東京メトロは17日、今年で9回目となる「メトロファミリーパーク in 綾瀬 2019」を開催した。6万名を超える応募の中から1万5,000名が招待され、会場となった綾瀬車両基地(東京都足立区)を楽しみ、東京メトロの魅力を体感した様子だった。
イベント当日、会場最寄り駅の北綾瀬駅へ向かう列車は多くの家族連れでにぎわった。現地に到着する前から熱気であふれ、入場口には長い列ができた。
「メトロファミリーパーク in 綾瀬」は、普段入れない車両基地を一般の人に見てもらい、東京メトロの魅力を広めようとの趣旨で2011年から始まった。現在の形式で開催されるようになって9回目。以前の「東京メトロスマイルフェスタ」を含めると11回目となる。
会場の綾瀬車両基地は、東京メトロで最大規模の車両基地であり、千代田線の車両だけでなく、有楽町線・副都心線や南北線の車両の整備などにも使用されている。
■9000系の車体吊上げ実演は大迫力
通常、車両の整備を行っている工場棟では、車体の吊上げ実演などが行われた。南北線の車両9000系の先頭車を使用し、クレーンで車体を持ち上げ、宙に浮かせる。その後、台車に合わせるようにして車体を降ろす。
その車両を約50名の参加者で綱引きするという試みも行われた。最初は力が足りず、うまく引くことができなかったものの、全員で強く綱を引くと9000系の車体が動きだした。多くのこどもたちが参加したこの綱引きで、力を合わせることの大切さを知ったことだろう。
その横で高所作業車の体験も行われた。車両の屋根上の点検などで使用する電動昇降作業車に乗ることで、普段見ることのできない鉄道車両の屋根、とくにパンタグラフ周辺を見られる貴重な機会となる。パンタグラフの上げ下げの体験、ブレーキの操作体験も行われ、こどもたちの列ができていた。
■運転台・車両洗浄・保守用車などの体験も
本物の車輪を押して転がすイベントも実施された。重い鉄道車両でありながらも、鉄の線路と車輪で簡単に動くことを体感し、鉄道の摩擦係数の少なさによるエネルギーの消費の少なさを知る良い機会になったのではないかと思われる。こうした経験は将来、学校での物理の勉強などに役立つだろう。
車掌体験のコーナーでは、ドア開閉を実際に体験してみることで、車掌になった気分を味わえる。体験しているこどもたちも楽しそうだった。その他、鉄道模型や「プラレール」の展示、運転体験シミュレーターにも多くの来場者が集まっていた。
工場棟の近くでは、「女子鉄アナウンサー」の久野知美さん、鉄道ファンで知られるホリプロマネージャーの南田裕介氏らによるステージイベントが行われた。
千代田線の車両16000系を使った運転台体験も人気だった。運転士の説明を聞きながら実際に操作してみるという内容で、参加者たちは制帽を被り、ワンハンドルマスコンの操作を教わり、運転台での体験を楽しんでいる様子がうかがえた。
洗車される16000系を車内から見る車両自動洗浄装置の体験、工務区の保守用車両に実際に乗車する体験にも多くの来場者が集まり、普段見ることのできない車両基地の仕事を実際に体験していた。
会場では鉄道事業者らによるグッズ販売、鉄道部品の販売も行われ、来場者たちは現地に行かないと手に入らないグッズや貴重な部品などを購入していた。食堂では各地の駅弁が販売され、昼すぎにはほとんどが売り切れていた。
■車両展示で5000系と16000系2編成が並ぶ
車両基地の一般公開において、目玉ともいえるイベントが車両展示。今年は千代田線北綾瀬~綾瀬間の列車で活躍し、2007年3月に引退した緑色の帯の5000系と、現在活躍している16000系2編成が並んだ。16000系は貫通扉が真ん中に設置されている1次車、貫通扉が左寄りに設置されている5次車を展示。5000系は何度か方向幕が変更され、「綾瀬←→北綾瀬」の他に「団体」などが表示される場面もあった。
今回のイベントを担当した東京メトロ需要創出・マーケティング部の田中泉氏は、「地域住民や東京メトロファンに還元するために今回のイベントを開きました」と話し、今年のイベントに関して「それぞれに満足していただいていると思います」と自信を見せた。今回、工夫した点として、駅弁販売コーナーの開設や各種体験の整理券配布などを挙げていた。
約1万5,000人の来場者が綾瀬車両基地を訪れ、その4倍を超える応募があったという「メトロファミリーパーク in 綾瀬 2019」。多彩なイベントを用意して来場者を楽しませ、今年も大盛況の様子だった。今回のイベントを通じ、東京メトロにより一層の愛着を覚えた来場者も多かったかもしれない。