広瀬竜王が「令和の矢倉」でついに反撃開始も、依然豊島将之名人が有利な情勢
11月21、22日に第32期竜王戦七番勝負第4局(主催:読売新聞社)が山梨県甲府市「常磐ホテル」で行われ、広瀬章人竜王が豊島将之名人に勝利し、シリーズ通算成績を1勝3敗にしました。
先手番の広瀬竜王がこの七番勝負で初となる矢倉戦法を選択。途中までは昭和によく指されていた形で進行しましたが、広瀬竜王の「▲6七金左」という手で突然最新の戦いになりました。この手は矢倉囲いを自ら崩してしまう手で、玉の固さを重視していた平成の時代では全く考慮されていませんでした。それが実はバランスのいい形だということが平成の終わり間際に発見され、令和の現在、静かなブームとなっています。(矢倉戦法自体が角換わり戦法に押されて下火になっているため、爆発的な流行には至っていません。)
双方淡々と駒組を進め、局面が飽和状態となった場面で広瀬竜王が大駒の角を切り飛ばす大胆な仕掛けを敢行。局面が一気に動きました。この仕掛けが成立したのも、前述の通り「▲6七金左」から角を打ち込まれる隙がない陣形を組み上げた結果です。
仕掛けから一貫して広瀬竜王は激しく豊島玉を攻め立てます。広瀬陣はバランスのいい、隙のない陣形と書きましたが、それは玉の固さとトレードオフ。豊島名人も鋭く反撃し、みるみるうちに双方の玉が危険な状態になりました。
最終盤まで続いた大激戦を制したのは広瀬竜王でした。豊島名人の最後の攻めに冷静に対処し、自玉の安全を見切って詰めろ(受けなければ次に詰ますぞ、という手)を掛け、豊島名人が受けずに首を差し出すと、持ち時間を慎重に使って豊島玉を詰まし上げました。
これで広瀬竜王はこのシリーズ初勝利。ついに反撃ののろしを上げました。
とはいえ、追い込まれている状況には変わりありません。タイトルを防衛するためには3連勝が必要。さらに次は不利と言われている後手番です。
しかし、先日の王将戦挑戦者決定リーグ最終局で藤井聡太七段を下して王将戦の挑戦者になったように、調子を落としているわけではありません。そのリーグでは豊島名人も破っています。
竜王戦2度目の3連敗4連勝なるか!? とはさすがにまだ言えませんが、第5局も制すれば現実味を多少は帯びてきます。
注目の第5局は12月6、7日に島根県「藩校 養老館」で行われます。