コーヒー好きが高じて喫茶店のオーナーになり、本まで出した家電流通コンサルタントの得平司氏が、コーヒーメーカーの正しい選び方を紹介します。美味しいコーヒーを飲むためには努力を惜しまない人だけに、気になる製品を1つずつ実際に購入し、歯に衣着せずに評価していきますよ!今回は低価格モデルながら、独自のアロマツイスター構造を採用して、香りの豊かな抽出に挑んだメリタの「ツイスト SCG58」を取り上げます。
時間をかけずにドリップすればコーヒーの香りが逃げない
コーヒーの楽しみの1つに香りがあります。コーヒーの香りが好きで、コーヒー好きになった人も多いのではないでしょうか。コーヒーの香りは、気持ちをリラックスさせると同時に、集中力を高めるともされています。この、コーヒーの香りを楽しみたい人に注目してほしいのが、ツイスト SCG58です。
ツイスト SCG58のスペック
- 発売日:2018年10月
- ミル:非搭載
- フィルター:ペーパーフィルター
- 最大水容量:0.7L
- 一度に淹れられるカップ数:2~5カップ
- 本体寸法:W180×D195×H265mm
- 重量:約1.3kg
- 本体カラー:ジェットブラック(3-B)
コーヒーを抽出したときの香りは「アロマ(aroma)」と呼びます。アロマは揮発性が高く、淹れたてのカップから漂う良い香りは長続きしません。鼻が慣れてしまうのではなく、実際に香らなくなるのです。
一方、コーヒーを飲むときに、一口めに一番強く感じられる、口から鼻に抜けていく香りは「フレーバー(flavor)」と呼びます。こちらも淹れてすぐのほうが感じ取りやすく、冷めて酸化してしまったコーヒーのフレーバーは弱くなります。
得平:コーヒーの香りは豆の種類や焙煎の仕方によっても変わりますが、淹れたてほど強く、心地よく香る点は変わりません。このため、ハンドドリップでは2~4分程度を目安に抽出してカップで楽しむようにします。ドリップに時間をかけ過ぎると、コーヒーの香りが逃げてしまいます。
コーヒーを抽出し始めた直後と終わりが近づいてきた状態では、コーヒーの味や香りは異なります。このため、グラスポット(コーヒーサーバー)に落としたあと、カップに注ぐ前に少しかき混ぜるのが美味しく飲む作法とされます。
ツイスト SCG58は、新機能の「アロマツイスター」によって、この撹拌(かくはん)を不要にしています。かき混ぜる手間を省くとともに、かき混ぜたときに香りが飛ぶことも防いでいるわけです。
アロマツイスターは、ポットのフタ中央に筒状の穴が取り付けられた特殊構造のこと。コーヒーをグラスポットに落とすときに、コーヒーが上から落ちて溜まっていくのではなく、下から湧き上がるように溜まっていきます。つまり、グラスポットの中で自然に撹拌されるようになっているわけです。
セッティングは簡単、でも水を入れづらい
ペーパーフィルターをセットする抽出部(ハンドル付きフィルター)には、「メリタ式一つ穴方式」を採用。内側に刻まれた溝と角度は厳密に計算され、お湯の流れや抽出時間がほど良くなるように調整します。
さっそく、コーヒーを淹れてみましょう。開封直後なので、まずはお湯だけを流す「洗浄運転」をします。給水タンクは本体と分離しないため、やや水を入れづらく感じました。タンクの水位と目盛りが、もう少し見やすいと良かったです。水を入れ過ぎたときは、少量ならスポイトやストローを使って減らしたり、または布で吸わせたりして調整します。コーヒーメーカーをたまにしか使わない人は、水垢やカビに注意。ちゃんと乾かしてから片付けましょう。
洗浄運転のあとは、5分以上の間隔を空けてから、ペーパーフィルターをセット。ペーパーフィルターがきちんと「張って」いないとコーヒーがうまく落ちないので、きれいにセットするように心がけてください。続いてコーヒー粉をセットして、給湯ノズルをフィルター上部に動かし、タンクに水を入れます。本体のフタを閉め、グラスポットを準備して電源を入れます。
味や香りが素直に出る。コーヒーを勉強したい初心者にもオススメ
では1杯め。一度に2杯分を淹れました。ツイスト SCG58の取扱説明書では、コーヒー豆を16gで淹れるように書かれています。淹れ終わるまでの時間は6分10秒でした。濃度計は1.43とやや濃いめを示しました。
得平:淹れ終わるまでに時間がかかったので、雑味が出るだろうと予想しましたが、飲んで見るとあまり雑味がなく、少し驚きました。抽出の時間が長めなので香りも厳しいのではと予想したものの、思ったよりもちゃんとアロマが出ています。
2杯めは、一度に4杯分の抽出を試しました。コーヒー豆は32g。淹れ終わるまでの時間は7分10秒になりました。濃度計の数値は1.38です。
得平:2杯淹れたときよりも、4杯淹れたときのほうが美味しく感じます。これも少し意外でした。4杯のほうが時間がかかるぶん、風味が落ちているのではないかと思っていたからです。全体的に、少し濃いめに抽出するように設計してあるようです。濃いめに抽出されると、豆の違いが出やすくなります。豆の味が比較的ストレートに出てくるため、良い豆を使わないと雑味が出るはずです。逆に良い豆を使えば、美味しく淹れられることが期待できます。
コーヒーを淹れたあとは電源スイッチを切ります。保温する場合は電源スイッチを入れたままにしますが、30分以内に飲むようにしたいところです。保温の温度を計ると、73℃前後でした。やや高めです。グラスポットを取り出したとき、保温プレートの上にしずくが垂れないよう、しずく漏れ防止弁が付いているのは好印象。プレートが汚れません。
お手入れは、本体の水洗いは不可ですが、毎回洗うのはパーツが2つだけと簡単です。ただ、ペーパーフィルターをセットするハンドル付きフィルターのハンドル部分は、少し壊れやすそう。水洗いのとき、間違えて折ってしまわないように注意です。
得平:淹れ終わるのに時間がかかる点がやや気になりました。その割にアロマが飛んでおらず香りが楽しめたので、そこは素晴らしいのですが、朝の忙しいときだと遅く感じるかもしれません。先述のとおり、良い豆を使えば素直に良い味と香りが楽しめますので、コーヒーの味が分かるようになりたい人が、ステップアップするための入門用にもおすすめです。
ちなみに、リラックスできる香りの豆はブルーマウンテンやグァテマラ、集中力を高める香りの豆はマンデリンやブラジルサントス、ハワイコナといわれています。
香りをもっと楽しみたい人は、ミルで豆を挽くことも視野に入れましょう。コーヒーは生豆のとき、焙煎したとき、挽いたとき、淹れたとき、飲んだときで、香りが変わっていきます。家庭での焙煎は少しハードルが高い趣味になりますが、ミルで挽くのはそれほど難しくありません。このあたりは次回以降でもっと詳しくご紹介できればと思います。
諸山泰三(もろやまたいぞう)
PC雑誌の編集者を経て、家電流通専門誌の編集者となり、現在は家電流通誌やマイナビニュース・デジタルなどのネット媒体で執筆。カフェで原稿を書くことも多く、いろいろなカフェやコーヒーメーカーを体験した。得平がフワッティ・カフェ名義で監修した「ツウになる!コーヒーの教本」(秀和システム刊)にも協力。本連載では評価のアシスタントと執筆を担当。