マネースクエア 市場調査室 チーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話します。今回は、2020年1月末が新たな離脱期日となった英国のEU離脱「ブレグジット」についてです。

  • 英国のEU離脱「ブレグジット」はどう決着するか(写真:マイナビニュース)

    「ブレグジット」はどう決着するか

新たな離脱期日は2020年1月31日

2016年6月の国民投票で英国のEU(欧州連合)離脱、いわゆる「ブレグジット」が決定されてから約3年半が経過しました。当初、ブレグジットは2019年3月末に起きるはずでしたが、離脱の仕方が決まらず3度延期されました。そして、現時点では2020年1月末が新たな離脱期日となっています。

12月総選挙の結果次第!?

さて、「4度目の正直」で2020年1月末に英国はEUを離脱することができるのでしょうか。それは12月12日に投開票が実施される総選挙の結果によって決まりそうです。7月にメイ前首相の後を継いだジョンソン首相は10月中旬にEUと新たな離脱協定案で合意しましたが、前任者と同様に協定案は議会で否決されました。そのため、ジョンソン首相は議会を解散し、過半数の議席を獲得すべく総選挙に打って出たわけです。

最新の世論調査によれば、ジョンソン首相の保守党が最大野党の労働党に支持率で2ケタの差をつけています。そして、英国のブックメーカー(賭け屋)によれば、保守党が第一党になる確率は90%以上あり、また同党が過半数の議席を獲得する確率は70%近くあるようです。

世論調査は信用できるか

もっとも、世論調査の支持率がそのまま得票率になるわけではありません。また、英国は単純小選挙区制を導入しているため、得票率がそのまま獲得議席数に表れるわけでもありません。そのため、ジョンソン首相が落選するというサプライズシナリオも、可能性は低いものの、完全には否定できません。ブックメーカーにしても、2016年の国民投票に際して、直前まで90%以上の確率でブレグジットの否決を予想していたという前科があります。

つまり、メインシナリオは、保守党が、あるいは保守党と協力政党とで、過半数の議席を獲得し、協定案を成立させたうえで、2020年1月末かそれ以前に英国がEUを出ていくというものでしょう。ただ、そうならない可能性もあります。

離脱期日の再延期や「合意なき離脱」も

新しい議会が協定案を可決できなければ、離脱期日のさらなる延期もあり得るでしょう。また、さすがに堪忍袋の緒が切れたEUが英国の延期申請を拒否すれば、「合意なき離脱」が改めて浮上するでしょう。

コービン党首の労働党が過半数の議席を獲得することはなさそうです。それでも、労働党が自由民主党やSNP(スコットランド国民党)と協力すれば、第2の国民投票が可能となるかもしれません。その場合は協定案の是非のみならず、離脱撤回が選択肢として示されるかもしれません。いずれにせよ、国民投票を実施するにはそれなりの時間がかかるので、離脱日の延期はやむを得ないでしょう。

ブレグジット狂騒曲もいよいよ決着が近づいてきたようにも見えますが、どう決着するのか(しないのか)まだまだ予断を許さないようです。