ファーウェイ・ジャパンは11月14日、ミドルレンジのスマートフォン「HUAWEI nova 5T」とスマートウォッチの「HUAWEI WATCH GT 2」、完全ワイヤレスイヤホンの「HUAWEI FreeBuds 3」などの新製品を発表しました。米中貿易摩擦に端を発する禁輸措置を受けながら、現時点では順調な業績をアピールする同社ですが、今後「1+8+N」という戦略を掲げて、スマートライフに注力していく方針を示しています。
新戦略の詳細と今後のAndroidへの取り組みについて、ファーウェイデバイスの日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏が報道陣の質問に答えました。その中で呉波氏は、すでに海外では発売済みの最新ハイエンドスマートフォン「HUAWEI Mate 30 Pro」について、「日本国内での販売は検討していますが、4Gモデルではなく、来春に向けて5Gモデルを出していきたい」と話しました。
1+8+Nの戦略は、1(スマートフォン)と8(各種スマート製品)+N(多数のIoTデバイス)を意味します。スマートフォンを中心にスマート製品とIoTが連携して、インテリジェントな体験をユーザーに提供することを狙います。
スマート製品は、タブレット、PC、スマートスクリーン、スマートテレマティクス、HUAWEI VRグラス、ウェアラブル、スマートイヤホン、スマートスピーカーという各製品。この「1+8」製品をファーウェイのエコシステムとして展開し、さらにパートナーが提供する照明、空気清浄機、ロボット掃除機といった多数のIoT機器をつなげていく戦略です。
この中で、スマートフォンやタブレットは、基本的にAndroidを想定しています。通常、Android OSはオープンソースのAOSP(Android Open Source Project)をベースに、Google PlayなどのGoogleサービスをまとめたGMS(Google Mobile Service)が追加されています。
しかしファーウェイは、米国の禁輸措置によってGMSを使えなくなりました。今回発表されたSIMフリースマホのnova 5Tは、禁輸措置が発動する前から開発していたため、Android+GMSを搭載しています。ただし禁輸措置がこの先も継続すると、GMSを搭載できなくなる可能性も否定できません。「HUAWEIの方針としては、優先してAndroidとGMSを搭載していく」と呉波氏は強調しています。
そうした状況下で、ファーウェイはHMS(Huawei Mobile Service)と呼ばれるプラットフォームを強化していく考えです。OSとしてはAOSPによるAndroidを採用し、GMSの代わりにHMSを搭載します。HMSは、世界中の5億7,000万というファーウェイユーザーにアプローチでき、独自のアプリストア「App Gallery」には、月間で3億9,000万人以上のアクティブユーザーがいるそうです。
HMSはスマートフォン向けのアプリストアだけでなく、1+8戦略のエコシステム全体をカバーする役割を担います。このHMSに加えて、独自OSのハーモニーOSも加えることで、独自プラットフォームを構築していく考えです。呉波氏は「HMSもハーモニーOSも、AndroidやGMSに取って代わるものではありません」として、Android+GMSが使えないから代わりのOSとHMSを開発したという見方を否定します。
「5Gになると、端末へのニーズが細分化、セグメント化してきます。そのため、ハーモニーOSとHSMは1+8+N戦略のために作り出されたもの」(呉波氏)。「最悪のケースを考えて、GMSが使えなくなった場合には利用できます」としつつも、呉波氏はあくまでAndroid+GMSを搭載したスマートフォンを中心に据えることを示しました。
今回、スマートフォンとウェアラブル(HUAWEI WATCH GT 2)、スマートイヤホン(FreeBuds 3)を発表したファーウェイですが、「次々と1+8を日本市場に投下する計画」と呉波氏。単なるハードウェアメーカーではなく、日本でも5GとAIによるスマートライフを提供するプラットフォーマーを目指していくことを狙います。
それに向けて、初めて日本で開発者大会を開催します。「Shining-Starプログラム」として10億ドルを投資し、HMSの開発者をサポートするファーウェイは、これまで欧州や中東、アジアで開発者大会を開催してきました。2019年12月に東京で開催する予定です。
製品に関しても、今後「史上最大」(呉波氏)というプロモーションも実施し、開発者大会と合わせて、日本市場へのアプローチを強化していくと語りました。