絶好調の渡辺三冠、広瀬竜王を寄せつけず
11月17日に千葉県千葉市「幕張メッセ」で、第40回将棋日本シリーズJTプロ公式戦の決勝戦、渡辺明三冠(前年度覇者)―広瀬章人竜王が行われました。
将棋日本シリーズJTプロ公式戦は、タイトルホルダーなど、選抜されたトッププロ12名によるトーナメント戦。全局公開対局として行われ、全国各地を転戦するのが特徴です。40回の節目となる今期は、連覇を狙う渡辺明三冠と、初優勝を目指す広瀬章人竜王が決勝へと駒を進めました。
序盤は相居飛車の出だしから、後手の渡辺三冠が力戦形へ誘導します。先手の広瀬竜王が積極的に仕掛けて、広瀬竜王の「攻め」対、渡辺三冠の「受け」という構図になりました。
見応えがある応酬の中、広瀬竜王が手裏剣の歩を放ちました。この歩は敵陣を乱して鋭い手に見えましたが、指しすぎだったようです。歩損が大きく先手の攻めが息切れ模様になり、形勢の針は渡辺三冠のほうへと傾きました。
受けに回っていた渡辺三冠は、相手の攻撃がやや緩くなった瞬間に、攻撃へとスイッチを切り替えます。広瀬玉に鋭く迫ると、最後は飛車切りを決め手にして、90手で勝利。2年連続3回目の優勝を果たしました。
渡辺三冠が将棋日本シリーズに初めて出場したのは平成17年のこと。そこから5回連続で初戦敗退と、JT杯は当初、相性がよい棋戦ではありませんでした。それが平成26年に初優勝を果たすと、昨年の優勝で棋戦通算成績を11勝11敗にして、借金?を返済。今期は見事に連覇を果たして、「来年は3連覇にチャレンジしたい」(渡辺三冠)と抱負を語りました。
渡辺三冠の今期成績は22勝4敗(0.846、※未放映のテレビ棋戦を除く)と勝率1位で、中原誠十六世名人の持つ年度最高勝率(47勝8敗、0.855)の更新も視野に入る勢い。1月から始まる第69期王将戦七番勝負の防衛戦(挑戦者は広瀬竜王か藤井聡太七段)にも注目です。