11月8日に封切られ、週末興行成績でぶっちぎりの初登場No.1をマークしたシリーズ最新作『ターミネーター:ニュー・フェイト』(公開中)。製作に「I’ll be back!」したジェームズ・キャメロンから、重責のメガホンを託されたのは、長編映画監督デビュー作『デッドプール』(15)で一躍ヒットメーカーとなったティム・ミラー監督だ。『ターミネーター2』(94)の世界観を踏襲した正当な続編とされる本作で、度肝を抜く超絶のアクションと泣けるドラマを両立させたミラー監督を直撃!
メキシコシティの工場で働く21歳の女性ダニー(ナタリア・レイエス)が、未来から来た最新型ターミネーターREV-9(ガブリエル・ルナ)に襲われる。彼女を守ろうと激しいバトルに巻き込まれていく謎の女グレース(マッケンジー・デイヴィス)と、ターミネーターを宿敵として人生を送ってきたサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)。さらにT-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)もこの死闘に関わっていく。
まずは、ケタ外れの超ド級アクションに仰天! そして、アーノルド・シュワルツェネッガーとリンダ・ハミルトンというレジェンドたちはもちろん、マッケンジー・デイヴィスたちニューフェイスも含め、見せ場がきっちり用意されている。そう、これが本当に観たかった『T2』の続編だ!
――まずは、製作のジェームズ・キャメロンから、さまざまなリクエストがあったなかで、「ここだけは譲れない」と言われたポイントを教えてください。
キャメロンからは、すごくたくさんリクエストをもらったよ。それは本作を作るうえでのルールみたいなものだ。たとえば未来からターミネーターが来る時、『ターミネーター』の1作目や2作目と同様に「(未来で)人間が勝っている状況にしたい」と言われた。でも、僕は「人間側が敗北しているほうがよりドラマティックだと思う」と提案したんだ。そしたらキャメロンが「君の意見もわかるけど、それでは意味がない」と絶対に譲らなかった。そういう点はいくつかあったよ。
――ド迫力のアクションに大興奮しました。特に、C-5航空機(軍用超大型距離輸送機)の空中バトルから続く一連のシーンは、これまで見たことのないスケールのものでした。
あのアクションシーンは、まだスクリプトができてなかった段階で、キャメロンから「大きな航空機でのバトルシーンを入れてほしい」と言われて「OK」と返事をしたものだ。
――見ていて手に汗握るシーンとなりましたが、どんな点にこだわりましたか?
軍用機のシーンは、実際にああいう動きが可能かどうかを、パイロットに相談したんだ。そしたら、オートパイロット状態で急降下すると、機体が平行に保とうとするという話になった。無重力状態になるのは一瞬で、そのあとは急に負荷がかかったり、ふっと軽くなったりを繰り返すと説明してくれた。そして、最後にテールが折れて、尾翼がバチンと折れてしまうんじゃないかと。まさに「実際に起こり得る」というかなりリアルな動きになったと思う。
そのアクションのプリビズ映像を作り、それを役者に見せて演じてもらった。ただ、順撮りじゃなかったので、役者への説明が不可欠で、「今はこっちに重力がかかっている。でも、次はあっちにかかる」と、説明しながら撮影をしなければいけなかった。
――毎回、新型ターミネーターの登場が楽しみですが、今回はREV-9のスペックが最強でした。彼のアクションでこだわった点についても聞かせてください。
あまりにも最強すぎて何でもできてしまうと、観ているほうがバカバカしくなってしまう。REV-9はT-1000と同じような能力があるが、もっとパワーアップしているんだ。でも、彼は刃を出せるけど、それを投げたり飛ばしたりすることはできないし、金属を銃に変えることもできないようにした。だって、サラ・コナーやT-800、グレースの3人と戦うので、少し強いか、対等じゃないと、観ていておもしろくないでしょ。でも、あまり弱すぎると危険性がなくなるので、そのへんのバランスが難しかったよ。
――今回、若い時代のサラ・コナーが登場しますが、28年後のサラは、顔のしわもそのままで、すごくカッコ良かったです。今はCGでシワを消すこともできたと思いますが、敢えてそうしなかったのはなぜでしょうか?
キャラクターの顔はものすごく重要だと思う。サラは、怒りと復讐心に燃えているから、外見なんて全く気にしないはずなんだ。彼女は大きな悲劇を経験していて、それが顔にも表れてないといけなかった。だから若く見せようとか、シワを消そうということは一切考えなかったよ。
アーノルドもそうで、全くいじっていない。そもそもキャメロンが、T-800について、皮膚だけは人間と同じように年をとるという設定にしてくれていたのが良かったと思う。以前、『ターミネーター4』(09)で、若いビジュアルにしたT-800が登場したけど、僕は変だと感じたから。
――エドワード・ファーロング演じるジョン・コナーの登場シーンにもビックリしました。あのシーンはどのようにして作られたのですか?
あのシーンは、ボディダブルで撮影し、あとで顔の部分だけデジタル処理をしたんだ。ただ、エディも実際に参加してくれて、声を出して台詞を話してくれたよ。だから、顔の表情などにも、彼の演技が反映されているんだ。
――今回、アーノルド・シュワルツェネッガーとリンダ・ハミルトンというレジェンド2人を演出してみて、意外だった点を聞かせてください。
そうだなあ。彼らが非常にいい人たちだったことかな。リンダとマッケンジーは、最初のほうは衝突し合う役柄だったけど、2人はとても相性が良かったようで、仲の悪い演技をするのが難しかったみたいだ。リンダはみんなとハグをしたり、キスをしたりして、スタッフのこともとても大事にしてくれた。そこは意外だったよ。
また、アーノルドはあんなにタフなのに、女性にいろいろと命令されて動くのは全く気にならないらしい。ただ、そんな彼から、僕は「君はこの映画にぴったりな監督だ」と褒められたんだ。「監督は彼女たちの話を聞いているふりが上手いから」とね(笑)。いずれにしても、彼らは現場で常に笑っている楽しい人たちで、僕も今回の撮影をとても楽しめたよ。
ティム・ミラー 1964年10月10日生まれ、アメリカ出身の映画監督でプロデューサー。短編アニメ『Gopher Broke』(04)で第77回アカデミー賞において最優秀短編アニメーション賞にノミネート。2016年、『デッドプール』で長編映画監督デビュー。2020年公開予定の『ソニック・ザ・ムービー』では製作総指揮を務める
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