カンテレの竹上萌奈アナウンサーが、自身の祖父母をモデルに戯曲を初執筆した。12月8日に大阪・カンテレなんでもアリーナで行われる、同局アナウンサーによる朗読イベント『アナウンサー朗読会』で披露される。
子供のころから読書好きだったという竹上アナは、朗読会用の上演作品を選定する際、自身の祖父母をモデルにしたストーリーを書いてみたいと思い立ち、2カ月かけて執筆。7枚のA4用紙にまとめられたこの戯曲は、朗読作品であることを意識し、文節は短く、耳に残るように文章を読み上げながら書いたという。この作品を読んだ演出のわかぎゑふ氏は「萌奈ちゃんの、これいいやん!」と、即採用が決定した。
竹上アナの処女作となる『まんまるな君』は、認知症になった妻を、優しく見守る夫の目線で書かれた老夫婦の物語。妻はまんまるな顔立ちで、勝ち気なお嬢様。妻は認知症になって以来、夫を「じいや」と呼んでは無理難題をいいつけるが、夫は妻にあわせて「じいや」を演じる。認知症という現実に悲観的にならず、むしろ妻の見ている世界をともに楽しみながら、かけがえのない今を慈しむように寄り添う夫。なにかと妻に振り回される夫の様子がユーモラスに描かれ笑いを誘うが、ときおり妻がみせる “夫への不器用な愛情表現”に、「夫婦の絆」を感じられる作品となっている。
竹上アナの祖母は勝ち気な材木商のお嬢様で、亡き祖父は寡黙で優しい夫だったそうで、人物設定や作品中のエピソードは事実に基づいて描かれているが、実際に認知症になったのは、祖父のほうだという。竹上アナは「祖母が明るく一生懸命に認知症の夫を介護する姿を見て、この作品を書いてみようと思いました。でも、実際の介護は大変だったので、そのまま書くとルポルタージュのようになってしまいます。今回は、物語として温かい出口にしたいと思ったので、フィクションを加えました。祖母を見て、人は何歳まで恋をしていられるのだろうという思いもありました」と語る。
パワフルで仕切り屋の祖母は、生前の祖父を連れまわしてよくデートをしていたそうで、竹上アナは「祖母は祖父の文句を言いながらも、祖父の前に出る時は、いつも必ずきれいにしていました。祖父が亡くなった後も、毎朝きちんとお化粧をしてから『おはよう』と遺影にあいさつしているんです。そんな祖母ってすごいなと思いました」と振り返っている。
朗読会では、ショートショートの名手と呼ばれるオー・ヘンリー作の『賢者の贈り物』や、わかぎ氏のオリジナル戯曲『ビバ・マリア』なども上演。この模様は、『アナウンサー朗読会2019~クリスマスの朝に届くおはなし~(仮)』として、12月25日(4:29~5:25 ※関西ローカル)に放送される。