/400秒、F8)

鹿野貴司カメラマン

著者プロフィール
鹿野貴司

1974年東京都生まれ。多摩美術大学映像コース卒業。さまざまな職業を経て、広告や雑誌の撮影を手掛ける。日本大学芸術学部写真学科非常勤講師、埼玉県立芸術総合高等学校非常勤講師。