フィリップスは11月7日、眠りをサポートする睡眠用ウェアラブルヘッドバンド「SmartSleep ディープスリープヘッドバンド」(以下、ディープスリープヘッドバンド)を発表しました。頭に装着して眠れば睡眠の質を高められる……と効果をうたう新発想の製品です。全国の家電量販店、ECサイトで11月26日から発売します。価格は42,380円(税別)。発表会からレポートします。
一体どんな製品?
冒頭、フィリップス・ジャパンの堤浩幸社長が「2030年までに30億の人々の生活を向上させます」と、フィリップスが掲げるビジョンを紹介しました。今回のディープスリープヘッドバンドは、フィリップスが手がける「SmartSleepソリューション」の第1弾という位置づけ。眠りの質を高めることで、人々にスッキリとした目覚めと日中の活力増進をもたらします。
製品の概要を簡単にお伝えすると、ディープスリープヘッドバンド本体は着け心地の良いソフトな生地も用いたヘッドバンドで、おでこの部分にセンサーを内蔵しています。右耳の後ろにも、シールでセンサーを貼り付ける仕様。この2つのチャンネル(センサー)で、睡眠中の脳波をリアルタイムで測定していきます。
睡眠の段階が「徐波睡眠」に入ったとき、つまり深い眠りに入ったときですが、ディープスリープヘッドバンドに搭載されているスピーカーから「オーディオトーン」と呼ばれる500Hz~2000Hzの音が流れます。これにより徐波睡眠の振幅の幅を大きくしたり、持続時間を長くする効果を狙います。すると深い睡眠を持続できるわけですね。
そして翌朝、目覚めたときに睡眠の状態と睡眠スコアを、スマートフォンの専用アプリで確認できます。自身の睡眠の質がグラフで可視化されるため、より良い睡眠を得ようという意欲がわいてきそう。ディープスリープヘッドバンドの充電時間は2~3時間で、ひと晩ごとに充電が必要。ヘッドバンドの水洗いは不可で、汚れたらウェットタイプのティッシュなどで拭き取るとのことでした。
堤社長は「睡眠不足による日本の経済損失は15兆円(GDPの2.92%)にものぼります」と警鐘を鳴らします。睡眠不足が原因で日中に眠気を感じてしまい、仕事で思うようなパフォーマンスを発揮できない……。心当たりのある皆さんも多いのではないでしょうか。
特に働き盛りの20~40代の男女において、日常の睡眠の状況は悪化しているそうです。「日本が抱える課題と言えます。そこでフィリップスが、睡眠という側面から、日本人の毎日の生活を健康なものに変えていきたい」と堤社長。ディープスリープヘッドバンドを、思うような睡眠が取れていない国内の800万人に届けたい、とアピールしました。
睡眠負債の怖さ
このあと、2017年に新語・流行語として話題を集めた「睡眠負債」でおなじみの早稲田大学の枝川義邦教授が登壇して、睡眠の大切さをデータとともに説明しました。ゲストを招いたトークセッションでは、メジャーリーガーの前田健太さんが登壇。睡眠とパフォーマンスの相関関係、ディープスリープヘッドバンドを使ってみた感想などを語ります。
枝川教授は「睡眠不足は認知能力に影響を及ぼします」として、とある興味深い実験結果を紹介しました。被験者を「徹夜」「4時間睡眠」「6時間睡眠」「8時間睡眠」という4グループに分けて、2週間にわたって「注意力の低下度」を調べたもの。よく眠れていないと注意力が散漫になる、という結果は想像通りでしたが、それだけではありません。下図のグラフにおいて、実験の開始からある程度の時間を経過したときの状態に注目です。
例えば、6時間睡眠を続けた被験者が、2週間後にはどうなっているか。枝川教授によれば、徹夜を2日間続けた被験者と同じくらい注意力が低下……。驚きの事実ではないでしょうか。
「世の中には、6時間睡眠が習慣になっている人も多いでしょう。6時間睡眠は習慣になりやすい。また、普段から忙しくてよく眠れていない人の中には、今日は6時間も寝られたと考える人もいるかもしれません。しかし、これを1カ月、1年と続けていくと、毎日が徹夜明けと同じ状態になってしまいます」(枝川教授)。
つまりこれは睡眠負債。怖いのは、本人に自覚症状がないことです。「つい、自分は大丈夫、がんばれていると思ってしまう。こうした睡眠負債が常態化すると、もの忘れが多くなり、集中力は低下し、判断力も低下、応答時間は長くなりますし、単純ミスが多くなる。そして怒りっぽくなる、刹那的になる、風邪をひきやすくなる、太りやすくなる……。その先にあるのは、認知症、うつ病、高血圧症、糖尿病、がんといった症状です」と枝川教授。
がんばって会社に出勤してはいるものの、心身の健康状態が問題となってパフォーマンスが落ちており、生産性が上がらない常態を「プレゼンティーイズム」と呼ぶそうです。この話題は、先に堤社長が紹介した「睡眠不足による日本の経済損失は15兆円」の事実につながります。
「睡眠負債と言いましたが、睡眠時間の負債とお金の負債とでは、次の2点が異なります。睡眠時間は、(1)借金はできるが貯金はできない、(2)一括返済はできない。睡眠負債の返済は、コツコツと計画的にするしかないのです」(枝川教授)。最後に、睡眠の質を高められるディープスリープヘッドバンドは、現代社会で忙しく働く人たちの1つの回答になるかもしれません、と期待感を示しました。
マエケンも使い始めた
ゲストとして、米メジャーリーグで活躍するロサンゼルス・ドジャースの前田健太さんが招かれました。「自分が投げて試合に勝った日は、アドレナリンが出ているからか、眠れない日が多いんです。また、遠征先でベットが変わることで、良い睡眠が取れないこともあります」と話す前田さん。ここ最近、ディープスリープヘッドバンドを使い始めたと明かします。
まずは「これまで何かを装着して眠ったことはなかったので、そこが気になっていました」と正直に話します。ディープスリープヘッドバンドを頭に装着して、本当にちゃんと眠れるだろうか――。みんなが気になっているところでしょう。「実際に着けてみると、肌触りも柔らかくて気になりませんでした。違和感があって眠れなかった、ということは1回もありません」と前田さん。
その上で、来期に向けて「シーズンに入れば、睡眠の管理が大事になります。ディープスリープヘッドバンドを使って、パフォーマンスの向上につなげていけたら。勝つということもそうですが、ケガが少なくなって選手生命が長くなる、ということにもつながるのかな。来年(2020年)は東京オリンピックもあるし、ディープスリープヘッドバンドはアスリートにとって強い味方になるのではないでしょうか」(前田さん)。チームのみんなにもオススメしたいと、にこやかに締めくくりました。