話題の人気アクションシリーズ最新作『ターミネーター:ニュー・フェイト』(公開中)を引っさげ、仲良く来日したアーノルド・シュワルツェネッガーとリンダ・ハミルトン。1作目『ターミネーター』(84)で大ブレイクし、スターダムを駆け上がったシュワルツェネッガーとリンダに、あらためて「ターミネーター」シリーズを振り返ってもらいつつ、新作の名シーンの撮影秘話を聞いた。
メキシコシティの工場で働く21歳の女性ダニー(ナタリア・レイエス)が、未来から来たターミネーターREV-9(ガブリエル・ルナ)に襲われる。彼女を守ろうと激しいバトルに巻き込まれていく、謎の女グレース(マッケンジー・デイヴィス)と、ターミネーターを宿敵として人生を送ってきたサラ・コナー(リンダ・ハミルトン)。さらにT-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)もこの死闘に関わっていく。
『デッドプール』(15)のティム・ミラー監督がメガホンをとった本作は、シリーズの生みの親であるジェームズ・キャメロンが製作に復帰し、『ターミネーター2』(94)の世界観を踏襲した正当な続編となった。
――『ターミネーター4』(09)のリンダさんは、未来のジョン・コナー宛のビデオメッセージにて声のみの出演でした。今回、久しぶりに現場復帰をされ、最初に登場したシーンは実にクールでしたが、あのシーンをご自身で観た時、どんな感想を持ちましたか?
リンダ:私は、自分の出演シーンは観たくないの。たとえば、自分の出演映画を観て「イエーイ!」と喜ぶようなことは一切やらないし(苦笑)。ただ、あのシーンは、すごくインパクトがあり、演じているのも楽しかったわ。
――シュワルツェネッガーさんは、あのシーンを観た時、どう思いましたか?
シュワルツェネッガー:僕は撮影当時、その場にはいなかったけど、ティム・ミラー監督からその映像がコメントなしで送られてきたんだ。その映像を観た時「すごい! サラ・コナーが戻ってきた」と思った。それは鳥肌が立つほど、本当に素晴らしいと思った。
――どういうところが素晴らしいと思いましたか?
シュワルツェネッガー:彼女の武器の扱い方も、自信に満ち溢れた表情もすごく良かったし、とてもいいシーンに仕上がっていて、僕もうれしくなったよ。また、実際にセットに入ってリンダを見た時、彼女が1年を掛けて、どれだけ肉体改造やトレーニングをしてきたかがよくわかったよ。
彼女は情熱的な完璧主義者だ。『ターミネーター』で彼女は女性ヒーローもののアクションの水準を高め、続編『ターミネーター2』では、さらにそれを高みに上げた。これ以上は無理だろうと思っていたのに、今回はまた、そこを超えてきたよ。
――サラ・コナーもT-800も、とてもパワフルで強いキャラクターですが、それだけに母としてのサラが慟哭するシーンや、いろいろな経験を積んできたT-800が自身の過去を静かにかみしめるシーンがとても切なかったです。
リンダ:キャラクターは、強さや弱さを持っているほうが、人間としても興味深いと思うわ。私はあのシーンを演じるために、私の内面を一番悲しいところまで掘り下げていったの。あのシーンでは、木に座ったまま動けなくて、5時間ずっと泣き続けていた。でも、それも私の仕事だからね。
シュワルツェネッガー:僕自身も、T-800というキャラクターがたどってきた変遷や進化を見てきて素晴らしいと思っていたし、自分自身も演じていて、とても楽しかったよ。T-800は、ターミネーターというマシンでありながら、彼女たちを守ろうとする。また、マシンなのに、人間の子どもを育ててきたことで、何かを学んだはずで、自分がサラから何を奪ったのかも理解できるようになっている。マシンなのに、痛みのようなものを感じているんだと思う。
――お二人にとって、「ターミネーター」シリーズは、人生やキャリアにとってどういう存在になりましたか?
リンダ:1991年に1作目に出演した時は、まさかこのキャラクターと35年間もつきあうことになるとは誰も思っていなかったはず。でも、今振り返ってみると、サラ・コナーを演じたことで、そのあとの私の人生が決まったようなものだから、まさに人生を定義づけてくれたキャラクターだったとは思っているの。
『ターミネーター2』を演じて以降は、もうシリーズには戻らないと思っていたけど、それから28年が経ち、その間にサラが何をしていたのか、どこにいたのか、そしてどういうふうに変わったのかについて、非常に興味を惹かれ、そこを知りたいと思ったから今回、参加したのよ。
シュワルツェネッガー:リンダはシリーズ3本に参加し、僕は5本に出演したが、「ターミネーター」シリーズは、僕も自分のキャリアにとって重要な作品となった。1984年に作られた1作目の制作当時は、低予算で作られたアクション映画以上のものになるとは思っていなかったが、ジェームズ・キャメロンの素晴らしい脚本と演出によって、タイムズ紙のトップ10にランクインするほどの成功を収めた。批評家たちから絶賛され、ただのアクション映画ではないという位置づけもされた。
実際、1作目が公開されて以降、ハリウッドでのありとあらゆるアクション映画のオファーが僕のところに殺到し、以降、自分のキャリアが上昇していった。そういう意味では、自分の人生においても大切な作品となった。また、このシリーズは何十億ドルも稼ぎ出したことで、多くの人が関わることになり、観客を楽しませることができた。いろいろな意味で素晴らしいことだと思う。
――シュワルツェネッガーさんは、プレミアでは、今回で「T-800を演じるのは最後になるだろう」と言われていましたが、それは本当ですか?
シュワルツェネッガー:毎回自分にとっては「これで終わり」だと思っている。実際に、最後に死んだりしてきたし(笑)。でも、次回作があるかどうかは、観客のみなさん次第だとも思っているよ。これまで、伝えたい物語があったからこそ、シリーズが続いてきたし、僕たちが誇りに思う作品になったのだから。ただ、僕たちの物語は、これで終わりなのではないかなとは思っているけど、もしかして100歳になっても、僕のガイコツを使うかもしれないね(笑)。
リンダ:アーノルドがいなくなったら、私も参加したくはないわ。でも、本当にファンの方や興行収入によるのかなとも思うわ。私も今回「これで終わり」と思って演じたけど、それを私が決められる話ではないし。また、オファーされたら「しょうがないなあ」と思うのかもしれないわ。
アーノルド・シュワルツェネッガー
1947年7月30日生まれ、オーストリア出身の俳優。1970年に『SF超人ヘラクレス』で映画デビュー。1984年に『ターミネーター』のターミネーター役でブレイク。『コマンドー』(85)、『プレデター』(87)、『トータル・リコール』(90)、『ターミネーター2』(94)、『トゥルーライズ』(03)などに出演。2003年~2011年まで米・カリフォルニア州知事を務めた。そのほか「エクスペンダブルズ」シリーズや、『大脱出』(13)などに出演。ジャッキー・チェンとの共演作『レジェンド・オブ・ヴィー 中国游記』が待機中
リンダ・ハミルトン
1956年9月26日生まれ、アメリカ出身の女優。1984年に『ターミネーター』のサラ・コナー役でブレイク。1987年にはテレビドラマ『美女と野獣』で主演し、エミー賞、ゴールデングローブ賞の主演女優賞にノミネートされる。『ターミネーター2』(94)で人気を不動のものにする。パニック映画『ダンテズ・ピーク』(97)も話題に。ジェームズ・キャメロンの元妻でもある