無敗!広瀬竜王の矢倉

第45期棋王戦挑戦者決定トーナメント(主催:共同通信社)の準決勝が11月26日に行われ、広瀬章人竜王が佐々木大地五段に勝利し、勝者組の決勝戦進出を決めました。

本局は、広瀬竜王の矢倉に対し、佐々木五段が雁木で対抗する戦いとなりました。先に戦端を開いたのは広瀬竜王で、飛車と銀のコンビネーションで右辺から相手玉へ迫りました。対する佐々木五段は逆サイドから反撃して激しい攻め合いへ。その後の広瀬竜王の飛車切りからの強襲が厳しく、佐々木五段の反撃も及ばず93手で広瀬竜王の勝利となりました。

本局で広瀬竜王が使用した矢倉という戦法は、古くから王道の戦法としてあり続けてきました。矢倉は、「玉の守りは金銀3枚」「攻めは飛車角銀桂」といった将棋のセオリー通りの囲いで、「矢倉は将棋の純文学」と呼ばれることもありました。しかし、ここ数年は矢倉に対する優秀な急戦策が現れ、一部では「矢倉は終わった」と言われてしまうほど指されなくなりました。広瀬竜王は令和の時代に入ってから今日までに矢倉で4回戦い、全勝しています。

1回目:10月3日 王将戦挑戦者決定リーグ戦   広瀬竜王―豊島将之名人
2回目:11月19日 王将戦挑戦者決定リーグ戦   藤井聡太七段―広瀬竜王
3回目:11月21日 竜王戦七番勝負第4局     広瀬竜王―豊島名人
4回目:11月26日 棋王戦挑戦者決定トーナメント 広瀬竜王―佐々木五段

もしかしたら、広瀬竜王は矢倉の新しい勝ち方をつかんでいるのかもしれません。

本局で勝利した広瀬竜王は、11月27日に行われる丸山忠久九段―本田奎四段の勝者と対戦します。棋王戦はベスト4以上は2敗失格システムとなるため、負けてしまった佐々木五段にも挑戦のチャンスは残されています。

広瀬章人竜王(左)、佐々木大地五段